【経営学8】完全競争/不完全競争(経済学分野)
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はじめに
今日もかなり難しいお話を書かせていただきます😑
経済学分野を扱うときはピリッとしますね。
間違ったこと書いたらいかん!と思うと余計ピリッとして文献読んで、読んだら読んだで樹海に迷い込んで……というのを繰り返しています(笑)
さて、今日扱う分野は「完全競争」と「不完全競争」です。
これら2つの概念は、実は、我々実務家にとって極めて重要な考え方です。
経営戦略や競争戦略を考える際に、この概念を理解しているかどうかで思考の深さが変わるはずです。
ほとんどのビジネスマンはすでに理解している概念だと思いますが、僭越ながらご説明させていただきます🙇♂️
1.完全競争とは
まず、完全競争の定義から……と思ったのですが、その定義そのものがどえらい難しかったです(笑)
そもそも「完全競争」とは、経済学の世界で使われる理論上の市場状況の一つです。
つまりは、ただの仮定なんですね😱
しかも、完全競争が実現するなんてことはあり得ないと言われているので、現実に出現することはありません。
もうややこしいですよね🤔
なんでそんな実現しない仮定を置いて考えるのかと。
それは「説明しやすいから」です🤣
経済学の主な目的の一つとして、社会で起こる現象を論理的に説明するというものがあります。
社会で起こる現象は複雑な要因がいくつも絡み合って発生しているので、説明が極めて困難(ほぼ不可能)なんですね🤔
それだと真理の探求が全く進まないから、とりあえず前提条件をシンプルにしようぜ!ということだと思います。
この視点はビジネスでもとても大事な視点だと思います。
物事をシンプルに考えないと、意思決定が複雑になってしまうので😱
ということで話を戻します。
完全競争状態とは、イメージでいうと、完全な自由競争が実現している状態です。
そして、この完全競争が実現する市場には、以下の4つの条件(性質)があると考えられています。
(1)無数のプレイヤー:売手と買手が無数に存在する。
(2)市場参入・退出が自由:売手も買手もいつでも市場に出入りできる。
(3)全く同じ商材:市場で売買される商材に差が一切無い。
(4)情報の完全性:全プレイヤーが同じ情報を持っている。
以下、少し難しいお話ですが、一つずつ解説していきます。
(1)無数のプレイヤー
完全競争市場では、買手も売手も無数に存在し、誰かがいなくなっても何ら問題ございません😏
もうこの時点で実現不可能だということがほぼ確定しましたが、経済学の世界ではそのあり得ない世界を仮定して考えていきます。
物理でよくやる「摩擦をゼロとして考える」というのに似てますね🤔
(2)市場参入・退出が自由
完全競争市場では、買手・売手がそれぞれ自由にその市場に出入りできます。
俗に言う「参入障壁」が一切ないのです😁
今日『商材を売ろう!』と思ったら、すぐに売ることができます。
(3)全く同じ商材
完全競争市場では、売られている商材がすべて同一で、一切の差異が無いものと仮定します。
よくある「差別化」は一切ありません。
色も形もサービスも全部同じです。
(4)情報の完全性
最後に、完全競争市場では、情報の非対称性が存在しません。
つまり、全員が全く同じ情報を有している状態です😏
一切誤魔化しが利かない世界ともいえます。
なお、情報の非対称性について学びたい方は以下のコラムでどうぞ!
