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芸術一般

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芸術について、なんでも書きます。はじめはヨーロッパ絵画をかなり題材にしていましたが、現在は映画評論・芸術論・文学論などが多くなっています。
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2022年12月の記事一覧

<書評>『白と黒の断想』

<書評>『白と黒の断想』

瀧口修造著 2011年 幻戯書房

 日本のシュールレリストの第一人者である瀧口修造が、評論家として、20世紀に活躍した写真家を中心に、ピカソやダリなどの著名な芸術作品も含めて、個々の作品とその短評(解説)をまとめたもの。そして、ところどころに瀧口が作った、それぞれの作家をモチーフにした、シュールレアリスムのイメージあふれる詩編が散りばめられている。

 書名となった「白と黒」とは、全ての写真や美

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<ラグビー>2022~23シーズン、大学選手権準々決勝の結果、リーグワン第二週結果、インターナショナルラグビー関連(2023年からのルール変更等)

<ラグビー>2022~23シーズン、大学選手権準々決勝の結果、リーグワン第二週結果、インターナショナルラグビー関連(2023年からのルール変更等)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
 
 先日衛星放送で『オズの魔法使い』(1939年アメリカ、日本公開は1954年)を観た。もう83年前となる古い作品であり、今ならCGを屈指するところを書き割りのセットで撮影している他、シンプルな合成映像を使っているので、「古く稚拙な映画」と一笑する若い人が多いと思う。しかし、逆にその古い技術でしっかりと作られているからこそ、異

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<閑話休題>クリスマスストーリーに代えて

<閑話休題>クリスマスストーリーに代えて

 ミクシィ時代を含めて、たしか2012年から2021年まで、毎年のクリスマスに、西欧社会で習慣化している「クリスマスストーリー」という、サンタクロースが出てくる短編小説を発表してきた。

 それは、日本を離れて遠く、マレーシア(ボルネオ島)、ヨルダン、ルーマニアと、毎年のクリスマスの時期には海外に住んでいたこともあり、その土地ごとのイメージを記録する意味合いもあって、創作してきた面もあった。

 

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<映画評>アメリカングラフィティ

<映画評>アメリカングラフィティ

 今やハリウッドを代表する監督になっているジョージ・ルーカスが、1973年に公開(日本は1974年公開)した、1950年代後半のアメリカ中西部の田舎町(しかも住人はヨーロッパ系ばかりで、有色人種は中南米系が少しいるだけ)の中産階級の高校生を主人公にした物語。

 当時のヒット曲をメドレーで流しながら、名DJのウルフマン・ジャックも登場させて、「懐メロ+王道の青春群像」ドラマにしている。『スター・ウ

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<閑話休題>表現することの選択肢について

<閑話休題>表現することの選択肢について

(はじめに)
 私は、エッセイとして書いているつもりだが、どこか論文めいた内容になってしまうのは、私の本意ではない。私が書きたいことは、まず書くこと=話すこととしての表現は、行動すること=社会参加と同列だということなのです。

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1.「何をやったか」

 大学時代、「重要なことは、何を言ったかではない、何をやったかだ」と良く聞かされていた。それは、今流行りの言葉で言

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<書評>『イタリア・ルネサンスの文化』

<書評>『イタリア・ルネサンスの文化』

『イタリア・ルネサンスの文化』ヤーコブ・ブルクハルト著 柴田治三郎訳 中公文庫
原本は1860年、文庫は1974年。

1.普通の書評として

 著者は、歴史を勉強するものにとっては、いわずとしれた大家である。また、フリードリッヒ・ニーチェとも親交のあった学者で、19世紀末のキリスト教思想に対する批判精神を持っている。そうした雰囲気は、本書の対象であるイタリア・ルネサンスの文化の担い手であった、当

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