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【経営学25】ファイブフォース分析とは(5F分析、経営戦略分野)

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はじめに

「経営戦略」という言葉…
カッコイイですよね🙄
元々「戦略」という単語は軍事用語だったそうですが、それが経営学の世界に持ち込まれ、定着し、今では一般的な言葉として使われています。

しかし、経営戦略を実際に練れる人、考えられる人はまだまだ少数派で、おそらくビジネスマンを無作為に100人集めたとしても、経営戦略を考えられる人は1~2名程度ではないかと思います。
それもそのはず。
経営戦略は極めて広く・深い学問だからです。
よく使われるフレームワークだけで数十個あり、しかもその一つ一つの難易度が高いのです。
覚えたてのフレームワークを使ってみても、単に主観的な情報を整理しただけで終わることがほとんどです。

その理論の背景にある考え方や全体像、使い所などを理解しないと使いこなすことはできません。
そこで、理論の背景を理解しようとして原典を読もうとするのですが、今度はその原典が難解過ぎて読み解けないというオチがついてきます🤣
経営戦略論を専門とする人たちの平均的な学力は非常に高いのですが、上記のような事情があって、賢くないと理解できないという状況なのだろうと思います。

そして、遂にこの日が来てしまいました😰
マイケル・ポーター大先生(ハーバード大学経営大学院教授)ファイブフォース分析(5F分析)について解説する日が…

最初に申し上げておきますと、このフレームワークは非常に難しいフレームワークです。
そもそも理解すること自体が難しいのですが、使いこなすのはもっともっと難しいです。
なぜなら、より詳細な分析を行おうとすると、様々な理論に派生的に関わっていくからです。
そのため、今から書く解説が、そのままファイブフォース分析のすべてだと思わないでくださいませ。
あくまでもこの記事は「明日使える」を目指しているので、簡略化しております。
私ごときがどこまでわかりやすく説明できるかわかりませんが、挑戦させていただきたいというスタンスで頑張らせていただきます🙇‍♂️

理解が間違っていたり、おかしいぞというところがあったらご指摘ください。


1.経営戦略の前提

経営戦略を平たくいえば、会社が目指す最終ゴールにたどり着くまでの計画のことをいいます。
会社が目指す最終ゴールは、コーポレートミッションやバリューなどによって掲げられます。
それらの目標を達成するための手段を検討するのが経営戦略策定です。

そして、企業は、利益を追及する団体ですから、利益を出すことが必須です。
利益が出ないと従業員も雇えませんし、会社は潰れてしまいます😱

では、利益を出すとはどういうことなのか。

この点について、以前、別の記事で「完全競争」「不完全競争」について説明したことがありました。

完全競争とは、簡略化していうと、全員が同じ情報、同じ商品を持っている状態で、競合も大量にいるため、誰も利益を上げられれない状態のことをいいます。
最近のはやり言葉でいうと「レッドオーシャン」ということです。

会社が掲げた目標を達成するために、どこの市場で戦うかを考えるのですが、こういうレッドオーシャン市場で戦うということはあまりオススメできません。

一方で、不完全競争とは、情報の保有者と非保有者がいて、それぞれが別々の商品を扱っている状態で、競合もいない(少ない)状態のことをいいます。
その究極系が独占市場(その商品を提供している会社は1社のみ!)です。

こちらはレッドオーシャンと対比して「ブルーオーシャン」と呼ばれています。
ブルーオーシャン市場では、競合も少ないですし、自社の商材の優位性があるため、価格をある程度自由に決定できます。
その結果、利益が出やすい状態になります。

そうだとすると、企業は原則として利益を上げるために存在しているので、経営戦略を練る際にはブルーオーシャンを目指すはずだということになります😁

ここまでわかれば、5F分析もほぼ理解できるはずです。
なぜなら、5F分析は、自社の置かれている状況を客観的に分析することで、自社がブルーオーシャンに近いところにいるのか、レッドオーシャンに近いところにいるのかがわかるようになっているからです!
そんなものを発明してしまったのですから、マイケル・ポーターさんが世界中で最も有名な経営学者と言われるのも理解できますね🙄
彼の著書はいくつも日本語訳されて出版されているので、興味がある方は是非読んでみてください。
※大変難しいので読み切る覚悟が必要です