完全競争市場では、上記の4つの条件がすべて満たされています。
この完全競争市場では、誰もが同じ情報を持って、同じ商材を扱いますから、誰もが最も合理的な選択をすることになります。
そして、物の価値に差が生まれないので、一物一価の法則が成立すると考えられています。
また、完全競争市場では、誰もが物の価値に対して影響を与えられず、決まった価格でしか売り買いできない状態です。
そのため、完全競争市場の売手・買手のことを “Price Taker” と呼びます。
価格を受動的に受け入れる人達という意味です。
上記のお話は若干ややこしいお話ですが、
「経済学ではそういう仮定をして考えているのね」
と思っていただければOKです😁
いわば、極端なケースを想定しているのです。
『完全な競争状態が実現したら、そういう世界が実現するよね』という程度の理解で問題ございません👍
2.不完全競争とは
不完全競争とは、上記の完全競争の条件のいずれか、またはすべてが満たされていない市場状況のことをいいます😁
この概念は、定義よりも類型の方が重要です。
不完全競争状態の市場には、以下の5類型があります。
(1)独占市場
(2)複占市場
(3)寡占市場
(4)独占的競争(差別化)
(5)費用低減産業(自然独占)
通常、これらの市場は数式や曲線を用いて説明されることが多いのですが、それをやってしまうと途端に難しくなるので、全部言葉で説明させていただきます🤣
(1)独占市場
まず、独占市場とは、ある商材の売手が特定の1社のみになっている市場のことです。
日本で言うと……タバコ市場におけるJT(日本たばこ産業株式会社)みたいなものですかね🤔
日本産のタバコに関しては、JTが法律上独占しているので、一応独占市場の一種であるということができると思います。
なお、現代では、各国に「独占禁止法」という法律があるので、上記のJTのように法律上特別に認められた産業以外では、市場を独占することが禁止されています😁
なぜ禁止するのかというと、独占市場では、独占企業が商材の価格を自由に決定できてしまうからです。
それを許してしまうと消費者は不当な価格で商材を手にしないといけなくなるので、市場が機能しなくなるのです。
かなり昔の話ですが、デビアス社という会社が世界のダイヤモンド市場の9割を独占したことがありました🙄
「ダイヤモンドは永遠の輝き」ってキャッチフレーズ聞いたことあるでしょ?あの会社です🤣
このデビアス社は、ダイヤモンドの供給量(販売量)を調整することで希少価値を高め、価格を釣り上げたんですね……。
今でもダイヤモンド市場で相当大きな力を有している英国企業です。
(2)複占市場
続いて、複占市場とは、先程の独占企業が2社になった場合です😁
有名な事例でいえば、コーラ市場におけるコカ・コーラ vs ペプシ・コーラではないかと思います。
おそらく他にもコーラを出している会社はあると思いますが、実際のところこの2社の複占状態といっていいでしょう。
ちなみに、私はコカ・コーラ派です🙄
あと、たけのこの里ときのこの山は両方「明治」という企業が出している商品で、複占市場ではありませんので誤解のないように!
他の事例としては、PCのOS市場におけるMicrosoft(Windows)とApple(iOS)が挙げられます。
身近な事例があるとちょっと楽しい😍
(3)寡占市場
次に、寡占市場とは、少数(3社以上)の企業によって市場が独占されている市場を意味します。
どれくらいまでの企業数を「少数」というのかは定かではありません🤔
私の感覚では二桁になるともう多数なので、おそらく5~9社のどこかに限界値がありそうです。
寡占市場の例としては、今話題の携帯キャリア市場があります。
今までの日本では、キャリアはNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社でした。
この3社がほぼ独占していたので、それはもう素晴らしい利益率で今まで荒稼ぎをしてきました。
そこに最近、楽天が参入し、第4のキャリアとして登場しました。
今までの常識では考えられないくらいの低価格を提示し、市場が一気に値引き競争状態に入りました😍
楽天は日本郵政との資本提携を発表し、シェア獲得に本格的に乗り出しています。
日本郵政と関連して、宅配便市場も寡占市場の一種です。
現在では、クロネコヤマト・佐川急便・日本郵便(ゆうパック)の3社がほぼ独占しています。
こういう身近な事例を経済学に絡めて覚えていくと、なんかこう……ワクワクしません?
経済学って、難しい数式を全部捨象すれば、意外と面白いと思うんですよ😁
(4)独占的競争(差別化)
次に、独占的競争についてお話します。
この類型では、無数にいる売手の1社が、差別化された商品を扱います😁
差別化された商品であるため、同じ市場内にいるのにある種の独占状態が生まれます。
商材に個性が生まれているので、代替性が下がって、希少価値が生まれ、価格決定権が生まれるのです😁
事例はたくさんあります。
例えば、書籍などは独占的競争状態といえます。
毎年何万冊も出版されていますが、売れるのは極々一部の書籍です。
売れている書籍はまさしく差別化された書籍で、何らかの個性を持っています。
その個性を買手が好んでいるから売れるわけですね🤔
その他、映画やラーメン、レストランなども独占的競争状態が生まれている事例といえそうです。
(5)費用低減産業(自然独占)
最後に、少し難しい類型ですが、費用低減産業(自然独占)という類型があります。
この類型は、初期投資(設備投資)が莫大な額になるがゆえに、自然と参入障壁が形成され、自然独占状態になる市場です。
インフラ(電気・ガス・水道)などが代表例です。
この類型は、規模が大きくなればなるほど(提供するエリアや量が増加すればするほど)、1提供あたりのコストが低減していくので「費用低減産業」という名称になっています。
ほぼ国の事業ですよね🤔
日本での事例も元々は国家として行ってきたものを民営化したケースが多いので、その規模の市場だとイメージしていただければよいかと思います。
皆さんがご存知のNTTも元々は国営です。
日本国中に電話回線を引いて、光回線も引いて、全国の通信インフラを牛耳っています😏
NTTのビジネスモデルを研究するとお分かりいただけるかと思いますが、もうボロ儲けです。
どうやっても儲かってしまう🙄
しかも、今からNTTと同等レベルに回線を張り巡らせるなんてほぼ不可能ですから、その領域ではNTTの回線を借りるしかありません。
自然な独占状態です。
以上5つの類型をざっくりでいいので記憶しておいてくださいませ😁
5つ覚えるのが難しい場合は、「独占≒儲かる」という公式だけ覚えておけば。
3.実務への応用
上記で見てきた「完全競争」と「不完全競争」の概念を実務に応用して考えてみましょう。
まず、実現はしないけど、完全なる自由競争が実現している状態が「完全競争」でした。
そして、不完全競争の完成形は「独占」です。
つまり、完全競争と独占は、両極端の概念です。
私達実務家は、上図の左端の「完全競争」から右端の「独占」の間のどこかにいるんですね🤔
そして、ここからが大事!
