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富山で宇宙人と闘うお仕事アニメとは、さすがP.A.WORKS!

今回は、アニメ「クロムクロ」について書いてみたい。
これは、あのP.A.WORKSが手掛けた稀少な「ロボットアニメ」である。
‥うん、明らかにこれはP.A.WORKSの専門分野ではない。
じゃ、まず最初に、既存のP.A.WORKS作品における特徴についておさらいをしておこうか。

【P.A.WORKSアニメの特徴とは?】


①キャラの作画が巧く、特に女子キャラの作画が異様にカワイイ

②背景の作画が綺麗で、特に自然あふれる風景の作画は秀逸

③富山県など、地方都市を舞台にしたものが多い

④脚本は人間ドラマに特化してて、繊細な心理描写の表現に長けている

⑤職業の詳細を描く、「お仕事アニメ」が比較的多い

⑥軸足は「青春アニメ」で、たとえシリアスであっても、作風は基本明るいものが比較的多い

あの岡田磨里さんを最初にブレイクさせたのはP.A.WORKSであり、①~⑥を見てると、それも納得でしょ。
常に「人間ドラマのP.A.WORKS」なんですよ。
描きたいのはあくまで人間そのものであって、無機的なメカ、ロボの類いはむしろ対極のものである。
だから「P.A.WORKSがロボットアニメを作る」と聞き、少し違和感を感じたんだよね。
どうやら、これは「創立15周年記念」という特別企画だったらしく、今までやらなかったことに今回は敢えて挑戦してみたんだろうよ。

「クロムクロ」〔2016年)

「クロムクロ」、これを見た感想を率直に述べよう。

何コレ?
めっちゃ面白いじゃん!


いや、そうは言っても、いわゆる「本格派ロボットアニメ」の類いではないんだ。
メカ描写やバトルそのものの作画を注視する「ロボットアニメのグルメ」とされる方々には、きっと物足りないものだろう。
でも、そういうのを見たいなら、これじゃなくサンライズの作品を見てりゃいいじゃないか。
あっちは、それが専門分野なんだから。
まぁ、ロボットアニメを「カレー」にたとえるとすると、サンライズのやつはカレー専門店の本格カレーさ。
香辛料を厳選し、その調合にこだわり抜いたやつだね。
ご飯じゃなく、ナンが出てくる系のやつ。
一方「クロムクロ」の場合は同じカレーでも、家でお母さんが作ってくれたカレーという感じか?
ジャガイモやら人参やら夏野菜やらがゴロゴロと入っていて、香辛料云々というより「具をたくさん食べなさい」系のやつさ。
これはこれで十分おいしいというか、何か不思議と安心感あるんだよなぁ。

「クロムクロ」では、主人公がカレーを食べるシーンが非常に多かった

「具がおいしい!」

これがP.A.WORKSの真骨頂なんですよ。
じゃ、その具の数々をご紹介。

ヒロイン・由希奈

もっさり系の女子高生。自分に自信がなく、進路もまだ決められないほど。
しいて得意分野をいうと、料理ぐらいか?

主人公・剣之介時貞

もとは戦国時代を生きていたサムライ。めっちゃ強い。
謎のオーパーツ「キューブ」の中から蘇生して、現代を生きることに・・。

由希奈のクラスメイト・ソフィーノエル

女子高生(フランスからの留学生)でありつつ、国連研究所のジオフレームパイロットを務めている。常に冷静沈着な性格の才媛。

敵キャラ・ムエッタ

地球を侵略するエイリアンの一員。
仮面をとると、なぜか由希奈と同じ顔をしてて、剣之介の昔の主君・雪姫とも同じ顔をしている。

由希奈の妹・小春

明るく元気な小学生。サムライの剣之介ともすぐに打ち解ける。
なぜか語尾は「ござる」で、めっちゃかわいい。

こういうキャラを見てると、あぁ~P.A.WORKS!って感じでしょ?
メカ描写が割と凡庸であることを補って尚お釣りがくるほど、キャラの方は皆めっちゃ魅力的なんですよ。

ストーリーも、なかなか面白い。
主人公の剣之介は450年前に主君・雪姫とともに「鬼」と闘った際、その時に乗ってた「クロムクロ」(←鬼から奪った機体)に取り込まれてコールドスリープしてたっぽい。
「鬼」というのは、ようするに地球侵略をもくろむ宇宙人のことだったんだね。

