見出し画像

<閑話休題>クリスマスストーリーに代えて

 ミクシィ時代を含めて、たしか2012年から2021年まで、毎年のクリスマスに、西欧社会で習慣化している「クリスマスストーリー」という、サンタクロースが出てくる短編小説を発表してきた。

 それは、日本を離れて遠く、マレーシア(ボルネオ島)、ヨルダン、ルーマニアと、毎年のクリスマスの時期には海外に住んでいたこともあり、その土地ごとのイメージを記録する意味合いもあって、創作してきた面もあった。

 それが、今年3月に日本に帰ってきて、もう海外生活をすることもなくなったことから、毎年のクリスマスストーリーを発表する意欲がなくなった。というよりは、これまで書き溜めたクリスマスストーリーと、今年の分を含めて新たに書いたクリスマスストーリーを、将来一冊の本にしたいと思っているので、もうこうしたSNSで発表することはやめることにした(つまり、出し惜しみってやつですね)。

 そうはいっても、毎年やってきたことを急にやめるというのは、なにか寂しいものがある。そこで、最近「日本現代詩人会」なるものを見つけて、そこに詩を投稿しているのだが、昔書いた詩を修正したものが、自分でもちょっと良いように思っている。

 その詩は、自分がニュージーランドでラグビーをやっていたときの気持ちを書いたものだが、今サッカーのワールドカップが終わり、日本ではリーグワンが始まり、大学選手権が佳境に入り、来週からは花園が始まるので、その修正した詩を、クリスマスストーリー代わりに掲載させていただく。

 読んでくれる人へのクリスマスプレゼントというよりも、過去の自分から今の自分への懐かしいプレゼントのようなものだけど、スパークリングワインの肴にでもなれば、それもまた一興。

(注)以下の詩は、本稿に先立ち投稿した散文詩「土曜日、のこと」(引用先参照)を改編したものです。本稿投稿時には、既に投稿済みであることを忘れていたこと、また本稿投稿前に再読して改編した方が良いと考えたため、このようになりました。どちらが良いかは、読まれる方によって様々だと思いますが、ご参考まで。

*****************

土曜日は、いつも

 ニュージーランドのウェリントンにいたとき、秋から冬にかけての毎週土曜の午後は、いろいろなグランドでラグビーの試合をした。私は、それだけを楽しみに暮らしていたといっても、けっして過言ではなかった。

グランドに着いたとき、芝の匂いが鼻をついた。
ジャージーを着てシューズをはくと、あちこちからスパイクの音がこだまする。
入念にテーピングするもの、ワセリンをぬるものがいる。
鼻と目がしみる。

真っ先にグランドに出た。
はしる、とぶ、ころがる。
ジャージーの下は、シューズの下は、やわらかな大地。
おもいきり伸びをすると、皆がそろっていた。

ある戦慄とともに笛が鳴った。キックオフ。
今日これから、何回か繰り返されるキックオフ。
トライ、キックオフ。トライ、キックオフ。
その最初だ。

ヘイ、スシ! ゴー!
熊のようなフォワードがいう。
僕は思う、日本人はスシが好きだけど、僕はユージだ!
その叫びとともに、強烈なショックが僕の肩と腕にきた。
わがチームはいつのまにか、ゴールを背にしていたのだ。

そして、よりによって僕の正面に、
ボールをもっているヤツが突っ込んできた。
幸いに捕まえられた。でも、倒れない。
僕は全体重をヤツにかけた。倒れた。
すぐ後ろをみると、ゴール内に大勢がいる。
つながれた?
いや、味方がボールを押さえたようだ。
僕は起き上がる。

はしる、はしる。
フォワードがボールを捕りハーフに渡した。
ラインが前へ動く。はしる。
パスがくる。センターがぬける。
はやい、なんてはやいんだ。

もう最後のタックラーがきた。彼はひきつける。
ひきつけてウィングにパスをした。
ウィングは天国へ向かうようにゆうゆうと、
ゴールへはいった。
タッチダウン、トライ。
グッドスタッフ!
外から声が聞こえた。

芝と土への何回目かのキッスを、
何人かの重さでさせられたとき、
今日最後の、そして一番長い笛は鳴った。
ビ ー ル だ !


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?