ビジネスでは、右端の「独占」に近づけば近づくほど、儲かりやすくなります。
なぜなら、商材を独占しているなら、自分で自由に価格を決められるため、利益取り放題だからです😍
上記の独占や寡占事例で紹介した企業を見てみてください……
儲かってるでしょ😒
需要があって、かつ、独占に近い状態だと、ほぼほぼ儲かるんです。
別の視点でみると、我々は、法の範囲内で、如何にして独占状態に近づけるかを競っているともいえます。
そうだとすると、独占状態に近づくための試行錯誤が、経営戦略・競争戦略そのものです🤔
意図しているかいないかに関わらず、経営戦略を担当する皆さんは、自然と「差別化」とか「ブルーオーシャン」とか、なんとかして勝てる場所・方法はないかと考えていると思います。
それってつまり、独占状態に行くための戦略を練っているんですよ😁
そう思うと思考がスッキリしますね!
4.独占に近づく方法
さて、問題はここからです😑
独占に近づけば儲かるのだとわかったとしても、それを実現するのは非常に難しいです。
ここは経営戦略担当者は身に沁みてわかっていると思います……。
戦後ならまだしも、高度にIT化された現代社会で独占を実現するのは至難の業です。
それがもしIT産業であれば尚更です。
ITの世界は昨日リリースした技術が、今日にはもうパクられていて、次の日には新しい技術が付加されてリリースされています。
それくらいのスピード感で変化し続けている。
そんな業界で独占を実現するのは難しい……。
でも、なんか方法はないか🤔
ちょっと考えてみましょう!
まず、完全競争の条件をおさらいしましょう。
(1)無数のプレイヤー:売手と買手が無数に存在する。
(2)市場参入・退出が自由:売手も買手もいつでも市場に出入りできる。
(3)全く同じ商材:市場で売買される商材に差が一切無い。
(4)情報の完全性:全プレイヤーが同じ情報を持っている。
この4条件が完全競争を実現させると考えられています🤔
そして、完全競争だと、誰もが同じ商材・同じ情報を持っているから、価格が自動的に最安値に決まってしまって、儲からない。
ということは、上記の4つの条件をそれぞれ崩していけば、独占に近づくはず!
少なくとも、何らかのヒントがそこにあるはず。
一つずつ考えてみましょう!
(1)無数のプレイヤー
そもそも、売手も買手も無数にいるから、それぞれの交渉力が弱まります🤔
例えば、自分が売手側の企業で、他の競合がほぼいない状態(独占)だとします。
その場合に買手が山程いれば、一々それぞれの買手からの価格交渉に応じないですよね。
いくらでも他に買手はいるわけですから。
一方で、自分達以外にも山程売手がいて、自分達よりも安い価格を提示してきそうな雰囲気がある場合はどうか……。
この場合は価格交渉に応じる他ないですね😑
ということは、自分達が売手にいる場合に独占状態に近づくためには、
・売手が少なく
・買手が多い
市場を選択しないといけません。
逆に、自分達が買手にいる場合には、
・売手が多く
・買手が少ない
市場を選択すると、安く買うことができます😏
企業は商材の提供者であることが多いですが、その商材を創り出す際には仕入れという「買手」になるケースもあるので、どちらの視点でも考えられるようにしておく必要があります。
なお、自分が買手のパターンは、実生活でも応用可能です!
