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四年目

32
2022年の詩まとめ
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#散文

きょうは、

きょうは、

雨の日に水族館に行く
どんな感情も許される気がしてゆっくりと水槽を眺めながら
水中に揺れる水草の気分になる
Googleマップ片手に迷子になりながら君と目指す喫茶店
なにもない田舎道で白線の上を器用に歩く君がすき
誰に届くこともない紙飛行機を飛ばしましょう
きみと飛ばした、ということだけを記憶するために
大丈夫、
あすを迎えるたびにわたしたちは確実に死んでいくから
きょうを美しく生きよう

生きる希望は死

生きる希望は死

とてもとても嫌いでしかたない人間が学校や職場やインターネットに存在していたとして、死んでほしいとか殺したいとかいう感情は一切生まれたことがなくて、でもそういう感情を生んでしまう人が世界にはたくさんいること、ちっぽけなわたしには否定も肯定もできずに今日もなんとなくニュースを眺めながら生きてる、うっかりiPhoneの液晶がバキバキに割れちゃえばいいのにとか椅子の脚に小指ぶつけちゃえばいいのにくらいは妄

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あなたのことを、

あなたのことを、

いつだって穏やかなあなたの感情の海を波立たせたいとおもっているよ、その波にざぶざぶと腰まで浸かってあなたを抱きしめたい、僕だけがその塩辛い涙を拭いたい、僕だけの、海、夏のにおい、忘れられないキミのにおいと似てる、はやく夜風がさらってくれたらいいのに、この世界のすべてが嘘で誰かがみせている夢であっても、ぼくがきみを見つけて選んだことは嘘じゃないよ、って愛を叫ぶよ、あなたが優しいのは親のしつけが良かっ

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夜に溢す

夜に溢す

こんばんは三日月、真夜中は心がからっぽでも許されるよね、深い闇が隠してくれるから、からっぽであること、触れなければわからないから、きみはいつも僕よりすこし先を歩いてる、その先は明日で、未来で、朝であるのに、夜を愛しているきみは気づいているのか、気づかないふりをしているのか、その横顔は闇に隠されたままで、あなたを連れ去ってしまう夜明け前の静かさが嫌い、永遠に夜が続けばいいのに、それでも朝日に照らされ

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しねないわたしたち

しねないわたしたち

僕もきみもたとえ死んだとしても、僕やきみであった肉体や生活の痕跡や卒業アルバムのくそださ写真も無くならないし、人生で関わった他人の記憶からは居なくなれなくて、それは僕たちの望む「死」とは遠くて、「死にたい」という感情はやっぱり誰にも理解されないし共有できないから、今日も生きているよ、家族が嫌いで他人が嫌いで自分も嫌いでどうしようもなく世界を恨んでいても、君はちゃんと「死」を恐れるからすきです、死ん

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みえる

目薬をさして視界がぼやける、ゆらゆらする、世界が揺れている、遠くて近い国で人が殺して殺されていても平気な顔して飲む新作フラペチーノ、甘ったるさでつらいことをシェイクして薄めてしまえ、目にみえない花粉やウイルスに人間は弱すぎる、ついでに絆とか愛情とかにも弱すぎる、Wi-Fiがとんでる、受話器から聴こえるあなたの声をきちんと拾いたいから、夜に電話をかけてもいいですか

色白の君

色白の君

ふれたら消えてしまいそうな君の横顔が月光に照らされる、まろやかな肌に寒さで紅がさす、体温を感じられない君が深く息をする、闇に広がる白い息、ほんのすこし温度を感じた、相変わらず指先は冷たくて、わたしがふれると困ったように手をひっこめる、ちゃんと生きているとそのかじかんだ指をみて、安心する、君は好きな人の話をするとき、とても可愛くてきらきらしていて清くて、尊いなぁとお日様の光を浴びるように聴いているよ

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0111

自分という存在が許せなくて、終日気持ちが溺れていた、息をする度にしんどくて、真冬の空気の冷たさで肺がスースーする、空気の新鮮さが怖い、わたしたちを受け入れている地球は神様より神様だけれど、予告もなしに人類を災害だとかウイルスだとかで消してしまう、それをわたしたちは都合よく運命とか言ってしまう、許されるために、誰かのせいにしたら安心するね、きっと誰もが誰かから許されたくて生きている、自分が自分を許せ

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