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転職先の財務分析(安全性分析)はしておこう!

【SYNCAオープン!】

経営管理部門・バックオフィス特化型の転職サイト「SYNCA」(シンカ)がオープンしました😁
皆様是非ご活用ください!


はじめに

転職を検討中の皆さん、転職先の財務的な安全性に対して、気を配っていますか?🙄

苦労して転職したのに、その会社が一気に業績不振になったり、潰れたり、リストラクチャリングを開始したりして、一気に不安定な身分に置かれたら、転職した意味がないですよね?
もちろん、あえてそういう危ない会社に行くという戦略も私はありだと思っていますが、上級者向けの転職です。

普通の人は、せっかく転職するのであれば、できる限り安全で、順調に成長している会社に行くべきです。
その方が楽しめますし、実務的な学びも多いと思います。

そこで今日は、転職先の安全性分析(主に財務分析)について語っていきましょう
なお、このnoteはベンチャーで働いている方や、ベンチャーへの転職を検討中の皆さんのために書いているので、この記事も主にベンチャーを対象にして書いていきます!



1.自己資本

まずは何と言っても自己資本が重要です。
今保有しているすべての資産(総資産)のうち、どれくらいの資産を自分のお金で手に入れたのかを見ます。
つまりは、どれだけ自分のお金で事業を行っているのですか?ということです。
借金ばっかりしていないかをチェックするのです😁

当然のことながら、借金ばっかりしている企業は、それだけ倒産の危険性が増していきます。
これは個人の家計簿と同じです。
借金には必ず利息がつくので、その利息を支払うために、利益が目減りしていきます。


財務分析指標でいうと自己資本比率と呼ばれている指標が便利です。

自己資本比率の計算式は、以下の通りです。

$${自己資本比率=自己資本÷総資産×100}$$

とても簡単な計算式です!

ちなみに、自己資本とは、総資産から負債を引いた額です。
自己資本=純資産と言い換えてもOKです!

自己資本の内訳は、資本金、資本剰余金、利益剰余金などですが、BS(貸借対照表)を見慣れていない人にとっては「なんじゃそりゃ?」という項目なので、無視して大丈夫です!

自己資本比率とは、単純に、
会社が保有している総資産の内、何%が自分のお金(自己資本)なのかを見る指標です。

当然、自己資本比率が高ければ高いほど企業としての安全性は高いと考えられます。
通常のベンチャー企業であれば、ビジネスモデルの多くが情報通信業の範囲内で、借金もそんなにできないはずなので、最低でも自己資本比率50%を超えていることが望ましいと思います。

ただ、これはあくまでも目安で、業種やビジネスモデルによって適性な数値は変わります。
このあたりは見解が様々なので、自分の中で妥当な数値を見極めるしかありません。


では、実際に計算してみましょう!
例えば、総資産が100億円の企業があったとします。
その100億円の資産の内、80億円を自己資本で賄っていた場合、上記の計算式より

$${80(自己資本)÷100(総資産)×100 = 80%}$$

ということになります。
自己資本比率80%はとても優秀な数値で、総資産の大部分を自己資本だけで賄っている健全な状態です。

なお、転職先が上場している場合は、わざわざ自分で計算する必要はありません😁

バフェット・コードというサイトで社名検索をすれば、すぐにわかります。

https://www.buffett-code.com/

たとえば、昨年末に上場を果たしたオープンワークさんの情報を見てみましょう!
皆さんすでにご存知だと思いますが、企業の口コミを日本一集めているあのオープンワーク社です。
就活のときや転職の時、まずオープンワークの口コミを見ますよね!