2.ファイブフォース分析とは

ファイブフォース分析、別名ファイブフォース理論は、上述したとおり、自社の置かれている状態、言い換えると自社が生業にしている事業の競争状態を分析するためのフレームワークです。
英語では、“Five Forces Analysis” または “Five Forces Framework” と表記されることが多いです。

世界で最も有名なフレームワークの一つといっていいでしょう🤔
ただし、難易度が高いので、使いこなせている人は多くないです。

では、どのように分析していくのか。
この点については「5F」という名称どおり、以下の5つの要素で分析していきます。

(1)新規参入業者の脅威(Threat of new entrants)
(2)代替品の脅威(Threat of substitutes)
(3)買い手の交渉力(Bargaining power of customers)
(4)供給企業の交渉力(Bargaining power of suppliers)
(5)競合他社(Competitive rivalry)

全部そこそこ難しい論点なので、一つずつ丁寧にご説明していきます。
最後まで頑張りましょう🙄


(1)新規参入業者の脅威(Threat of new entrants)

この要素で分析すべき重要な点は、ズバリ「参入障壁」です。
参入障壁が低いと、どこの誰でもその事業を開始することができてしまうため、競争が激しくなりやすいです。
競争が激しくなれば、価格競争に陥りやすくなるため、利益が出づらい状態になってしまいます。
そのため、参入障壁は高いほうが望ましいです。

参入障壁として有名なものとしては、法令上の許認可が挙げられます。
この許認可にも取得のしやすさによって雲泥の差が生まれます。
一般的には、免許→許可→認可→登録→届出という順番で簡単になっていくといわれていますが、業界によっても全然難易度が変わるので一概にはいえません。
ここ最近で最も難易度が高いと言われている許認可は、おそらく金融商品取引業の登録だろうと思います。
登録といいつつ難易度ほぼ「免許」です🤣
新規参入は非常に困難と言わざるを得ない状況です。
その上、登録を維持し続けるのにも相当なコストがかかるので、参入障壁としてはなかなかの強度を誇っています。

上述のとおり、参入障壁は高ければ高いほど競合が増えにくいので、自社に取っては有利に働きます。
しかし、参入障壁が高いということは、自社もそのビジネスを始める際に様々な困難を強いられることになりますし、許認可等の維持にコストがかかります。
この点には注意が必要です。

その他の参入障壁として有効だと思われるものに、知的財産権があります。
代表的なものは特許です。
特許は技術的参入障壁として最高峰といっていいかと思います。
特許権を侵害するような競合を法的に排除することができますし、ライセンス料を取ることもできます。
極めて強い参入障壁であり、かつ、収益源にもなります。

そのため、技術を活かして事業を行うタイプの会社では、特許の取得に全力を注ぐという経営戦略を採用しています。
最近では「知財戦略」という一つの分野として確立されつつあります。

ここ数年、IT企業でも特許の重要性を認識しているところが増えてきているので、取れるものは全部取る!くらいの精神で出願をしています。
ちなみに、知財戦略における重要部署は法務です。
そして、法務の中でも弁理士という国家資格の保有者がメインプレイヤーです。
弁理士は理系✕法律という特殊な分野の専門家なので、転職市場で獲得するのは非常に難しい職種です。
そのため、弁理士事務所を上手に活用して自社の知財戦略を練っていくことになります。

その他、「初期投資の額が膨大か」という視点も参入障壁を分析する際には重要な視点です。
初期投資額がかかればかかるほど、それ自体が参入障壁になり得ます。
例えばNTTが持っている電話回線・光ファイバーの送電網は他社の追随を許さない立派な参入障壁となっています。

また、すでに市場のシェアを取っている会社では「規模の経済」という視点でも分析可能です。
既にその市場のシェアの大半を占めている場合、その事実が大きな参入障壁となります。
他社がその市場に入ってこようとした場合、既存の顧客の大半を抑えられている状態なので、非常に難易度の高い商売になるからです😨

上記のように、新規参入業者の脅威を分析できる視点は様々ございます。
自社にとって重要だと思う視点から参入障壁を分析してみると良いでしょう。
そのとき、単に自社の置かれている状況を整理するだけではなく、今後いかにして参入業者の脅威を減らすか、より強い参入障壁をどのようにして創り出すのかを考えられるとベストです😁
法令上の制限で対抗するのか、技術力で対応するのか、それとも独自のノウハウや市場独占率で対応するのか。
考えるべきポイントはたくさんあります。

