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渡辺 杜太朗
2021年11月16日 12:52
寝起きの悪い俺は一階から聞こえる母さんの殴る様な声で目を覚ました。「起きなさーい!遅刻するわよ!」薄目を開け時計に目をやると、出発時間の10分前。急いで布団から身を起こし、学ランに袖を通す。顔を洗って歯を磨くとそのまま玄関までの廊下を走り抜けた。「いってきます!」「待ちなさい!ミッチェル!お弁当!」母さんが廊下の奥からお弁当を両手で抱え走ってきた。「ありがとう」俺は玄関を飛
2021年11月8日 03:48
怖気付いた狼は煙を焚いた孤独感は産まれた時からあったから風の色が変わろうと揺れゆく葉の曲調が変わろうと自身にはなんの変化もないただひたすらに荒野の始まりにいる折りたたみ式のコンパクトな狼小さく包まって目を瞑ってひたすらにじっと震えていたやっとこ疲れたもんで狼煙を焚いた爪で葉や石っころ引っ掻きまわし二度目の満月の頃ようやく火がついた
2021年10月28日 10:30
僕の暮らす部屋は真っ白な部屋。壁も床も天井も、窓の外だって真っ白な景色。僕のいちばん好きな色。心が落ち着く白い色。バシバシと窓を叩く音がする。そこには青年が立っていた。久しぶりの他の色。僕はゆっくりと窓を開けた。「私は画家。私の描いた絵を君の素敵な部屋に飾ってはくれないか?」そういうと青年は鞄の中から手のひらふたつ分の絵を出した。「海を描いたんだ。綺麗な海。クジラも魚も自由
2021年9月18日 12:35
僕は『三』みんなからは「さん」とか「three」とか呼ばれてる僕の名を読んで阿呆になる芸で有名な三です。あの時はなんだか複雑な気持ちでした。早起きは三文の徳とか言われた時は嬉しかったななんか僕が良い扱いを受けている様でねでも「たったの三文なら寝てるわ」という意見は僕からしたら辛辣だった三度目の正直って時には僕も力を入れて全力だすね全力だすけど二度あることは三度あるって
2021年4月19日 10:09
会話劇 ふたりのはなし「船酔いしたー」「大丈夫ですか?だからあれほど無茶しないで下さいって言ったじゃないですか!」「だってしょうがないじゃん、暇だったんだもん」「暇だったからといって甲板で野球はしないで下さい!」「えー」「えー、じゃありません。しかもなんですか、三振したら罰ゲームって。子供じゃないんですから」「三振グルグルバットウォークのこと?」「呆れます、大の大人
2021年4月17日 14:03
会話劇 ふたりのはなし「イケメンじゃなくてもいいから、ちゃんとしてて優しい男いないかなぁ」「なにそれ、彼氏欲しいの?」「超欲しい。ってか結婚したい」「あー、この間披露宴におよばれされて地元帰ってたもんね」「そう、幸せオーラに飲み込まれました」「そっか、でもちゃんとしてて優しい男ってどういうこと?」「だからー、真面目に仕事してて、私のこと気づかってくれる男」「それなら
2021年4月15日 10:41
会話劇 ふたりのはなし「私が手を叩いたら、あなたはレッサーパンダになっています」「はい」「3、2、1、パンッ」「、、、、、、、シャー!シャー!」「人間に戻りましょう、3、2、1、パンッ」「あ」「おはようございます」「かかってました?」「はい、あなたは非常に催眠術にかかりやすい体質の様です」「そーですか」「では、私が手を叩いたらあなたはトドになっています」
2021年4月12日 10:33
「保険って入ってる?」「入ってるよ、入院保険とか火災保険とか」「そーだよね。そこら辺だよね」「なに?そこら辺って」「なんかさ、保険の勧誘が家に来てさ。話し聞いてみたらいい感じだったから入ってみようかなって」「いいじゃん、どんな保険?」「勇気の保険」「勇気の保険?」「そう、日常で勇気が出なくて困る時ってあるじゃん。例えば自分の意見をハッキリ言う時とか、困ってる人を率先
2021年4月8日 11:24
会話劇 ふたりのはなし「求愛のダンスって知ってる?」「あー、南米の鳥が踊るやつ?」「そうそう、オスがメスに踊ってアピールするやつ」「ダンスが美しいとメスもメロメロってやつだよね」「そうそう!それよ!」「それがどーしたの?」「ミユキちゃんっているじゃん」「あー、同じゼミの?」「そう、かわいいよなぁ」「え、なに?好きなの?」「好きなんだよなぁ。かわいいよなぁ
2021年4月7日 10:39
会話劇 ふたりのはなし「ひとつだけ超能力身につけれるとしたら、なにがいい?」「えー、悩むな。ひとつだけでしょ」「ひとつだけ」「じゃあやっぱり瞬間移動かなぁ」「死ぬよ」「え?なんで瞬間移動最高じゃん」「だって考えてみろよ、時空間を超越する力だよ。そうとうな負荷とGが身体にかかるよ。時空の入り口でペチャンコになってお終いだよ」「えー。そっか、、、やだな。じゃあ透明人間
2021年3月28日 11:23
「もーいーかい?」「もーいーよ」僕は教室のロッカーの中に隠れたドキドキするみつかりませんように子供の頃から大好きなかくれんぼ狭いロッカーの中は色々と考えが巡るようになっている僕は漠然と考えていた母親って凄いよな父親のいない私にとって身を粉にして働き高校まで入れてくれた母親には尊敬しかないもっと親孝行したいなガラガラガラガラ鬼が僕の隠れているロッカー
2021年3月26日 11:33
自由に憧れるといった彼女はスマートフォンの壁紙を空を映した写真に変えた見上げればいつもあるのにスマートフォンばかり観ているから俯いて気づかないのかな気を利かせた水溜りが彼女の大好きな青を投影してくれたが彼女は全然気づかないだから僕は彼女に言ったんだ君はここにいるけどここにいないねって彼女は怒って帰っていった今日は腹がたったとSNSで呟いていたやっぱりそ
2021年3月24日 17:47
皆この急な坂が嫌いだ自身を世界の中心だと考え呼吸をしている数々の人がこの坂に沢山の名前を与えたしかしこの坂はその全てに反発し揶揄した柿の木が近にあるもんで「柿坂」と名付ければ元気な筈の柿の木が次第に枯れていき侘しくなった野良猫が多くいた為「猫坂」と名付ければ辺り一帯の野良猫がバタバタと倒れだした困った近所の者が縁起の良い名にしようと「幸坂」という名を与えたら屁理
2021年3月20日 21:04
夕立が止むと 夏の残香が鼻の奥をつく宿題をほっぽり出して 校外活動に精を出した夏の終幕にふさわしい花火の押し付けがましい笑顔に、私はほどほどのウンザリの塊をくしゃくしゃにして蹴どばしてやった。目が覚めるとジリジリと暑さがぶり返すまだもう少し宿題に背を向ける時間が私には余っていた夕立が止むと 夏の残香が鼻の奥をつく宿題をほっぽり出して 校外活動に精を出した夏の終幕にふさ