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セールスフォース事件をめぐる調査報道を振り返る

「セールスフォース事件をめぐる調査報道」、記事を探しやすいように、無料マガジンにまとめ、説明文を付けました。

“優れたイメージを築いた巨大企業での「障害者差別と人権侵害」をめぐる労働事件訴訟が起きた。合理的配慮は特別扱いなのか。「平等と多様性」「ビジネスと社会貢献の両立」という発信は信じられるものなのか。「当社は障害者の雇用をないがしろにしていません、合理的配慮もやってます」という主張は信じられるものなのか。訴え以外にも障害者の雇用が十分に進められてこなかったことを示すデータが判明している。負担やリスクを恐れ障害者の雇用を控えるということはできるのか。「訴訟の長期化のうえに厚労省による社会制裁的公表」という前代未聞のシナリオは回避するのか。
商業媒体での執筆に先行して配信。裁判報道、障害者雇用制度の問題、働きがいづくりやSDGsの理想と現実など、多方面の論点に示唆を与える。私が「発達障害当事者ライター」から「ジャーナリスト」になり、人生をかけて勝負に出た調査報道。”

1月23日午前11時に東京地裁527法廷で第九回期日。

2022年3月1日の1万6000字に及ぶ第一報。

当事者だけでなく、元社員、専門家の意見も交え、考える材料を提供しています。また、関係者の発言や法律の知識を駆使して13年間の障害者雇用データの裏にあるものを読み解きました。これこそなくすべきSDGsウォッシュでは。当該企業CMにならって「華やかな広告よりも、具体的なデータを。」と書いたのですが、これはSDGsの進むべき方向を端的に示します。

検証を求める声が上がっている

企業側の主張への不条理訴求した第二報。(主張が出揃うのはこれから)

この調査報道で駆使した情報開示請求も、先人の起こした行動があってのもの。

公正な報道を行うよう申し入れ

裁判報道のあり方についても、発達障害当事者目線で提言しています。

争点:コロナ拡大での通勤訓練の妥当性 先駆的企業の光と影

セールスフォースが、コロナによる全社員在宅勤務切り替えを先駆的に実践して称賛されたという「光」の面、2020年3月にメンタル悪化から復職を目指す社員への通勤訓練が行われていたという「影」の面を伝えています。

差別・偏見に関するアンケート調査

発達障害啓発週間に合わせて、職場で発達障害者が受けた差別や偏見の状況を明らかにし、障害者雇用促進法の効果を検証すると同時に、障害者雇用訴訟に対する発達障害者の意識についても調査しました。結果は5月中に発表します。

障害者雇用訴訟により企業で障害者の採用が控えられるということは起こりえるのか。

企業がそれをできるのかというと、ことはそう単純ではない。セールスフォースは障害者雇用義務違反の企業名公表による信用低下を回避するかを追っています。増員計画が雇用率未達になることが避けられない原因になっているならば見直されるべきでしたが、増員計画は予定より2年前倒しで達成されました。それでよかったのでしょうか。

厚生労働省の企業名公表とは

この調査報道で繰り返し出てくる、厚生労働省の企業名公表とは何かに触れています。

なぜ筆者はリンクトインで発表したのか

筆者がなぜこの調査報道をリンクトインで発表したのか。それには理由があることを書いています。

それは合理的配慮拒否というより心理的虐待ではないか。

虐待防止への問題意識喚起にもつながるように、と思っています。虐待について過去の判例も示しています。

東京レインボープライドのスポンサー企業の実態が問われる問題

LGBTの人権を中心に多様性をテーマにしたイベントで、スポンサー企業であるアクサへの抗議者が警察に通報され、運営側に批判が起きています。スポンサー企業の実態がイベントの理念に反するものになっていないか問われています。セールスフォースがアクサ同様にプラチナスポンサーとして名を連ねているのも引っかかります。