まだ5Fのうちの1つ目の要素なのに、この時点でとても難易度が高いことがわかりますね😱

参入障壁くん


(2)代替品の脅威(Threat of substitutes)

続きまして、代替品の脅威について説明していきましょう。
ここでいう「代替品」というのは、同じ市場にいる競合他社の商品ではありません
違う市場に属しているけど、効用としては近い・代替するような商品のことを言います。

例えば、私の世代(30代)では、子供の頃に任天堂のWii、64、ゲームボーイアドバンス、ソニーのプレイステーション、PSPなどがありました(懐かしい)。
ここでいう任天堂のWiiとソニーのプレイステーションは同じ「家庭内ゲーム機」という市場にいるので、競合関係です。
でも、ある日突然代替品が現れました🙄
それが、スマホゲーム(アプリ)です。

今まで、時間を潰す道具・遊ぶための道具といえば家庭内ゲーム機でしたが、急にスマートフォンアプリ市場が立ち上がって、急速に代替品のシェアが拡大していきました。
これによって家庭用ゲーム機市場が大打撃を食らったのです。

このような発想で、自社の製品・サービスに対する代替品はなにか?を考えるのがこの要素における分析的視点です。
自社の製品・サービスは、究極的には何に貢献しているのか、顧客の何に満足を与えているのか
その点をしっかり分析して、代替品の存在を調査する必要があります。

これは、マーケティング思考としても極めて重要な視点です。

MBAでマーケティング論を学んだら、ほぼ確実にレビット博士(Theodore Levitt, ハーバード大学ビジネススクール教授)の格言を耳にすると思います。
それがこれです。

People don’t want to buy a quarter-inch drill, they want a quarter-inch hole.

『マーケティング発想法』(1968年)

日本語に訳すと「人々は4分の1インチのドリルが欲しいのではない。彼らは4分の1インチの穴が欲しいのだ。」となります😁
前提情報として、この論文(著書)が出される少し前にとある会社のドリルが100万個以上売れたそうです。
その100万個のドリルを買った人々は、ドリルが欲しかったのか?いや違う。穴が欲しかったんだと考えるのです。
マーケティング思考は面白いですね🤔

代替品の脅威に関する分析は、この思考に通ずるものがあります。
自社の製品・サービスの便益・役務・貢献・メリット・強みなどをじっくり考えていくと、自社製品・サービスの本質が見えてきます。
その本質こそが代替品の存在を明確にさせます。
その代替品の脅威を予め分析し、対処法まで考えられると最高です。
代替品の脅威を分析する際の要素としては、両者の質的な違い、価格の違い、スイッチング・コスト(時間的手間・お金など)の大きさなどを分析すると良いです。

それにしても…ドリルの代替品ってなんでしょうね。
ドリルが提供する本質的な価値を「綺麗に開いた穴」だと考えるとすると、代替品ってなんだ…🙄
北斗の拳のケンシロウの指くらいしか思い浮かばない。
アタタタタタタ!


(3)買い手の交渉力(Bargaining power of customers)

買い手の交渉力とは、自社製品・サービスに対する買い手の交渉力を意味します。
買い手の交渉力が高ければ高いほど、自社の製品・サービスを安く提供しなければならなくなり、結果的に利益が出ないビジネスになっていきます😭

では、どのような場合に買い手の交渉力が高まるのか。

この点を分析するには、以下のような要素を分析していくと見えてきます。

・買い手の数
・同一又は類似商材を扱う同業者の数
・買手側にかかるスイッチング・コストの高低(代替品の脅威でも分析済みな省く)
・買手が持っている情報量(例えば、その商品ならAmazon、楽天、Yahooどこでも買えるぜという情報など)

など

原則として、同一商材や類似商材が多く市場に出回っているほど買い手の交渉力は高くなっていきます
なぜなら、他でいくらでも買えるからです。
より安くより早くより良い商品を提供してくれる会社から買えばいいだけなので、買手はどんどん価格交渉をしてきます。
最近では価格交渉すらしてくれずにスッとAmazonで買います。
その結果、顧客が減っていき、あまり利益が出なくなっていきます。

