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「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」

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世間やネット上の常識や通説も、一度立ち止まり、ひと手間かけて調べてみると、その真偽や新たな事実がわかります。筆者は、大学図書館の司書として、また別の大学では教員として「学ぶ技術」…
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#自由研究

「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第1回:「ネットで何でも分かる」時代に、なぜ学ぶのか? ~これまでに自分が得てきた情報は信用できるか?~

「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第1回:「ネットで何でも分かる」時代に、なぜ学ぶのか? ~これまでに自分が得てきた情報は信用できるか?~

ネット情報は、即時性と双方向に優れ、ほとんどの場合は「その場を乗り切れる」便利なものですが、「間違っていても責任を問えない怖さ」に加え「ライバルを含めて誰でも使えるので“その他大勢”に埋没する恐れ」、そして「自分の意見に近い情報への偏り」といった欠点があります。
また、ネットに答えがないときこそ、その課題の開拓者として探究し、解決策の発信者となる価値が生まれます。
明日の天気や電車の乗換方法を調べ

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「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第2回:ネット時代に、なぜ読書?なぜ図書館?~自分だけの世界地図と、脳内四次元ポケットを持とう~

ネットに飛び交う玉石混交の情報に踊らされないためには、今日までに学び「ここまでは確かだ」と言える知識を頭の中で自由に参照できるよう整理しておくことが大切ですが、個人の記憶容量には限界があります。しかし、未知の課題であっても、情報の海から確かなものだけを探し出す力があれば、対処が可能です。

「ローマ教皇がトランプ氏を支持」というフェイクニュースや、トイレットペーパー不足等のデマも、発信者の確認に加

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「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第3回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その1)学術情報の流れと成り立ち

「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第3回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その1)学術情報の流れと成り立ち

「図書館は、本が並んでいる場所」という固定観念が、根強くあります。きっと、多くの人にとって幼少期から物語や小説に親しんできた場だからでしょう。
確かに、課題を解決するうえでも本は重要ですが、得られるのは「すでにその業界では常識」の基礎知識です。ライバルに差をつけるには、より焦点を絞った先端的な情報が必要となり、それは専門の雑誌に論文や記事として載ります。したがって、基本から学びたいときは本を読み、

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「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第4回:「『鬼に金棒』の図書館活用術(その2)事典と辞書」

                     課題を探究するにあたって、本を探したり、主張を決めて論じ始める前に、「そもそも自分の認識が間違っていたり、偏っていたり、古びていないか」を疑ってみることが大切です。

まずは、テーマとなる言葉そのものについて調べてみましょう。たとえば「TPP(環太平洋パートナーシップ)」は、読む本や論文・記事によって言葉の定義は変わらなくても、その筆者が「自動車産業のよう

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「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第6回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その4)専門雑誌とオープンアクセス

今回は、専門雑誌の記事・論文を探す方法です。村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』は、「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」という言葉で始まりますが、データベースのような「情報を探す道具」にも完璧なものは存在しないのです。それぞれの特性を知って使い分ける大切さも、もう一つのメッセージです。

雑誌と聞いて、まず思い浮かぶのは『日経ビジネス』や『東洋経済』等、お馴染

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「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」<最終回>第10回:「学ぶ」知識から「使う」教養へ(アウトプット)

本連載では、これまで図書館やオンライン情報源を使った学び方(インプット)が中心でしたが、今回は最終回なので視点を変え、自分の考えを発信すること(アウトプット)がテーマです。
どれほど多く知識を集めても、そこから自分ならではの知見を生み出し、言葉や文章にしてみなければ、未来には何も残せません。しかし、ほんの小さな思い付きのアイデアでも、発信さえすれば、どこかの誰かに活用される可能性が生まれます。その

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このたび、初めての本『ネット情報におぼれない学び方』を出す運びとなりました。

このたび、初めての本『ネット情報におぼれない学び方』を出す運びとなりました。

このたび、初めての本を出す運びとなりました。

『ネット情報におぼれない学び方』というタイトルで、岩波ジュニア新書から来月に刊行される予定です。

https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b619889.html

この本の第一の目的は、「確かな情報源を探す方法」を学ぶことです。

それは「ネットだけでなんでもわかる」という思い込みを解き、本や図書館なども使った「王道

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