例えば、新型家電製品が出たときに、旧型を買う場合などがそれです。
多くの買手は新型に群がります。
そこであえて一つ前の旧型を買うと、かなり安く買えることがあります。
私もよくそういう買い方をしていて、運が良い時は定価の半額~10分の1程度の価格で入手しています😏
こういうのを「型落ち狙い」といいます(笑)
(2)市場参入・退出が自由
市場への参入・退出が自由ということは、誰でも売手・買手になれるし、辞めることも簡単だということ😑
これだと、とある市場において「この市場めっちゃ儲かるぞ!」という噂が流れたらすぐに売手が溢れて儲からなくなってしまいます……。
ということは、できる限り参入障壁が高い市場を選ぶべきということになります。
しかし、参入障壁が高い市場なんてそうそうあるもんじゃないです🙄
しかも、参入障壁が高いということは、自社も参入しづらいということ。
ここはよく考えねば😑
なお、参入障壁にもいろいろな種類があります。
代表的な例は法規制による参入障壁です。
日本でいうと、金融商品取引法による規制が有名です。
金融商品(株式等)を取り扱う場合、第一種金融商品取引業登録か第二種金融商品取引業登録が必要になってきますが、この登録がむちゃくちゃ難易度が高い上に時間がかかる!
さらに、専門家を常勤で社内に揃えておかないといけないので、人件費というランニングコストが半端ではない😱
ゆえに、多くの事業者が登録を諦めるか、途中で撤退するのです。
その他の参入障壁としては、自社の技術・ノウハウによる参入障壁があります。
長年蓄積した技術やノウハウによって、他社が真似できない商材を生み出すケースなどです。
日本ではTOYOTAなどが有名ですかね🤔
その他、特許による参入障壁もあります。
特許を取ってしまえば他社はライセンス料を支払わない限り同じ技術を使えませんから、極めて有効な障壁です。
私も法務専門職なのでこのへんは敏感です😑
なんか独自性ある技術があったら「とりあえずすぐ特許取ろうぜ!」っていつも思っています。
一方で、買手側の参入障壁についても少し考えてみましょう。
売手にとっては、買手は多ければ多いほど有り難いものです。
しかし、あえて買手に参入障壁を設けて、安定的な利益を確保している産業もあります😏
例えば、高級車産業。
私は全く詳しくないですが、ポルシェとかランボルギーニなどの高い車は、買手に参入障壁があり、買える人自体が極めて限定されています。
でも、買える人が限定されているがゆえに、高級ブランドとして認知され、高い利益率を確保し続けられています。
私の身体のサイズだと絶対乗れないから一生縁がないだろうけど、実に面白い分野です。
(3)全く同じ商材
ここに関しては、前述した「差別化」が対応策として考えられます😁
他社の商材とは異なる独自性、個性を出すことで市場を独占するのです。
例えばスターバックスなどは差別化に成功しているなぁと思います🤔
本来、原価を考えるとコーヒーなんか一杯100円程度で十分利益が出るはずなのです。
現に、セブン・イレブンだとその程度の値段でしょう。
そんなやっすい原価のコーヒーをスターバックスでは500円~1000円以上かけて販売していますよね?🙄
それでも毎日満員御礼!
私の家の近所のスターバックスなんて、席が空いている日を見たことがない!
いっつもMac開いた集団が占領していて、カタカタターン!!!ってやってます。
本当にね、何時間もいるんですよ😑
朝いた兄ちゃんが夕方帰ってきたらまだいましたからね……
もう怖い。
何杯飲んでんのと。
一日3~5杯くらい飲んでいたとしたら、それはもう家賃と同じくらいの額やん🙄
スターバックスに魅了されている顧客の多くは、スターバックスのコーヒーが好きというのもあるでしょうが、あれはたぶん空間そのものが好きなのだと思います。
スターバックスでMac広げてカタカタターンな俺カッケーの理論です。
本当に凄い差別化だと思います。
おそらく他社では真似できないですし、すでにその雰囲気や文化そのものが参入障壁となっています。
私もMac買ったら行きます。
(4)情報の完全性
全員が同じ情報を持っているがゆえに、価格が自動的に決定されてしまうのが完全競争市場です。
ということは、情報格差をあえてつければ、それは独占に近づくことになる😏
ここについては、すでにほとんどの企業がやっていることです。
自社独自のノウハウ、仕入値、特許、商標など。
様々な情報を管理して、情報そのものを守っていく戦略です。
ビッグデータ、個人情報などの情報も、規模が大きくなれば武器になりますし、その使い方に関する情報も武器になります。
これからの時代はこの情報戦略が勝敗を決めるのではないかとすら思えてきます🤔
如何に自社の重要情報を守り抜くかですね。
以上、4つの条件それぞれについて少しだけ思考してみました。
経営戦略の参考になれば幸いです。
おわりに
今日は完全競争と不完全競争の概念について書かせていただきましたが、何となくイメージ伝わりましたでしょうか?😱
個人的にゲキムズな分野でした(笑)
やはり経済学の専門家って凄いですね🤔
こんな難しい領域の話を様々な数式を用いて説明しているのですから……。
真似できないし、一生勝てる気がしない😨
私は自分の勝てる領域を探さないといけないなと改めて痛感しています。
差別化せねば。
がんばります!
ではまた次回お会いしましょう(`・ω・´)
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