上記のような買い手の交渉力に関する分析を通じて、買い手の交渉力を下げるにはどうすればいいのか自社の製品・サービスをどのように変化させれば差別化できるのかなどを検討していきます。
場合によっては製品・サービスを大幅に改良する必要も出てきます🤔
もしくは、買い手の交渉力には目を瞑って、コスト削減という手法により限界まで価格を下げるかです(コストリーダーシップ戦略)。
なお、コストリーダーシップ戦略は原則として市場1位の企業しか取れない戦略です。

その他、買い手の交渉力を下げる方法としては、店舗の立地戦略なども考えると良いでしょう。
地元トークで申し訳ないのですが、私が育った町にはカラオケ店がなく、隣町に1店舗あるだけでした。
カラオケという東京では当たり前の娯楽であっても、地方では唯一無二の娯楽だったりします。
そのため、そのカラオケ店はいつも大繁盛でした。

他にも例えば、ある地域に1店舗しかスーパーがない場合、そのスーパーでは確かにどこにでも売っているような商材を扱っているのですが、他にスーパーがないという状況であるために買手が交渉力を発揮できません。
この場合、惣菜を毎日割引しなくても買ってもらえるかもしれません😏
自社の市場をどこに置くのか、どこまでを市場と考えるのか、様々な視点から考えて、買い手の交渉力が最も弱い地理的場所を検索してみるのも一つの戦略・戦術です。
まぁそんな地域には過疎化という恐ろしいリスクも伴うのですけど🙄


(4)供給企業の交渉力(Bargaining power of suppliers)

続いて、供給企業の交渉力について説明します。
これは主に仕入先の交渉力だと思っていただければ良いかと思います。
一般的には、交渉力を分析する視点として以下のようなものがあります。

・供給企業を切り替える際に発生するコスト(高いほど交渉力がある)
・供給企業が提供する商品の差別化度合い(同上)
・供給企業に対する依存度(同上)
・代替品の数(少ないほど交渉力がある)

など

分析を通じて、供給企業に完全に依存してしまっていて仕入れ値が高くなりがちな会社は、利益が低くなりやすいです。
この場合、供給企業を分散したり、買収したり、他の代替品に切り替えたりして交渉力を抑える努力をします。

ただ、ここで一点疑問が湧きます。
IT役務・ITサービス業の供給企業はどこなの?と。
この点については、私は人材の交渉力で考えています。
自社開発型のSaaS提供企業やサブスクリプション型のサービス等を提供する企業にとって、仕入れという概念はあまりありません。
自社でエンジニア・デザイナーを雇用して、作って、売るという流れです。
製造業と異なり材料というものが存在しないことが多いので、仕入れがないのです。
もちろん開発部分を外注する場合は、出来上がったソフトウェアを仕入れるというような概念が出てきますが、最初から外注して自社にノウハウが貯まらない方式を採用する会社は少ないと思います。

そのため、IT役務・ITサービス業を主業とする企業にとっては、材料等の仕入れという概念より、労働力・技術力の仕入れという概念が重要になってきます。
凄腕のエンジニア・デザイナー等がいわば仕入先になるのです。
彼らの交渉力は相当に強いので、よく分析する必要があります。

現にベンチャー企業の多くはIT企業なのでこの熾烈な交渉が日々行われています😱
ハイレベルなエンジニア・デザイナーは転職市場にも少なく、かつ高い技術力を持った人材ほど引く手数多なので、多くの企業がエンジニア・デザイナーのための福利厚生を考えています。
そして、何よりも報酬を高く設定して誘致しようとしています。
しかし、報酬ではどう頑張ってもGoogle先生やAmazonパイセン(どちらも2,000万円以上の年収提示が珍しくない企業)には敵わないので、英語が苦手な人の中から精神的な繋がりでなんとか採用している状態です😨

あくまでも今の時点では、エンジニア・デザイナーは最強職種の一種です。
交渉力が極めて強い時代と言っていいかと思います。
ただし、今後は若い世代のエンジニアが大量に育ってくると思うので、交渉力はほぼ確実に下がっていくと思います。

供給企業の交渉力を分析する際は、どうやったら供給企業の交渉力を下げられるかまで検討する必要があります🤔
仕入れは時期によって値段が大きく変わるものなので、仕入れる材料次第で変わってきます。
この点を十分に考慮し、市場についての理解を深めていくことが重要です。


