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Book Review

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#小説

助け合えない私たちが目指すものとは|「おいしいごはんが食べられますように」

助け合えない私たちが目指すものとは|「おいしいごはんが食べられますように」

名久井直子さんの装丁に惹かれて購入した「おいしいごはんが食べられますように」は今年の芥川賞を受賞。それは「口にしにくいことを言葉にしてくれてありがとう」という最高な一冊でした。

どこにでもいそうな人たちのありふれた日常が急に事件になる。

「女性」というものはこうあるべき、「仕事」というものはこうするべき、「ごはん」というものはこう食べるべき、という誰が決めたのかすら分からないルールが延々と積み

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マリブは何度でも蘇る。手放すことで得られた幸せ。

マリブは何度でも蘇る。手放すことで得られた幸せ。

夏になると読みたくなる作家が何人かいるのですが、TJR(Taylor Jenkins Reid)はまさにその1人です。
前作の「Daisy Jones &The Six」という本は、幸運にもパンデミック直前に行けた初夏のアメリカで読みました。ある場所に行く時は、その土地を舞台にしたり、その国の人が書いている本を読むのが好きなので…、なんとなく感じが出るような気がするのです。
今作「Malibu R

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完璧な夫婦生活を壊した真犯人は?ラストまで読者を悩ませる完璧な心理スリラー

完璧な夫婦生活を壊した真犯人は?ラストまで読者を悩ませる完璧な心理スリラー

MarissaとMathew Bishopは周囲の誰もが羨む「ゴールデン・カップル」です。夫妻共に見た目が良く、互いにビジネスを成功させていて、まさに”理想の夫婦”に見えていましたが、ある日Marissaはその結婚を自ら壊しにかかり、直ぐに後悔します。

崩壊してしまった結婚生活をどうにか取り戻そうと、Marissaはコンサルタントをしている元セラピストAveryを雇います。Averyはあることが

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その文化は誰のものか?

その文化は誰のものか?

2020年のオプラ・ウィンフリーのブッククラブにピックアップされていた「American Dirt」。

ページターナーな一冊で「寝不足になった」「他の文化を知るきっかけになった」「メキシコから何故移民がやってくるのか。その問題の根深さが理解できた」などというポジティブなレビューが沢山付き、瞬く間に全米ベストセラーになった反面「Cultural Appropriation」「文化の盗用」なのではな

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現在のアメリカが見える人間ドラマ|日々の生活の中で起きる人種差別とは?

現在のアメリカが見える人間ドラマ|日々の生活の中で起きる人種差別とは?

女優のリーズ・ウィザースプーンが「Hello Sunshine」という会社と連携して立ち上げたオンラインブッククラブ(読書会)。洋書が好きな方はご存知の方も多いと思うのですが、ウィザースプーンが毎月1冊選書し、その本をInstagramのアカウントで紹介し、ネット書店だけでなく「IndieBound」を通じてローカル書店を応援しよう、という取り組みを行なっています。

ウィザースプーンが選書した本

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「成功するためには努力と才能」を信じてしまう私達が、本当に知らなければならない理論

「成功するためには努力と才能」を信じてしまう私達が、本当に知らなければならない理論

世界的ベストセラーを何度も出している、マルコム・グラッドウェルの最新作「Talking to Strangers 」今年の9月10日に出版されてからずっとアメリカのAmazonではベストセラー入りしています。そんな話題の一冊を読み始める前に、グラッドウェルの代表作の1つ「Outliers」を読みました。

「何事も一流になるまで習熟するには、1万時間を要する」と、なんとなくどこかで聞いたり読んだこ

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