バフェット・コードで「オープンワーク」を検索した画面


右から2番目の水色の項目が自己資本比率です😁

バフェット・コードを使えば、一瞬で自己資本比率を見ることができるので、とても便利です。
それにしても、オープンワークさんの自己資本比率91%という数値は驚異的ですね🙄
借金なんかほとんどないので、ほぼほぼ無借金経営です。
IPOによって資金調達もしているので財務健全性が向上しています。


一方で、未上場ベンチャーの場合は、財務諸表が公表されていないことがほとんどなので、自己資本比率を調べる方法が乏しいです。

一部の企業については、官報で簡易的な決算書を公告しているので、それを調べて、計算するという方法があります。



ただ、これは上級者向けで、会計に一切関わりがない人がこの手間をわざわざかけるのは現実的ではないと思います。
そもそも未上場ベンチャーに行くということ自体が若干上級者向けの転職なので、ある程度リスクの高い転職であるという点は認識しておいた方が良いかも知れません。

なお、比較的名の知れている未上場ベンチャーの財務健全性を見るための一応の指標としては、資金調達履歴を確認するという方法もあります。
スタートアップデータベースで検索をすると、過去の資金調達の一覧が見られる会社もあるので、そういう情報を参考にして、上手く行っているのかを確認すると良いと思います。

勢いのあるベンチャーであれば1年半~3年毎に資金調達を行うのが通常のペースなので、それで順調に資金を調達できているのであれば、投資家から一定の評価を得ている(出資しても良いと思われている)ということなので、一応の指標にはなると思います。
なお、勢いのあるベンチャーの場合、資金調達シリーズをA→B→Cと重ねるごとに、資金調達額が上がっていく傾向があります



2.流動資産

続いて、流動資産のお話をします。

流動資産とは、現金・預金・在庫品・原料・売掛金などの現金化しやすい資産又は現金そのもののことをいいます。

その中でも特に重要なのが現金と預金です。
要するに、余裕のあるお金をどれだけ持っているのかという点を分析するのです😁

このときに使える財務指標としては、現預金比率というものがあります。
計算式は以下のとおりです。


$${現預金比率= \frac{現金+預金}{流動負債}×100}$$


若干難しそうな分数が出てきましたけども、大丈夫です!
小学生レベルの割算なので、きっとできます。

ちなみに、流動負債というのは、1年以内に返済しないといけない債務だと思ってください😁
勘定科目としては、買掛金、短期借入金、未払金などが該当します。

では、実際に計算してみましょう!

例えば、今現在、2億円の現金と18億円の預金を持っている会社があるとします。
この会社では、流動負債として、5億円の負債があります。

この場合の現預金比率は、上記計算式より


$${ \frac{2億(現金)+18億(預金)}{5億(流動負債)}×100=400%}$$


つまりは、流動負債の4倍の現金があるということです😁

当然ですが、現預金比率は高ければ高いほど良いです。
お金はいくらあっても困りませんし、キャッシュイズキング(現金こそ王様)という諺もあるくらい重要なものです。
なお、一般的な企業では、現金をそのまま会社内に保管していることはほぼないので、原則は現預金(現金+預金)という一つの括りで見ます。

さて、現預金比率について、どのくらいあれば安心なのかという目安は業種によって異なる部分もあると思いますが、私見としては、最低でも150%(1.5倍)はほしいなと思っています。
比較的良好な状態といえるのは200%(2倍)以上ではなかろうかと思います。

ここで、健全な現預金比率を持つベンチャー企業として、セーフィー社をご紹介しましょう!



セーフィー社は、クラウド録画型映像プラットフォーム「Safie」を開発・運営している会社です!
「Safie」は、サブスクリプション型で提供される録画サービスで、録画以外にも様々な映像分析サービスや連携サービスを追加することができるプラットフォームです。

防犯カメラ+映像のクラウド管理という感じのサービスで、非常に面白いビジネスモデルです!

セーフィー社はすでに上場しているので、貸借対照表を閲覧することができます。
2022年11月公表の四半期報告書を見る限り、現預金が約88億円あって、流動負債が約11億円ですね。
これを上記の式に当てはめてみましょう!


$${ \frac{88億円(現預金)}{11億(流動負債)}×100=800%}$$


現預金比率800%で、流動負債の8倍の現預金を保有しているとても健全な財務状態であることがわかります。
素晴らしいです。
さすが有名ベンチャーです!


