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「ワンピース」vs「FAIRY TAIL」の検証

フランスは、日本に次ぐ世界第2位の漫画大国である。
そのフランスの大統領マクロン氏が2021年に来日した際、こういう発言をTwitterでしている。

『このひと時を皆さんと分かち合えることをとても嬉しく思います。「AKIRA」「FAIRY TAIL」「ダークソウル」「光」をはじめとする皆さんの数々の作品は、日本だけでなくフランスでも神話になっています』

この発言の中にある「ダークソウル」はコレ↓↓

シリーズ累計出荷本数2700万本のバンダイナムコのアクションRPG
英国のアワードで「Ⅱ」「Ⅲ」がゲームオブザイヤー受賞、2021年「歴代最高ゲーム」に認定

そして、「光」はこれ↓↓

2017年河瀬尚美監督作品
カンヌ国際映画祭で審査員賞受賞

で、マクロン大統領は来日中に「ダークソウル」を作った宮崎英高、「光」を監督した河瀬直美、「AKIRA」原作者の大友克洋、「FAIRY TAIL」原作者の真島ヒロと面会したそうだ。
ここで「あれ?」と思うでしょ。
「ダークソウル」や「AKIRA」は確かに国際的な影響を与えたコンテンツだし、「光」はカンヌに出品された映画だからフランス人が知ってるのはいいとして、この中では「FAIRY TAIL」だけがちょっと場違いじゃないか?と。
うん、確かにマクロン氏は来日に際して
『日本の首相より、まず吾峠呼世晴(「鬼滅の刃」原作者)に会いたい』
と言ったとされており、それが無理だと伝えると
『じゃ、諫山創(「進撃の巨人」原作者)はどうだ?』
と言ったらしい。
このオッサン、めっちゃサブカル好きじゃん(笑)。

おそらく、スケジュールの都合がつくか否かで、漫画家リストの4~5番手だったかと推測される真島ヒロ先生にお鉢が回ってきたということなんだろう。
いや、仮にそうだとしても、「FAIRY TAIL」はそこまで凄い漫画だっけ?と思う人はいるかもしれない。
「FAIRY TAIL」といえば、心ない人たちから「ワンピース」の二番煎じだと揶揄される声があった作品と記憶する。
そりゃまぁ、少年ジャンプであれほど「ワンピース」が爆発的に売れたら、少年マガジンが「あのテイストの漫画をウチでも・・」と考えるのは企業として当然でしょ?
これと似たようなことは「幽遊白書」がヒットした際、少年サンデーが同じテイストの新連載「烈火の炎」をぶつけてきたことがあったし。

「幽遊白書」と「烈火の炎」
「ワンピース」と「FAIRY TAIL」

こういうのは「盗作」というわけじゃなく、まぁ一種の企業戦略だよね。
実際、作品の内容は全然違うのよ。
「烈火の炎」は詳しく知らんから置いとくが、少なくとも「ワンピース」と「FAIRY TAIL」じゃ対象ターゲットからして違うと思う。

「ワンピース」が「張り巡らせた伏線の数々を楽しんで下さい」というRPG志向なのに対し、「FAIRY TAIL」はむしろ「頭を空っぽにして心からバトルを楽しんで下さい」というバトルゲーム志向である。
どっちかというと「FAIRY TAIL」は「ワンピース」より「ドラゴンボール」の方に近い。
「FAIRY TAIL」でも天下一武道会みたいな展開になるし・・。
そして尾田栄一郎先生は、鳥山明先生のことをめっちゃリスペクトしてるのよ。
バトルを描かせたら鳥山先生には敵わない、って。
案外、そういうもんである。
そして「FAIRY TAIL」がフランスで700~800万部を売り上げたというのも、これがポスト「ドラゴンボール」系として認知されたということじゃないだろうか?
小難しいことなんていいから、頭を空っぽにして単純にバトルを楽しみたい、そういうノーテンキな層は海外にこそ多い気がする。
逆に日本のオタクは小難しいこと考えるの大好きだから(私自身も含む)、どうしても国内じゃ【ワンピース>FAIRY TAIL】になっちゃうんだよね。

真島ヒロ先生は、フランスに行けば神様扱いらしいぞ

個人的には「FAIRY TAIL」の方が「ワンピース」より優ってるところもあると感じていて、それは女性キャラの可愛らしさである。
もともと、「FAIRY TAIL」はボーイミーツガールから始まる物語だけに、「ワンピース」に比べてほんの少しラブコメ要素が上。
それゆえ、女性キャラをちゃんと可愛く描くことは必須だったはずだ。