(5)競合他社(Competitive rivalry)

最後に競合他社の分析について説明します。
これはそのままの意味です。
現時点で自社が属している市場内に存在する競合他社について分析していきます。
分析の視点としては以下のようなものがあります。

・競合他社の数
・市場の成長力
・自社ブランドの確立度合い
・自社の資金力と他社の資金力の差異

など

この分析では、一旦感情を捨て去ることが重要となります。
競合他社がいるとどうしても感情的な(主観的な)分析になりやすいです😱
一旦冷静に、客観的に市場を見て、そもそもその市場に居続けることが正解なのか?という疑問を持った方が良いです。

仮に市場の成長力が弱く衰退が目に見えている市場で、競合他社が多く存在する場合、そこに居続ける限り熾烈な競争をしなければならなくなります。
その上で利益は出ませんし、顧客はどんどん減っていくのですからほとんど意味がありません😨
何らかの明確な差別化・新規市場の創出等の戦略が思い浮かばないなら、なる早で徹底した方が良いのです。

撤退の意思決定が遅すぎると、M&A等で売ることもできずにただただジリ貧になっていきます。
社名は控えますが、かつての超大手企業でも売り時を逃して潰れかけている企業が出てきています。
市場はいつか必ず縮小するものです。
売却の好機は成長期または成熟する少し前に来るものです。

ソフトバンクの孫さんも言っていますが、撤退(退却)の意思決定は迅速に行わないといけません。
「ここまで頑張ってきたのだからもう少し…」なんて思っていたらあっという間にM&A(売り)すらできなくなります😱
最も値段の高いときに売るのがM&Aの鉄則です。
売らざるを得ないという状況で売っても誰も買ってくれませんし、自力撤退するにも費用がかかります。

競合分析は常に行い、市場全体の動向に目を光らせておく必要があります。
これを他人に任せることはほぼできないので、CEOが自分自身でしっかりと分析する習慣をつけておくべきでしょう。


3.転職での応用

経営戦略コンサルタントや経営戦略室に所属している人でもない限り、ファイブフォース分析を使う機会はほとんどないでしょう🤔
日頃から経営コンサルタントをしている中小企業診断士の皆さんでもたまにしか使わないのではないでしょうか。
そのくらいレアなフレームワークではありますが、ファイブフォース分析の視点は極めて重要です。
これは、転職時にも有益な分析フレームワークなので、是非日頃から実務で応用していただきたいなと思っています。

そのため、本来の使い方ではないですが、転職先を探す際にファイブフォース分析を使って分析してみたらどうなるかという応用をしてみましょう!

まずはおさらいしましょう!
ファイブフォース分析で行う5つの分析要素は以下の5つでした。

(1)新規参入業者の脅威(Threat of new entrants)
(2)代替品の脅威(Threat of substitutes)
(3)買い手の交渉力(Bargaining power of customers)
(4)供給企業の交渉力(Bargaining power of suppliers)
(5)競合他社(Competitive rivalry)

上記の5つの要素について、転職先候補を分析してみましょう😏
それぞれの視点を簡単に解説していきます。


(1)新規参入業者の脅威(Threat of new entrants)

転職先の候補企業が、参入障壁の低い、誰でもできるような事業を主業としている場合、かなり厳しい戦いを強いられることになると思います🙄
参入障壁が低い市場では競合他社が大量に出やすくなるので、その分利益が出づらくなります。
利益が出づらい市場では、原則として従業員の給与も下がりやすくなります。
そういう転職先に行くことが果たして正解なのか…😨
よくよく考える必要があるでしょう。

一方で、転職先の候補企業が、参入障壁の高い市場で戦っている場合、転職先としてはかなり魅力的な企業となるでしょう。
そういう企業では、独占または寡占に近い状態になりやすいので、一般的には利益が出やすい市場といえます。
利益が出やすいということは、従業員の平均的な給与も高くなりやすいです。

日本で独占市場として有名な市場は「たばこ事業」でしょう。
日本ではJTだけが販売しています。
そんなJTの平均年収は年度によって差はありますが850万円前後です😱
日本の平均が430万円程度なので、倍近い平均値です。
喫煙者が減り続けているこの国で、未だにこれだけの平均所得を支払い続けられるということは、それだけ儲かっているということでもあります。

