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【全話】本当に怖くない猫の話
はじめに
noteでこれまで書いた同じタイトルのものをまとめようと思い立ちました。この「本当に怖くない猫の話」を一つにしています。
正直、誰か読んでくださったかわからないですが、9万字以上も書いたんですね。
noteでは、ほとんど日記や読書感想文を書いています。たまにこうした小説を性懲りもなく書いていますが、あまり気にせずお付き合いいください。
誤字脱字など校正に手を出すと、話がすっかり変わって
【短編】続・本当に怖くない猫の話「ケロケロ」
*この話には一部暴力的な表現が含まれます。素人小説ですので、そういったものが苦手な方は決して読まれないでください。深い知識などあって、書いているわけではありません。
昼の暑さが残りつつも、頭上の夏の月が涼やかだ。暮れきらない空の上に広がる薄い雲が広がって涼し気な月を紗に隠している。
8月16日。まだパリオリンピックの興奮が冷めやらない。客を待つ間も、Tシャツジーパンの軽装で全身に汗をにじませな
続・本当に怖くない猫の話「猫と小判」
昨日はケージから脱走して自由を満喫した子猫2匹たち今日は外に出る気が全くないようだ。やんちゃ盛りの子猫たちをケージの外から見守っているメス猫二匹に子猫と血縁関係なないらしい。その猫たちもケージの方に顔を向けているだけで、だらりと床に寝そべっていた。扉が閉まっていないので、どうしても猫たちの様子が目に入って、話の内容に集中できない。
あまり愛想がよくないという猫たちは、初対面のなんでも屋にほぼ無
【短編】続・本当にこわくない猫の話「コンプレックスは猫で解消」
なんでも屋は疲れていた。連日の仕事で疲労はピークに達していた。
結婚相談所のスタッフの仕事ではない。なんでも屋の仕事の方だ。なんでも屋は自分の生計の基盤が、いかに結婚相談所の仕事の方にあろうともなんでも屋が本業だと思って続けてきた。けれども、それもそろそろ返上しなければならない。四十の坂も目前の一生独身の自分が結婚相談所の職員として説得力のない仕事を続けていくことが運命として定まっているのかも
【短編】不思議な髪飾り①
彼女のバレッタには秘密がある。
2024年1月1日。元日に彼女はその蝶の形のバレッタと出会った。
数千円の値札が貼ってあったことを考えると、ありえないことにその蝶の髪飾りの輝きは特別だった。
銀の縁取りは本物の鉱物のように煌めいて見えた。
一方で会計を済ませてそれを袋から取り出して、自分の髪につけたとき、まるで本物の蝶を頭に飾ったように感じた。
彼女の髪は首の中ほどで切りそろえられ、結ぶほどの長さ
続・本当に怖くない猫の話「三毛猫美容室」
猫と人間の結婚相談所「ハッピー+」が開業して、もう3年が過ぎた。何でも屋が何でも屋の仕事を始めて、4年が過ぎたということだ。
依頼人の父親からこの仕事に誘われて、アルバイト感覚で始めた契約社員であったが、もはやこちらが本業だと意識から逃れられないと途中までは思っていた。
しかしながら、案外と何でも屋の仕事も尽きないものだ。
疫病流行の収束とともに、買い物代行の仕事はほとんどなくなった。
しかし、ペ
続・本当に怖くない猫の話 part.9 「ねこ日記」
Twitterの終わりに#の文化がきょうびは死語になりつつあるらしい。
検索に引っかかるか?どうか、人気のあるコンテンツに便乗するか?を考えてばかりなのは、今や大人だけ。子どもたちはタイトルにヒキのあるコンテンツであれば流行ってようがどうでもいいらしい。
好みの全てが昔の子供っぽい児戯だと笑われれば、自分こそ古い文化に乗っかった死語の代名詞ではないかと"何でも屋"は思う。
社会の常識に適応できず、
続・本当に怖くない猫の話 part.8
その後の太宰のその後
何でも屋は普段は結婚相談所の職員をしているが、本業は何でも屋で猫の依頼をされることが多い。それは、単純な迷い猫探しではなく、例えば、猫の新たな飼い主を探したりであるとか、猫にまつわる家族の厄介事を相談されることもある。
それらはいつも非常に難解であるが、いつの間にか話を聞いているうちに、本人たちの中で自己解決してしまう。だから、結局のところ、何でも屋の仕事もほとんどは結婚
本当に怖くない猫の話 part.7
アレルギーの猫は怖くない
穀物アレルギーの猫の飼い主が結婚相談所『ハッピープラス』に現れた。人間が猫のアレルギーなのでなく、猫がアレルギーを持っている。猫が穀物を食べられないので、自分も食べないのだという。だから、結婚相手もそれを理解して、グレインフリーな肉食生活を送ってくれる人が良いそうだ。そういった要望に応えられるのか、何でも屋は返答に困り、所長に対応をお願いした。
「そういったご相談であ
続・本当に怖くない猫の話 part.6
猫と出会う旅は怖くない
「この世のすべての猫と出会いたいんです。その旅に同行してくれるパートナーを探しています」
目の前の男性は唐突にそう切り出した。何でも屋はじっくりと男性を上から下まで観察した。外資系の商社に勤める会社員らしく、スーツを慣れた感じで着こなし、シャツは皺ひとつない。
ん少しタレ目で人好きのする顔をしている。穏やかそうで、見た目だけなら平凡を好みそうだ。とても冒険家を志すように