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午前1時の夜風とともに


メルチャリで、人通りの少ない夜の街を
駆け抜けている。
今日はいつもより涼しくて、
少しだけマスクから口元を解放した。
隣をマウンテンバイクで走る友達は、
彼氏が寝てしまうので急いで帰らなければと言う。
私はゆっくり歩いて帰ってもよかったが、
さすがに真夜中、性別的にも防犯的にも、
メルチャリを使い彼女と並走することにした。


数か月ぶりに宅のみに参加した帰りだった。
大学時代の友人の家で、
当時のサークルの仲間たちとの会。

嚙み切れないホルモンがずっと喉に住みついて
いるような、
もやもやした気持ちを、夜風に晒す。
確実に変わっていく関係性を
どう表現したらいいのだろう。

大学時代は、寂しさからとにかく誰かと
過ごせればよかった。
誰かとごはんを食べられればその日はいい日。
朝まで語り合えば充実。そんな予定で詰まっていれば更に充実。
今日会った友人たちは相も変わらず、
色んな人の話をして、ただただ
たこ焼きを焼き、ひたすら食べて酒を飲む。
やがて、明日仕事だから、彼氏が待っているからと終電で帰る。

こんな時間も大切なのだ、
くだらないことを話している時間だって、
大切なはずだ。
何も考えずに、昔の仲間と集まることは、
大切なはずだ。


だけど、だけど。

楽しいと思えなかった。
この人たちと過ごす時間が楽しいと
思えなくなってきている。
あんなに、大好きで、家族同然で、
朝までだらだらと語り合えていた友人たちも、
社会に出て、結婚して、新たな価値観を作っていく。

恋愛にまるで興味のなかった友達は、
今や恋人と半同棲状態で、
帰れと言われれば帰る。
恋愛に奥手だった友達は、
今や略奪愛に燃えていて、
あの手この手でロックオンした人を
落とそうとしている。

方や私はというと、
大学時代は恋愛一色だったのに、「恋人」という存在に魅力を感じなくなっている。


人は変わっていくものなのだ。
それが自然なことだ。


不思議と、寂しいとは思わなかった。

毎日毎日、日めくりカレンダーを
めくっている間に、
想像もできないようなことが起こっていく。
毎回毎回、どうにかこうにか自分なりに
それらを嚙み砕いて、吞み込んで、
ひたすらに生きる。
それを何周も何周も繰り返していくうちに、
彼らともまた心から楽しく過ごせるときが
やってくるかもしれない。

私は私で、
自分なりにカレンダーをめくっていけばいいのだ。
たまにはこういう風にモヤモヤを感じつつ。


マウンテンバイクの友人と交差点で別れる。
「ごめんね、急がせちゃって。じゃ、ここで。」彼女はバイパス沿いを颯爽と去っていった。
依存とか、惰性とか、色々経験すると否定して
しまいがちだけど、
そうだよね、とにかく早く帰って彼に会いたいよね、
と彼女を見送った。


色んな20代が生きている。
一人の帰り道は、雨の混ざった風が心地よくて、
少し冷たかった。


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