その他参入障壁の高い市場で戦っている有名企業としては、重要な特許をいっぱい持っている会社(例:任天堂など)や特定の市場のシェアを多く占有している会社(例:Amazon、鹿島建設、東京海上HDなど)などが該当します。

ということで、転職先を分析するときは、参入障壁の高さを考慮に入れましょう😎


(2)代替品の脅威(Threat of substitutes)

続いて、転職先の候補企業の代替品に着目してみましょう。
候補企業の提供するサービス、商品、製品等が簡単に他社の商材等で代替できてしまう場合、利益が出づらくなります😨
一方で、極めて強い商品力があって、他に代替品が見当たらないという場合は利益が出やすいです。

候補企業の商材を一度よく分析してみて、その本質的な価値がどこにあるのかを検討してみましょう。
一体どんな貢献をしているのか。
どこに魅力があって売れているのか。
それがよくわからないところには転職しない方が良いかもしれません。
代替品の脅威に常に晒されているような商材を扱っていると、利益を得られる機会は減っていきます。

代替品の無い商材として有名なところは…🤔
パッと思いつけるような会社は無いかもしれないですね。
物資・サービスに恵まれた今の時代では、代替品の存在は当然の前提として認識した方が良いかもしれません。
ただ、代替品が存在したとしても勝ち続けられるような商材を扱っている会社はいくつかあります。
世界的な代表例でいうとディズニーさんでしょうね🙄
キャラクタービジネス、ライセンスビジネス、テーマパークビジネス、どこの側面で切り取っても代替品が存在しますが、圧倒的なブランド力で勝ち続けています。

代替品が溢れている今の時代だからこそ、ブランドが重要になってくるのだろうと思います。
確かに代替品は山のようにあるけども、この会社のこの商品でないと納得できない!という愛着こそがブランド力です。
その会社のその商品を買うこと自体に意義があるようなレベルにまで自社ブランド力を持って行けている会社は強いです。

会社ではないですが「和牛」というブランドもかなり強いです。
アメリカ産、オーストラリア産などの牛肉は山程ありますし、その他代替品(鶏肉・豚肉・魚など)も沢山あるのに、国産和牛肉はよく売れます。

A5ランクの牛が食べたいです


(3)買い手の交渉力(Bargaining power of customers)

続いて買い手の交渉力に着目しましょう。
転職先の企業の買い手は誰なのかという点がわかりにくい会社もあります。
特に多角化が進んでいる企業(大手上場企業など)では、顧客の種類・数が膨大になりがちで、誰が買い手なのかという点がわかりにくくなっていきます。
多角化が進んでいる企業の多くは上場企業であることが多いので、その場合には企業のホームページのIR情報のページで決算説明会資料をダウンロードし、読み込んでみましょう。
そうすると、セグメント別売上高・利益というページがあると思います。
そこで、総売上高占有割合が高い事業、総利益占有割合が高い事業をそれぞれランキング形式で算出してみてください😏

そうすると、様々なことがわかるようになります。
たとえば、総売上高に占める割合が高いのに、総利益に対する占有率が極めて低い事業は、深刻な価格競争に巻き込まれている可能性があり、買い手の交渉力が強くなっていると推測できます。
一方で、総売上高に占める割合は低いのに、総利益に占める割合でみると最も利益を上げている事業というのがたまに存在します。
こういう事業は、一概には言えませんが、何らかの競争優位性を持っている可能性が高く、買い手の交渉力を抑えることに成功していると推測できます😁

このように、転職先が上場企業の場合は決算説明会資料を読んでみると買い手の交渉力もある程度想像できます。
有価証券報告書も読み込んでおくと尚良いだと思います。
この他にも買い手の交渉力を分析する手法は他にも多々ありますが、ひとまずは公開資料を当たってみましょう!

