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  • 梅澤貴典の読書記録

    実際に読んでみて、面白かった本のみ紹介いたします。

  • 「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」

    世間やネット上の常識や通説も、一度立ち止まり、ひと手間かけて調べてみると、その真偽や新たな事実がわかります。筆者は、大学図書館の司書として、また別の大学では教員として「学ぶ技術」を教えて来た経験から、特にネット社会では「情報の信頼性を見極めて使いこなす力(情報リテラシー)」が大切だと痛感し、この連載を始めました。 これから社会での活躍を目指す若者から、実際にさまざまな課題に挑戦し続ける大人たち、そして人生100年と言われる時代を、一生涯を通じて知的好奇心を持ち、心豊かに生きて行きたいと願うすべての世代の方に、本連載が役立つことを願っています。

最近の記事

『日本図書館情報学会誌』の最新号に、拙稿「コロナ禍による大学図書館員の専門性への影響:『来館できない』をチャンスに変えるために」が掲載されました。

『日本図書館情報学会誌』の最新号に、拙稿が掲載されました。 https://cir.nii.ac.jp/crid/1520297737313745152 「コロナ禍による大学図書館員の専門性への影響:『来館できない』をチャンスに変えるために」というテーマです。 同学会のシンポジウムの記録で、当日は熱く語り過ぎた気もしますが、コロナ禍によってますます重要となった「確かな情報」の価値について広く声を届ける機会をいただき、感謝いたします。 私は、「いつでもどこでも、世界の最新

    • 【独学の道具箱】Q.自分の町や学校の図書館で、面白そうな本が見つからない場合は?

      【独学の道具箱】 Q.自分の町や学校の図書館で、面白そうな本が見つからない場合は? →「Webcat Plus( ウェブキャット・プラス)」(http://webcatplus.nii.ac.jp/)を使えば、江戸時代から今週の新刊書まで、日本で流通するほとんどの本を探せます! 見つかった本が図書館にない場合、近隣の市区町村からの取り寄せや購入がリクエストできることが多いので、ぜひ図書館の窓口で相談してみてください(ただし、図書館の方針としてマンガなどは対象外の場合もあり

      • 『現代評論キーワード講義』(小池陽慈著・三省堂)

        『現代評論キーワード講義』(小池陽慈著・三省堂)。 一言で表すならば、「無人島に持っていきたい本」の歴代首位になってしまう1冊でした。 https://tb.sanseido-publ.co.jp/gakusan/g-h-school/g-hs-kokugo/hs-ko-genbun/gakusan-6096/ いや、違うな…!この本のスゴいところは、ページを進めるごとに自分の窓が広がり、読みたい本が増えてしまうところだ(参考図書は、200冊も載っている…)。 もしも無人島

        • 「ネット情報におぼれない学び方」(岩波ジュニア新書)執筆の背景と狙いについて『教育学術新聞』にご掲載いただきました。※画像の使用許諾済み

          この本は、大学図書館の司書としての経験を基に、初学者に向けた「調べ方」や「学び方」の入門書として書いたものである。本稿では、執筆の動機と狙いについてお伝えしたい。 この本の読者に学び取って欲しいのは、情報収集の知識・技術のみならず、「正答のない問い」に能動的に取り組み、社会に出てからも学び続けるための知的好奇心の大切さである。 主に中高生に向けた「岩波ジュニア新書」からの発刊だが、初めての課題レポートに挑む大学生にも役立つよう、研究やアウトプットの基礎的な方法も含めた内容

        『日本図書館情報学会誌』の最新号に、拙稿「コロナ禍による大学図書館員の専門性への影響:『来館できない』をチャンスに変えるために」が掲載されました。

        • 【独学の道具箱】Q.自分の町や学校の図書館で、面白そうな本が見つからない場合は?