次に未上場ベンチャーについて見ていきたいのですが、実はこの指標、上場企業でないとなかなか調べられないという欠点があります
上場企業の場合は、財務諸表を公開しているので、BS(貸借対照表)を見て、電卓ポチポチすればすぐに割り出せます。

しかし、未上場ベンチャーの場合は、前述のとおり財務諸表を公表していないことがほとんどなので、調べようがありません。

そのため、直近の資金調達履歴を調べて、どれほどのお金を調達しているのかを見つつ、推測するしかありません。
したがって、財務健全性を重視した転職をするのであれば、上場ベンチャーを狙うのが最も効率的ということになります。

ベンチャー企業の経営管理部門の求人に特化したSYNCA(シンカ)にも上場ベンチャーの求人は多いので、気になる方は見てみてくださいませ。



3.株主構成

続いて、株主構成について語っていきましょう!

こちらについては、私の私見としてとても重要な指標だと考えています。
スタートアップやベンチャーの中には、創業してまだ間もないのに、株式の3割以上を創業者以外が保有しているなんていう事態に陥っている会社があります。
これは私の中では、ちょっとリスクが高いのでは?と感じる数値です。

というのも、株式会社というのは株主の所有物なので、会社の重要な意思決定は株主が行います。
したがって、経営者が誰であろうと、株主が最強なのです。

もっと踏み込んだことをいえば、例えば、株式会社の代表取締役以外の人が、その会社の株式を33.3%以上保有している場合、その会社の特別決議で拒否権を発動できてしまいます。
重要な意思決定を阻止できるわけです😱

そうなってくると、その会社の経営は、原則としてその大株主の意向を優先しないといけなくなってきます。
スタートアップやベンチャーの最大の強みは、その自由度の高さがもたらす意思決定スピードだと思うので、創業者ではない特定の誰かが経営の重要な意思決定を左右できるというのは、ベンチャーらしからぬ事態かなと思います。
そのため、株主構成を調べるのは重要なことだと考えています。

これは上場しているベンチャーでも同様です。
上場時点で、創業者が過半数以上の株式を保有している会社の方が望ましいと思います。
上場後は、少しずつ資金調達等をして保有割合が減っていくと思いますが、それでも特別決議で拒否権を発動できる33.3%以上は、創業者が保有し続けたいところです。

ここで、安くてスタイリッシュなメガネを販売していることで有名なJINS社の例を見てみましょう!

すでにメガネ業界でトップの座に君臨しているJINS社ですが、上場は2006年です。
上場してからすでに17年が経過していますが、創業者である田中さんが今も尚34.72%の株式を保有し続けています!

これは本当にすごいことです🙄
時価総額800億円を超える規模になっても、創業者がまだ3分の1以上を保有し続けているのですから、これまでの資本政策がちゃんと上手く行っていたのだろうと思います。

なお、株主構成の情報は、前述のバフェット・コードで調べることができます!
ただし、こちらも上場企業のみです。

未上場ベンチャーの場合は、調べようがありません
手がかりとなる情報としては、どのようなVC(ベンチャーキャピタル)が入っているかを調べることくらいです。
多くのベンチャーは、自社の資金調達を大々的にPRしますから、検索すれば資金調達のニュースが出てくるはずです。

VCも創業者の持ち株比率等はチェックしているはずなので、未上場の時点で株式の大半を創業者以外が保有している会社には、通常は出資しません。
そのため、大手のVCが多額の資金を出資しているような未上場ベンチャーであれば、株主構成に問題がないのだろう、事業も上手く行っているのだろうという推定が働きます。

出資が入っていると安心できるVCはいろいろありますが、有名どころをいくつか挙げさせていただくと、ジャフコ、SBIインベストメント、ニッセイ・キャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、Zベンチャーキャピタル、東大IPC、B Dash Ventures、イーストベンチャーズ、STRIVE、電通イノベーションパートナーズ、サムライインキュベートなどです。

他にも有名なVC(またはCVC)はたくさんあるので、一度調べてみてください😁
大手のVCが入っていれば、少なくとも我々一般人が審査するよりは深い調査をして出資を決めているはずなので、少し安心できます!

