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わかおの日記156

弟がキャンプに行った(行かされた)ので、我が家には久しぶりに平和な空気が流れている。母親とにこやかに談笑しながらバイトの原稿を進め、「午後からやることないな〜」なんて言いながら冷凍のパスタをすする。ヤツがいる場合には決して実現することのない、理想的な午前中の過ごしかたである。 

犬がかわいい。ぼくが落とした水グミを食べちゃって本当にやらかしたと思ったけど、どうやら大事ないようでよかった。

人気者の母親はここぞとばかりに人と会う予定を詰め込み、田中みな実が着ているみたいなドレスを纏って、小躍りしながら午後には出かけていった。ぼくは本当にやることがなくて、ギターをひたすら練習しながら高校野球を見ていた。

大阪桐蔭が強い。2回戦でかなり圧倒的な試合をしていた二松学舎を赤子の手をひねるようにボコボコにしていた。聞いたところによると大阪桐蔭は2回戦まで1イニングも三者凡退しなかったらしい。そんなことある?

これから先の人生で、大阪桐蔭でレギュラーをもらって甲子園に出てたような人達と出くわす可能性がゼロではないと思うと身の毛がよだつ。もしぼくがその立場だったら、高校時代の栄光だけで一生他人を見下し続けるだろうから。でも大阪桐蔭でレギュラーを獲るような人達は人格もしっかりしてるから高校時代に得た自信を礎に、社会でも活躍するんだろうな。なんだそれ。ぼくの人生はなんなんだ。これからどうしろっていうんだ。

作ったトラックを何となく流しながら詞を書くことを試みたが、トラックがオシャレな夏すぎて、全く何も思いつかなかった。前はこういうときに、オシャレな夏をしていないおれが悪いんだと思っていたが、最近は逆だと思うようになった。オシャレな夏の雰囲気を放つトラックを作るおれが悪いのである。もっとジメジメした陰険なトラックを作らなければならない。気に入っていたがボツにすることにした。

家に残されたぼくと父で、駅前の焼肉屋に行った。肉はうまかった。網を頑なに変えないためモクモクと立ち上る煙に目をやられながら、酒の入った父親がいろいろ言ってくるのに相槌を打つ作業はそこそこ骨が折れた。でも普段しゃべらない父親がぼくにしゃべりかけてくれるのは嬉しかった。父親とのコミュニケーションに対する期待値が下がりすぎである。

犬がかわいい。焼肉を食べたぼくの口をベロベロしてくる。

レバーをあまり焼かずに食べたからかお腹の調子が悪い。カネコアヤノがいたら手当てをしてくれるのに。




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