マガジンのカバー画像

詩集『よすけ』

33
書いた詩をまとめています。見たもの、思ったこと、聞いたこと、そういうものを拙い言葉で綴る。
運営しているクリエイター

2022年11月の記事一覧

〈自由詩〉それっぽい

〈自由詩〉それっぽい

それっぽい。

それっぽいってどういうことだ。

それらしい。
わりかし近い。
いかにもな感じ。

形がないのに何かは分かる。
それっぽいってよく分からない。

ほんものなのか。
にせものなのか。

たとえ下手くそでも。

最新のスマホで撮る写真とか。
お洒落な食器に盛った料理とか。

自分に何か持っていなくても。
それっぽくはできる気がする。

それっぽく仕上げたい。
そこから抜け出したい。

もっとみる
〈自由詩〉空っぽ

〈自由詩〉空っぽ

 空っぽ。

 何かはあるのに何もない。
 何か出そうにも何も出てこない。

 書いては消して。
 開いては閉じて。

 日が暮れて、
 夜が明けて、
 繰り返すだけ繰り返す。

 言いたいこと。
 伝えたいこと。
 書きたいこと。

 あるよ、あるある。たぶんある。
 たぶん思いきり放ちたい。

 言いたいこと。
 伝えたいこと。
 書きたいこと。

 本当はどうでもいいかもしれない。
 心に留

もっとみる
〈自由詩〉たとえば

〈自由詩〉たとえば

 もしもね、

 お金持ちだったら
 宝くじが当たったら

 一日が三十時間だったら
 時間を自由に使えたら

 力持ちだったら
 背が高かったら
 足が速かったら
 人気者だったら

 もう少し優しかったら
 人の気持ちが分かったら

 本当のことを言えたら
 嘘のままにできたら

 あの時に戻れたら
 楽しみがすぐに来たら

 もしもだけどね、

 欲しいものが多すぎる
 やりたいことが多すぎ

もっとみる
〈自由詩〉カラス

〈自由詩〉カラス

目が合うと襲われる。
近づくと襲われる。

昔からよく言われていた。
だから怖いと思うことが多いけど。

近くで見ると案外かわいかったりもする。

まんまるの目。

歩くときは首を前後に。
鳩みたい。

跳ねながら移動だってする。
すずめみたい。

当たり前に思うことって。
けっこう当たり前じゃない。

普通は今まで自分が見たものの平均。

頭だってすぐ凝り固まる。

そういうもん。それはそれ。

もっとみる
〈散文詩〉あいたい

〈散文詩〉あいたい

 会いたい、会えない。

 会いたい、会いたくない。

 分かってほしい。

 分かってよ。

 分かるわけない。

 分かってたまるか。

 向きあう、向かいあう。

 向き不向き。向こう見ず。

 何も知らないくせに、知ったふうな口をきく。

 ずけずけと、ずけずけと。

 そのやさしい瞳で。そのやわらかい手で。

 いたい。

 隔たりに。傷口に。触れる。

 会いたい、会いたい。

 会い

もっとみる
好きなもの

好きなもの

自分はどうも鳥が好きらしい。
確かに見ちゃうなとは思っていたけど。

人に言われて初めて気がつくこともある。

自分は何が好きで。
何に悩んでいて。
何があると幸せで。
何のために涙を流して。
何のせいで壊れてしまう。

自分のことなのに。
一番よく知っていると言ったりするけれど。

案外分からないものだ。

相手だったらなおさら。
だからちゃんと守らないとね。

〈散文詩〉スポットライト

〈散文詩〉スポットライト

 暗いここは、悲しい、苦しい、嫌。
 明るいここは、嬉しい、楽しい。

 それなら明るいところがいい。
 だから選んだ。

 するとみんなが見ている。
 視線を感じる。

 こっちからは誰が見ているかわからない。
 どう見られているかもわからない。

 それが怖くて動けなくなった。
 笑われている気がする。

 嬉しいはずの、楽しいはずの、ここが。
 たまらなく嫌になる。

 だから明かりを消した

もっとみる
とられまい

とられまい

 とられまいと
 しているわけじゃないけど

 このとり
 とるのがむずかしい

 なんとかとれた

 またとろうね

〈散文詩〉何者かになりたかった

〈散文詩〉何者かになりたかった

 小さな頃は歌うのが好きだった。
 歌うのは今も好き。
 だからと言ってうまいわけではない。

 小学生の時は学校で一番足が速かった。
 県の大会では予選落ち。

 チームの中でもサッカーが上手だった。
 地域の選抜では補欠。

 自分だけができること。
 周りもどんどんできていく。
 追い抜かれる。

 将来の夢なんてなかった。
 周りを見て大人が喜びそうな言葉を選ぶだけ。

 みんなの方が大き

もっとみる