ジャフコさん入ってるなら安心だわ



4.年平均成長率(CAGR)

最後に、ベンチャーの安全性分析を行う上で、未上場ベンチャーでもなんとか使えそうな指標を一つご紹介します。
その名もCAGRといいまして、正式には “Compound Average Growth Rate” です😁
日本語の意味としては、年平均成長率を意味します。

売上高や営業利益などが年平均でどれくらい伸び続けているのかを計算する指標です。

棒グラフでいうと、右肩上がりで売上高や利益が増えていっていますか?というのを数式で求める方法です。

計算式は若干難しいですが、以下のようなものです。


$${ CAGR=( \frac{n年目の売上高(営業利益)}{1年目の売上高(営業利益)})^\frac{1}{n-1} -1}$$


数学が苦手な方は数式を見るだけでうんざりすると思うので、そんなときは、関数電卓を使いましょう!
関数電卓をお持ちでない方は、以下のサイトを利用してください。

こちらのサイトではCAGRを簡単に求めることができるので、サクッとデータ入力して、ポチッと押せばすぐに出てきます😁
なお、売上高入力欄に営業利益を入れれば、営業利益のCAGRを求めることができます。

では、毎回おなじみの事例研究をしましょう!
今回は、ベンチャー業界でもかなり有名で、かつ、人気も高いマネーフォワード社のCAGRを計算してみましょう!

マネーフォワード社は説明不要なくらい有名な会社です。
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げるくらいお金に関するスペシャリストでして、会計ソフトを中心に様々なSaaSを提供している企業です。
ベンチャーでも上場企業でも、多くの会社がマネーフォワードのSaaSを使っています😁

マネーフォワード社はサイトもすごく見やすくて、財務分析がしやすい!
以下のページに財務ハイライトがありますので、今回はその数値を利用させていただきましょう!

では、マネーフォワード社の過去5年間の売上高CAGRを求めてみます。

まず、マネーフォワード社の5年前(2018年)の売上高は約46億円です。
そして、5年後(2022年)の売上高は、約215億円です。

もうこの時点でとんでもない成長を遂げているということがわかってしまいますが、一応売上高CAGRを求めてみます!


$${{(\frac{215億円(2022年売上高)}{46億円(2018年売上高)})^\frac{1}{5-1} -1} ≒0.4703}$$


%表記する倍は、×100をすればよいので、
0.4703×100=47.03%となります。
つまり、マネーフォワード社は、この5年間ずっと年平均で47%成長し続けているというわけですね🙄
凄まじい成長率です…

このように、上場している会社ではれば財務諸表が公表されているので簡単にCAGRを計算することができます!

一方で、未上場ベンチャーであっても、イケてるベンチャーは、売上高、営業利益、顧客数、契約件数、導入者数などの何らかの指標を公表していることが多いので、それをCAGRの計算式に当てはめれば、年平均成長率を割り出すことができます。
それによって、ある程度の成長可能性、将来性、安全性などを予測することができると思います。
あくまでも参考程度の指標ですが、情報が少ない未上場ベンチャーの情報としては有益だろうと思います。

願いましては


おわりに

ということで、今日は珍しく数式を使って記事を書いてみました😁

上述のとおり、上場ベンチャーであれば様々な情報が公開されているので財務分析をしやすいのですが、未上場ベンチャーの場合は少し難易度が高いです。
ただ、優れたベンチャー企業の多くは、先々のIPOをしっかりと視野に入れているため、日頃から情報公開の重要性を認識しています。

そのため、PR活動にも力を入れているので、PR TIMESなどに有益な情報を公開してくれていることが多いです。
そういった情報に注目して、様々な指標を用いて分析してみると、ある程度安全性を分析できると思います。

ベンチャー企業の経営管理部門に特化した転職サイトであるSYNCAの中でも様々なベンチャー企業(上場企業含む)をご紹介しているので、先々の転職を考えている方がもしいれば、ご活用ください。


では、また書きます!


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この記事は、株式会社WARCの瀧田が担当させていただいております。
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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
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