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<映画評>アメリカングラフィティ

 今やハリウッドを代表する監督になっているジョージ・ルーカスが、1973年に公開(日本は1974年公開)した、1950年代後半のアメリカ中西部の田舎町(しかも住人はヨーロッパ系ばかりで、有色人種は中南米系が少しいるだけ)の中産階級の高校生を主人公にした物語。

 当時のヒット曲をメドレーで流しながら、名DJのウルフマン・ジャックも登場させて、「懐メロ+王道の青春群像」ドラマにしている。『スター・ウォーズ』もそうだが、内容は歌と踊りと恋愛と若者の暴走と、もうどうやっても大衆に売れる要素をごった煮にしているため、期待通り(?)低予算で高配収を得たかなり経済的にお得な作品。そして、この儲けがあったからこそ、『スター・ウォーズ』を作ることができたので、映画史への貢献度は高い。

 私は、個人的にこの手の青春ドラマは大嫌いで、さらに、ディスコとかクラブとかダンス音楽も大嫌い、車も大嫌いと来ているので、共感できるものはない内容ながら、アメリカ人の日常生活が垣間見られるような感覚が好きで、DVDまで買ってしまったことがある。

 ところで、この作品を最初に見たのは大学生時代だったが、そのアメリカ風俗的な内容から、主人公はロン・ハワードとシンディ・ウィリアムス(当時はかなり可愛いと思ったが、この手のファニーフェイスはすぐに劣化することを知った)の恋愛物語が中心で、むしろリチャード・ドレイファスの物語は付け足しと見ていた。

 しかし、今改めて見てみると、当然のことながら主人公はドレイファスで、将来作家になる彼の、青春の懊悩と人生の岐路をテーマにしていることがわかる。・・・たしかに、「わかる」が、そのテーマが良く描かれているかと言えば、正直そうでないと言わざるを得ないと思う。やはり、ハワード&ウィリアムスのイメージが強すぎるし、この二人の葛藤がしっかりと描かれているので、なおさらだと思う。そういう点では、傑作とは言い難い。

 ところで、当然スティーヴン・スピルバーグも、この作品に関わっていたのだが、近作『ウェストサイドストーリー』(リメイク)との関連から、もしかするとスピルバーグ版の『アメリカングラフィティ』を作ったのが、彼のリメイクした『ウェストサイドストーリー』だったのではないかと思った次第。

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