        • 『現代評論キーワード講義』(小池陽慈著・三省堂)

        • 「ネット情報におぼれない学び方」(岩波ジュニア新書)執筆の背景と狙いについて『教育学術新聞』にご掲載いただきました。※画像の使用許諾済み

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        • 梅澤貴典の読書記録
          3本
        • 「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」
          12本

        記事

          このたび、初めての本『ネット情報におぼれない学び方』を出す運びとなりました。

          このたび、初めての本を出す運びとなりました。 
『ネット情報におぼれない学び方』というタイトルで、岩波ジュニア新書から来月に刊行される予定です。 https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b619889.html この本の第一の目的は、「確かな情報源を探す方法」を学ぶことです。 それは「ネットだけでなんでもわかる」という思い込みを解き、本や図書館なども使った「王道の学び方」を身に付けることでもあります。 もう一つの目的は、確かな情報を集

          このたび、初めての本『ネット情報におぼれない学び方』を出す運びとなりました。

          「本の読める場所を求めて」(阿久津隆)、面白かった!

          「本の読める場所を求めて」(阿久津隆/朝日出版社)、面白かった! まず前半は、せっかくカフェや図書館などで読書しようとしても、どこも一長一短だなあ…とボヤきながらの彷徨い歩き。 村上春樹の「風の歌を聴け」に憧れて、バーで読書に挑戦するも大撃沈…という体験は、まるで自分の過去の日記を勝手に読んで出版されたんじゃないか?というレベルで共感しちゃいました(苦笑)。 確かに、街のコーヒーショップは仕事目的の人で溢れて 、お洒落なブックカフェも、インスタ目的で騒ぐ人ばかり。 そ

          「本の読める場所を求めて」(阿久津隆)、面白かった!

          読書メモ『自分一人で学び、極める。』(山口謠司)

          『自分一人で学び、極める。』(山口謠司/フォレスト出版)、面白かった。 どうやら「独学」がブームを迎えているようで、多くの本が出ています。 その中でも、本書は「誰もが『自分自身で1冊の新書を書き上げられるレベルの知識を身につけること』を目標として」おり(7ページ)、この点は一冊の中に何度も出てきます。 確かに、論文を書いたり学位を取ることは目標としては王道だけれども垣根が高いところ、「新書を書く」と聞くと、ちょっとワクワクしてしまいますね…。 「新書が書けるということは、物事

          読書メモ『自分一人で学び、極める。』(山口謠司)

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」<最終回>第10回:「学ぶ」知識から「使う」教養へ(アウトプット)

          本連載では、これまで図書館やオンライン情報源を使った学び方(インプット)が中心でしたが、今回は最終回なので視点を変え、自分の考えを発信すること(アウトプット)がテーマです。 どれほど多く知識を集めても、そこから自分ならではの知見を生み出し、言葉や文章にしてみなければ、未来には何も残せません。しかし、ほんの小さな思い付きのアイデアでも、発信さえすれば、どこかの誰かに活用される可能性が生まれます。その情報を求める人に「検索される」側になるのです。 かつて、広く発信する手段は出版

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」<最終回>第10回:「学ぶ」知識から「使う」教養へ(アウトプット)

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第9回:ネット&図書館の複合的活用術

          「ネットがあれば、図書館は不要では?」と問われるように、両者は対照的に捉えられがちです。しかし、それぞれ長所と短所のある「情報の集合体」であり、相反する存在ではなく、互いに代替できるものでもありません。 それぞれの特性を知ったうえで使い分け、「良いところ取り」をすべきであり、そこに情報収集の醍醐味があります。 まず、ネット情報は刻々と変わる「動的」な特性があり、その主な長所として「即時性」と「双方向性」があります。 即時性とは、常に情報が更新され続けることです。電車の乗換案

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第9回:ネット&図書館の複合的活用術

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第8回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その6)地域・郷土資料とレファレンス(調べごと相談)

          最近は、本や雑誌に加えて電子版やオンライン版の資料も増えています。さらに、図書館が介在しなくても無料で誰でも利用できる「オープンアクセス化」が進んでいることにもふれてきました。 それでは、もしも未来において「お金で買える情報」がすべてオープンアクセス化したら、果たして図書館やその専門的職員(ここでは「司書」と呼びます)の存在意義は残るのでしょうか? 今回は、その問いに答える形で「地域・郷土資料」と「レファレンス(調べごと相談)」を例に挙げ、図書館と司書がネット時代でも「頼れ