他方で、ベンチャー企業などの非上場企業の場合は、そのベンチャー企業が提供しているサービス等に一度登録してみるのが手っ取り早いです。
自分自身が買い手になってみるとその会社の競争優位性がよくわかります。
競合他社のサービスにも登録してみたり、ランキングサイトなどを見て口コミを調べてみるのも効果的です。
口コミは買い手の生の声なので最も参考になる資料の一つです。

転職は一生を左右するほど重要なものなので、ネット上で容易に手に入る情報は活用した方が良いです😁


(4)供給企業の交渉力(Bargaining power of suppliers)

次は、供給企業の交渉力について。
供給企業の交渉力は、言い換えれば売り手の交渉力です。
この点でも誰が売り手なのかじっくり検討しないといけません🤔

製造業などではサプライチェーンがあるので検討しやすいのですが、IT系のベンチャー企業の場合は売り手が誰なのかという点が判断しづらい場合があります
そのため、まずは転職先候補企業のビジネスモデルを理解しましょう!

ITツールの自社開発、自社販売を主業としているITベンチャー企業の場合、仕入れという概念があまりないので、売り手として考えられるのは専門的な知識・技能を有する従業員そのものということになります。
この場合、売り手はあなた自身となる可能性が高いです😏
労働力・技術力などをその会社に提供している張本人ということです。
そうなってくると話は簡単です。

売り手(従業員候補)としてその会社で働くことが魅力的かどうかを分析すればいいのです。
競合他社より高い報酬を提示しているか、労働環境はどのようなものか、福利厚生はどうか、口コミはどうか、その他制度はどのようなものがあるかなどを見ていきましょう。
他の企業より高い報酬提示を行い、福利厚生も充実していて、転職サイトの口コミも素晴らしいとなると、売り手(候補者)が山程集まりますから売り手の交渉力は低下していきます。
会社側は、他にいくらでも選べる候補がいるので、交渉があまり通用しなくなります。
このような企業に入れてしまった場合、社内に優秀な人材が溢れている状態になるので、自分の個人的交渉力はかなり弱くなりがちです。

一方で、あまり高い報酬提示をせず、福利厚生も微妙、転職サイトの口コミも微妙となると、優秀な人材は誰もその会社で働きたいとは思わないでしょうから、高い能力を持った売り手の交渉力は強くなっていきます。
こういう場合は報酬交渉もしやすいです🤔
ただし、社内にいる良い人材は少ないはずなので、入った後の苦労は続きます。

売り手(候補者)の交渉力が高くても低くても、それぞれ一長一短ありますが、売り手の交渉力の分析をしておくと転職時の戦略を練りやすくなるのは確かです。


(5)競合他社(Competitive rivalry)

最後に競合他社分析も行いましょう!
転職先候補の企業の競合他社は全部調べておくべきです。
ベンチャー企業では特にこれが重要だと思います。

例えば、toB(法人向け)サービスを提供しているベンチャー企業の場合、必ずといっていいほど競合他社が存在します。
そして、今後もその競合他社とシェアを奪い合うのです。
5年後、10年後にはどちらかしか残っていない状態になると思います。
これ、転職しようと思っている人にとっては大問題ですよね🤣

だからこそ、その市場でトップになるような企業に行くべきです。
先々誰がその市場でトップシェアを取るのか。
じっくり分析してみてください🤔

自分の中で納得がいくまで調べて、この会社とだったら一緒に頑張れると思える企業に入るのが良いです😁
なお、ベンチャー企業の場合、数年でM&A(買収)されて大手企業の傘下に入るということがたまに起こります。
LINEやZOZOがYahooに買収されたときも驚きましたけども、ああいうダイナミックな市場変動が起こるのがベンチャー企業の面白いところです!
Yahooグループに入れるなんて羨ましい限りです😍

なので、先々買収されそうな企業にあえて入るというのも一つの戦略です。
ベンチャー企業の多くはVC等から出資を受けていますから、どこのVCから出資を受けているか調べておくといいかもしれません。
上手くいけば、ベンチャー企業に入ったのに途中から東証一部上場グループに変わった!なんていう事も起こります。


おわりに

以上、今日は長々とファイブフォース分析について解説させていただきました。
実務での応用は、あえて多くの人に関係するように転職事例を扱いましたが、イメージが伝われば幸いです。

ファイブフォース分析はいろんなところで使えるフレームワークなので、一度実際に分析してみることをオススメいたします。
一度やったことがあるのと無いのとでは理解度の深さが全く異なるので😁

もし余裕があれば、マイケル・ポーター教授の書籍も読んでみると良いかも知れません。
IとⅡがありますが、まずはIを読んでイケそうだと思ってからⅡを買うことをオススメします。
難しいので😱

ではまた書きます😁

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