障害者雇用訴訟と東京レインボープライド抗議者通報につながるもの

障害者雇用訴訟とLGBTのイベントの抗議行動をつなげ、マイノリティへの構造的差別があるシステムを変えるためのアプローチを考えます。

差別・偏見に関するアンケート調査結果発表

世界自閉症啓発デーおよび発達障害啓発週間(4月2日~8日)に合わせて行った、職場で発達障害者が受けた差別や偏見の状況を明らかにし、障害者雇用促進法の効果を検証すると同時に、障害者雇用訴訟に対する発達障害者の意識についての調査結果を発表しました。
Q.あなたは職場において、差別や偏見を受けたと感じる場面がありますか。

Q.あなたは障害者雇用促進法を知っていますか。
Q.あなたは障害者雇用促進法が社会に浸透していると考えていますか。

Q.障害者雇用促進法には差別禁止や合理的配慮に関する規定がありますが、あなたに対する差別や偏見は改善していると思いますか。
Q.法定雇用率が2021年に2.2%から2.3%に引き上げられましたが、採用されやすくなったり、働きやすくなったりしたと思いますか。

Q.あなたは障害者雇用訴訟をどのようにみますか。

Q.あなたは差別や偏見のない社会を実現するために、どのようなことが必要だと思いますか。

アンケート調査の意義について肯定的な評価を数多く頂いたものの、一方で否定的な声も出ました。そこから見えてきたのは、基本的な法令順守すら伴っていないような企業の社会的責任の問題が山積みしている実態に目を背け、企業の利益のみが守られるべきとする相も変わらぬ姿勢です。これらが数多くの人権侵害といえる深刻な事態につながっている、と考えるのはバイアスがかかっているのでしょうか。

裁判を闘う発達障害シングルマザーの思い

以下は、マガジンに入っている記事ではありませんが、原告が、障害者の自己決定や、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という有名な言葉について述べています。

争点:働く障害者は特別扱いを求めているか 合理的配慮をめぐって

会社側弁護士が「障害者だからといって特別扱いが許されると思ったら間違いである」などと障害者への誤解や偏見を助長するとみられる見方を示していたことがわかった。「働く障害者は特別扱いを求めているか」が裁判で争いになるのは、いまだにこうした見方がいわれのない偏見であるかどうかの社会的合意がない日本の現状を表しているのではないか。「配慮=優遇」とみられがちな現状も憂う。

岐阜地裁でも合理的配慮裁判、判決は8月

障害者雇用の合理的配慮をめぐる裁判では他にも、高次脳機能障害の女性が元勤務先を相手取った裁判が岐阜地裁で起きています。こちらは一般企業ではなく特例子会社のケース。8月に判決ですが、これが他の障害者問題の裁判にも影響するでしょうか。

雇用率は達成したが…採用後の定着は

障害者雇用率は達成し、厚生労働省の企業名公表による信用低下リスクは回避したもよう。ただ、採用後、定着できる環境なのか。障害者雇用訴訟で表面化した、合理的配慮体制のわかりにくさ。ハラスメント防止対策や社員を長く雇う意識には、外向きに出しているインタビュー記事やイベントでの発信内容とは乖離があるのでは、という疑問がある。

障害者雇用状況報告について

調査報道では、当該企業において2020年の障害者雇用促進法で義務付けられた雇用状況報告が適切に行われていなかった(罰則規定あり)ために、東京労働局のデータに反映されていなかった、という話が出てくる。

問題の是正に向けて働きかける

リンクトインで外資・国内IT勤務者、取締役、人事関係者に読まれています

人的資本開示で数字が伴わないPRはもう通用しなくなる!?

人的資本開示のルール整備が進めば、障害者の雇用の透明化が進むとみています。だからこそ、これは「ビジネスと人権の問題」と宣言し、被告会社の13年間の雇用実績データを公表し、リンクトインの論調を主導することを目指しました。

障害者雇用が過剰コンプラ扱いされている?