「FAIRY TAIL」主要メンバー

普通、バトル物といえばどうしても男性キャラ中心になってしまうもんだし、それは「ドラゴンボール」だって例外じゃなかった。
だけど「FAIRY TAIL」だけは、男女比のバランスが異様なほどいいのよ。
しかも女性のキャラ分けが巧く、元気いっぱい爽やか系のルーシィ、頼れるお姉さん系のエルザ、優しいお姉さん系のミラジェーン、ヤンデレ系のジュビア、無垢な妹キャラ系のウェンディなどなど、いずれも魅力的な子ばかりである。
私は、ルーシィとエルザが好きだったなぁ。
平野綾さんと大原さやかさん、声の配役もばっちりだった。
ただ、主人公ナツの声(cv柿原徹也)がうるさくて嫌いだったわ・・。

ハッピー

あと、これは一行に同行するハッピー。
「ワンピース」でいえばチョッパーに該当する喋る動物キャラだが、可愛さでいえば明らかに【ハッピー>チョッパー】である。
だって、ハッピーの声は釘宮理恵だもん。
あまりにも可愛いので、真島先生は次作「EDENS ZERO」でもこのハッピーを出している。

「EDENS ZERO」に出てくるハッピー

はい、見分けがつきません。
といっても両者は同一人物でなく、全くの別物設定。
声は相変わらず釘宮理恵だけど。
というか、「EDENS ZERO」のキャラはどれも「FAIRY TAIL」のキャラと酷似していて、これはあだち充的「どうしても似てしまう」パターンではなく、むしろ真島先生が確信犯的にやっている感じだ。

エルシークリムゾン

このエルシーなどはエルザと全く同じキャラデザで、声もエルザと同じ大原さやかさんがやっている。
ひょっとして、これはパラレルワールド的世界線の設定が後々に判明するのかもしれない。
なんせ、「EDENS ZERO」はファンタジーじゃなくSFだから。

他にもナツ似、ルーシィ似、ウェンディ似、ジュビア似などがいる
また、ここでも主人公シキの声(cv寺島拓篤)がうるさくて嫌いだわ・・

「EDENS ZERO」は「FAIRY TAIL」のSF的焼き直し?
いや、それは全く違う。
「EDENS ZERO」はそんな生っちょろいものじゃなく、かなりの野心作である。
私が思うに、これこそ真島ヒロ先生の「ワンピース」に対する挑戦だ。
なんせ、これは「ワンピース」同様の海賊物で、「ひとつなぎの大秘宝」と同様に、ここでは「マザー」への到達という旅の目的がはっきりしてるわけよ。
そこが「FAIRY TAIL」とは全く異なっている。
こういった物語のタテ軸がはっきりしてるがゆえ、ほとんど「FAIRY TAIL」ではなかった、伏線を張り巡らせた物語構造が「EDENS ZERO」にはあるのよ。
そう、前作と違い、「頭を空っぽ」にしていたら物語についていけなくなる類いのやつさ。
鬱展開もまたハンパじゃなくて、特にアニメ30~31話あたりの絶望感は想像を絶するものがあった。
私、ちょっと真島先生のこと、過小評価してたわ。

「FAIRY TAIL」から一転、残酷な物語と化した「EDENS ZERO」

よく考えたら、真島先生はこれで3つ目の長編だよね?
3つは凄いわ。
思えば「銀魂」の空知先生とか、一体どこへ行ってしまったんだろう?
一発大きく当てれば一生食うには困らんのが漫画家というものであり、真島先生だってもう描かずとも一生豪遊して暮らせるはずなのに、敢えて3作目にチャレンジしたその心意気、正直凄いと思う。
「こいつ、こういう顔しか描けねーでやんのw」とか「ヒットしたキャラの使い回しで描いてやがるw」とか揶揄する声はたくさんあると思うが、そういう何も理解できてない人たちのことは放っておけばいい。
私はむしろ「EDENS ZERO」を見て、真島先生の進化を感じたぐらいだけどね。

絶対に押してはいけないボタンのそばにDONT’PUSHと書いてあるキャラデザイン
こういうのは「FAIRY TAIL」になかった、真島先生の進化だと思うぞ

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