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あなたは、どこまで「厨二」を許容できますか?

日本においてアニメが本格的に興隆したのは、90年代後半からだと思う。
そのキッカケは深夜アニメのスタートにあり、「アニメは子供が見るもの」という前提が崩れたことに始まる。
そのエポックメイキング的なものをひとつ挙げるとするなら、やはり95年の「新世紀エヴァンゲリオン」じゃないだろうか?
いわゆる、セカイ系ってやつの先駆けだね。
これの影響力は、相当大きかったと思う。
まずアニメ業界そのものに与えた影響が大きかったようで、95年以降には「エヴァ」っぽいアニメが急増したよな?
世界観がやたらスケール大きい上に難解で、それを紐解く為にわざわざ皆で考察しなくちゃならん系のやつ。
それはそれで全然いいことなんだけど、ただしこれには「功罪」があって、その「罪」の方をひとつ挙げるとするなら、人生において最も多感な時期にこういうサブカル環境下で育った子たちの中から、「厨二病」なる新時代的症候群が湧いてきたことだよ。

「この素晴らしい世界に祝福を」めぐみん
「中二病でも恋がしたい」ダークフレームマスター

まあ、こういうのはハタで見てると面白いし、今じゃ↑↑のようにお笑いネタにされてるけど、少なくとも深夜アニメ興隆以前の時代には、こういう子はほぼいなかったと思う。
いうなれば、サブカルの落とし子。
とはいえ、大体の場合は成人までにこのての症候群は鎮静化し、いわゆる「黒歴史」として封印されることになるんだろう。
青春の甘酸っぱい(ほろ苦い?)思い出として。
誰しも人生において一度や二度、自室に大きめの魔法陣を描き、その上に立って「レリ~ズ!」と叫んだことぐらいはあるよね?

思春期を過ぎ、「あっちのセカイ」と「こっちの世界」を分けて考えられるようになったオトナは、やがて「あっちのセカイ」を趣味として楽しむようになる。
それが、00年代から急速に加熱してきたコスプレのモチベである。

こういうのは普通に健全だし、今後もどんどんやってもらって構わない。
ただ、このてのやつとはまた別種の症候群も存在していて、それが俗にいう「電波」である。
厨二病」と「電波」は一見似てるが、その本質は似て非なるものだと思うなぁ。
なぜって、「電波」は深夜アニメ等サブカルが興隆するよりずっと昔から、一部で根強く存在していたから。
いつから存在していたのか?
UFOブームやユリゲラーの超能力ブームがあった70~80年代?
そうね、オカルトのテキスト「月刊ムー」の創刊が1979年というから、大体そのあたりに端を発するのかもしれない。
思えばこのぐらいの時期から、やたら超能力モノのアニメ映画が公開されたんだよ。

1980年、映画「地球へ・・」公開

竹宮恵子の原作漫画は、1977年から連載

1983年、映画「幻魔大戦」公開

平井和正・石ノ森章太郎の原作漫画は、1967年から連載

1984年、映画「超人ロック」公開

聖悠紀の原作漫画は、1977年から連載

この3本の映画は、ESPアニメの先駆け作品として是非見といてほしい。
そういえば「超人ロック」の聖悠紀先生が2年前に亡くなり、すると昨年にはこの作品が日本漫画家協会文部科学大臣賞受賞、今年には日本SF大賞受賞という感じで、こんなの生前にちゃんと表彰しとけよ、とツッコみたくなる流れになっている。
ここにきて、再評価のムーブメント?
そういや、私も昔「超人ロック」の原作を何冊か読んだけど、不老不死のロックは今でいう「フリーレン」のテイストで、逆に今の時代に再アニメ化するのは悪くないかもしれない。
明確な主人公最強系だし、おそらく今の時流に合ってるよ。

そして1988年、映画「AKIRA」公開

大友克洋の原作漫画は、1982年から連載

私はこの「AKIRA」が、それまでのESP系SF作品の潮流にトドメをさしたと思ってるんだ。
というのも、これがあまりにも完成度高かったもんだから、それまでのものが一気に色褪せて見えるようになっちゃったのよ。
そのせいか、手塚治虫先生がやたら大友先生を敵視してた心情も分かる気がするんだよね。
事実、「超人ロック」ほどの名作でも、聖先生が亡くなってようやく表彰をされるほどの扱いだったわけさ。
そこは別に大友先生のせいでもないんだけど・・。
何にせよ88年の「AKIRA」をひとつの区切りとして、90年代からは皆が積極的にはESPを描きたがらなくなった。
その必然として、時代の潮流は
ESP系SFから、魔法ファンタジーへ
「電波」から、「厨二」へ
よく考えりゃ、「ガンダム」でも90年代以降は「ニュータイプ」が薄れていったもんなぁ・・。

このレベルのを80年代でやられたら、もうお手上げですよ

さて、最後にひとつ、先日私が見つけた掘り出しモノのOVAアニメをご紹介したい。
知る人ぞ知る隠れ名作、「電波的な彼女」である。
これの内容については、裏「中二病でも恋がしたい」という表現が最も適切だと思う。
まずは、手っ取り早く本編を見てもらおう。

これは「エルフェンリート」の監督で知られる神戸守氏の作品で、なるほどやや鬱が入ってるんだが、しかしそれでも後味は決して悪くない。
似た系統の「地獄少女」より全然爽やか。
このOVAは全2話で、↑↑の第1話に続く第2話の方が内容は面白く、そっちの方が本命である。
もし第1話を見て気に入った方は、是非そっちの方もどうぞ。
この作品で私が何より面白いなと思ったのは、「厨二」や「電波」をキモチ悪く描きつつも、結論的には「それもひとつの生き方」として、どこか俯瞰してるところである。
こういう作風は実に珍しい。
まぁ確かに、その人が幸福か不幸かを決めるのは他者でなく本人であって、つまり客観ではなく主観。
そして「厨二」や「電波」のセカイは、それこそ完全なる主観世界に他ならない。
ならば他人に迷惑をかけない限りは、そして本人がこれを納得してる限りにおいては、一応こういうのもありなんじゃないかな?と、この作品見て率直に思ったよ。
「中二病でも恋がしたい」はヒロインの六花が可愛いからそのへんウヤムヤにされてるが、「電波的な彼女」ではヒロイン・堕花雨が普通にキモい分、そのメッセージ性に妙なリアリティがあるんだよね。
これ、かなりの良作だと思ったわ。

「電波的な彼女」ヒロイン・堕花雨

一応今回の話をまとめると、「厨二」は時代の産物であり、やはりサブカルの影響力はデカいよね、ということ。
小さなお子さんを抱えてる親御さんとか、ある程度気を使った方がいいかもしれん。
昔は「世界名作劇場」や「まんが日本昔ばなし」という絶対安心コンテンツがあったもんだが、今はそういうの、あんまりないからなぁ・・。
ちなみに最近、私は1975年アニメの「ガンバの冒険」(出崎統作品)を見ている。
これ、めっちゃ面白いんですけど?

とりあえず女児には幼い頃から「CCさくら」を見せて、「はにゃ~ん」をマスターさせましょう!


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