「雇用率を達成すべき」とする風潮が強まるなか、歪みが出ている現実を考える。

調査報道は当初「日本の発達障害支援にも変化」という方向性だった

この記事には、調査報道が始まるきっかけとなった関係者の話が出てくる。出発点は「ビジネスで社会問題解決を目指す企業が、日本の発達障害支援にも変化」という方向性だったのが、結果的には「ビジネスで社会問題解決を目指す企業が、日本の発達障害者の社会問題を引き起こしている」というトーンになった。

米国では多様性をめぐり経営陣を追及する株主、日本とは隔世の感

セールスフォース米国本社の株主総会で、人種平等監査強化を求める声があった。その背景には、同社の黒人やヒスパニック系の従業員の比率が少なすぎること、同社で元マネージャーだった黒人女性からのリンクトイン告発があった。こういうニュースを見ると、日本とは隔世の感がする。

転職後の短期離職体験談が、noteで読まれている

ふっき氏は、同社の元社員3人から聞き取った体験談を紹介。(体験談が事実であれば)同社が外向けに発信してきた「フレキシブルで働きやすい」「定着重視」「サステナブル経営」とはかなり乖離した内容。

なぜそれがハラスメントではないのか。「内なる優生思想」

相模原障害者施設殺傷事件から6年。植松死刑囚が主張したような優生思想は一般企業にも潜んでいる。障害者雇用への強硬な反対姿勢。なぜそれがハラスメントではないのか。

続々と来る問題意識の声

今こそ知っておきたいハラスメント対策

ハラスメント訴訟になったらどうなるか

今こそ知っておきたい優生思想の危険性

今こそ知っておきたいニューロダイバーシティの可能性

今こそ考えたい、ほんとうのビジネスとサステナビリティ

障害ハラスメント認めず和解は困難か 安心して応募できるのか

障害者雇用訴訟と地続きの逸失利益裁判

岐阜特例子会社判決 合理的配慮違反認めず

巨大企業の矛盾に迫るNYタイムズ記者の告発と突き合わせて

1日待機状態とは。自殺訴訟に至った判例も

同社では「私も合理的配慮が守られておらず、1日待機状態だった」という体験談が。障害者雇用では「居るだけになってしまう」問題があり、自殺訴訟に至った判例も。

採用ブランディングに疑問あり

今日のハラスメント訴訟の新傾向、録音や社内記録が証拠化、評価・文脈をめぐる争いに

英語でも発信

人事本部長、障害者雇用トークセッションに登壇

「すごいオフィス」に思う

「出社要請で社内に緊張関係」米国本社CEO

ダイバーシティなキャリアイベントで差別訴訟係争中の企業幹部が登壇している!?

大量解雇で第2、第3の訴訟も懸念。経済と優生思想の暗い関係を綴る

米メディアが幹部流出を連日深掘り。働きがいのある企業づくりも潮目が変わるのか…

障害者雇用の悪い企業への社会的制裁「企業名公表」を回避するか?今後の予想シナリオ

ついに社員1割削減。日本法人では新卒者への影響や第2、第3の訴訟も懸念(ベニオフ氏書簡全訳付き)

発達障害当事者から見た外資系企業 人員削減が与える影響

障害者雇用代行ビジネス報道に伴った「エスプールショック」に思う

社員1割削減中のセールスフォース、相次ぐレイオフ告白、障害者雇用訴訟、働きがいランキング上位常連もいつまで?

3月6日午後2時に東京地裁527法廷で第10回期日が行われます。

調査報道は、問題意識を持つ世論が喚起され、裁判の流れが変わること、海外にも伝わること、同社の是正が始まり、事例ができ業界全体での課題解決も早まること、制度見直しの議論にも影響、というインパクトを与えうるものです。これからもまだまだ続きます。

情報提供の呼びかけ

【セールスフォース日本法人の関係者・内定者の皆様へ】
今何が起きているのか、境遇について、実名・匿名での情報提供お待ちしております。「記事や投稿では触れてほしくないが、現状を伝えたい」という形でもお受けします。私のメールアドレス(hasets2015@(全角)gmail.com)までお送りください。

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