ラスボス

・・まぁ正直、こういうところは昭和アニメっぽくてあれなんだけど、でも「なぜ敵が由希奈と同じ顔をしてるのか?」とか、「なぜ鬼が日本語を喋るのか?」とか、「なぜ由希奈を殺そうとする鬼と、逆に助けようとする鬼がいるのか?」とか、そういったミステリー要素でぐいぐい引き込まれていく系だね。
ちなみに、そういう数々の謎は終盤で全部綺麗に回収されるわけで、それが意外なほど論理的破綻はなく、このへんは大したもんである。
とはいえ、サンライズやBONESのに比べると、そりゃSFとしてはペラッペラですよ(笑)。
というか、P.A.WORKSとしても本格SFを作るつもりは毛頭なかったと思う。
彼らがやりたいのは、あくまで青春ドラマであり、お仕事アニメの方なんだから。

そして、いまやP.A.WORKお馴染みのプロモーションとでもいうべきか、

猛烈な富山県推し!


多分、富山県の観光協会はP.A.WORKSに足を向けて寝られないんじゃない?
アニメファンの聖地巡礼は、そこそこ富山におカネを落としてるはずだからね。
いやホント、富山はP.A.WORKS発祥の地でもあるし、アニメファンなら一度は訪れべき場所だろう。
truetears」「Another」「サクラクエスト」、あと本作「クロムクロ」も含めて聖地には事欠かないし、あと藤子不二雄先生(A&F両方)、細田守河森正治といった偉大な方々の生誕の地でもあるんだ。
ちなみに、街にはドラえもんの銅像が建ってました(笑)。

富山県高岡市

そして、この「クロムクロ」のストーリーコンセプトは、

富山がセカイを救う!


といったところである。
宇宙人(鬼)の世界同時攻撃で各都市が次々に陥落していく中、世界で唯一富山だけは何とか鬼の撃退に成功するわけです。
だけどね、繰り返しいうけど、これはホント、バトル主体のアニメじゃないんだわ。
まぁ、監督は「DARKER THAN BLACK」等で知られる岡村天斎さんなので、アクション主体にしようと思えばできたかもしれん。
でも、敢えてそうしなかった。
それこそ、闘いたくないヒロインが「闘おう」と腹を据えるまでに1クール近くを費やすほど心理描写に丁寧なドラマで、このへんはいつもの「お仕事アニメ」そのまんまのスタイル。
当然、日常描写がめっちゃ多いし、またそこが、この作品の一番売りになるところなのよ。
やっぱり、餅は餅屋。
どっちかというと「ガンダム」よりは、河森正治さんの「マクロス」の方に近いニュアンスかと。
当然、LOVEもあります。

喧嘩する2人、尊い・・。

なんていうかな、こういう日常シーンこそ面白いので、ず~っと見てられる感じ。
そもそもラブストーリーにおいて、こういう「別の時代からきた人との恋」ってのはひとつの定番でもあり、それこそ細田守「時をかける少女」なんてのはその典型か。
あれは少し切ない締め方だったけど、「クロムクロ」の方は切なくもあり、また一方で前向きでもある、希望に満ちた締め方なんだよね。
思えば第1話で、ヒロイン由希奈が進路希望の用紙に「火星」とテキトーなことを書いて説教食らってたんだけど、実はこれ、ちゃんと伏線になってたことが最終回にて判明。
というのもエピローグ、由希奈が宇宙に発つ調査航宙艦に乗り込むところで締められたわけで。
こういう構成、結構うまいなと思ったわ。
話は綺麗にまとまったから続編は多分ないと思うが、でも仮に続編があったら、私、絶対に見るよ。
そのぐらい、キャラが魅力的だったということさ。

特に妹の小春、かわいかったなぁ・・
ソフィーもめっちゃよかったなぁ・・

ここまで楽しく明るいロボットアニメというのは、めったに出会えるものではない。


P.A.WORKSさん、「クロムクロ」の続編じゃなくていいから、またこういうのを作ってくれないだろうか?
ニーズは絶対あると思うんだわ。
ロボットアニメ専門のところって、みんな重いのばっかり作るから。
そのへん「クロムクロ」は、絶妙のバランスだったと思う。
甘口でも辛口でもなく、中辛といった感じのカレー?
お母さんのカレーですよ。
たまに、妙に食べたくなる。


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