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第8回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その6)地域・郷土資料とレファレンス(調べごと相談)

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第7回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その5)統計と公的データベース

          課題の解決策を提案するにあたり、個人的な意見だけでは説得力が弱いので、裏付けとして統計等の数値データを使うことがあります。 このため、図書館には年鑑や白書等の統計資料もあります。さらに、最近は政府や自治体が公開している統計データベースも、重要な情報源となっています。 ネットのニュースでは「最近、少年犯罪が増加している」等と報じられ、根拠らしき数値が示されていると真実味があり、あたかも世間の常識のようになってしまっています。 しかし統計データは、解釈や切り取り方しだいで都合よ

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第7回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その5)統計と公的データベース

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第6回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その4)専門雑誌とオープンアクセス

          今回は、専門雑誌の記事・論文を探す方法です。村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』は、「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」という言葉で始まりますが、データベースのような「情報を探す道具」にも完璧なものは存在しないのです。それぞれの特性を知って使い分ける大切さも、もう一つのメッセージです。 雑誌と聞いて、まず思い浮かぶのは『日経ビジネス』や『東洋経済』等、お馴染みのタイトルでしょう。しかし、これらはコンビニでも買えるほど幅の広い読者層に向け

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第6回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その4)専門雑誌とオープンアクセス

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第5回「鬼に金棒」の図書館活用術(その3)本

          今回は、自分の悩みを解決するカギになる一冊の本に出逢う方法について、同じように「運命の相手」を探し求める、「婚活」を例にして考えてみましょう。 もちろん、本は「数の限りなく縁を結べる」等の違いも多いですが、あくまでも例え話ですので、どうかご容赦ください。 図書館で本を探す人の多くは、キーワードで蔵書を検索した結果を上から順に眺め、よさそうな本を何点かメモして本棚に向かうでしょう。 それも一つの方法ですが、「網羅性(探す範囲の広さ)」と「適合性(理想の条件を満たせるか)」の

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第5回「鬼に金棒」の図書館活用術(その3)本

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第4回:「『鬼に金棒』の図書館活用術(その2)事典と辞書」

                               課題を探究するにあたって、本を探したり、主張を決めて論じ始める前に、「そもそも自分の認識が間違っていたり、偏っていたり、古びていないか」を疑ってみることが大切です。 まずは、テーマとなる言葉そのものについて調べてみましょう。たとえば「TPP(環太平洋パートナーシップ)」は、読む本や論文・記事によって言葉の定義は変わらなくても、その筆者が「自動車産業のように関税がなくなり輸出が増えて得をする人」であったり、あるいは逆に「農業従事者のよ

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第4回:「『鬼に金棒』の図書館活用術(その2)事典と辞書」

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第3回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その1)学術情報の流れと成り立ち

          「図書館は、本が並んでいる場所」という固定観念が、根強くあります。きっと、多くの人にとって幼少期から物語や小説に親しんできた場だからでしょう。 確かに、課題を解決するうえでも本は重要ですが、得られるのは「すでにその業界では常識」の基礎知識です。ライバルに差をつけるには、より焦点を絞った先端的な情報が必要となり、それは専門の雑誌に論文や記事として載ります。したがって、基本から学びたいときは本を読み、解決すべき課題が見えてきたら雑誌の論文・記事も探す……というように、多様な情報源

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第3回:「鬼に金棒」の図書館活用術(その1)学術情報の流れと成り立ち

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第2回:ネット時代に、なぜ読書?なぜ図書館?~自分だけの世界地図と、脳内四次元ポケットを持とう~

          ネットに飛び交う玉石混交の情報に踊らされないためには、今日までに学び「ここまでは確かだ」と言える知識を頭の中で自由に参照できるよう整理しておくことが大切ですが、個人の記憶容量には限界があります。しかし、未知の課題であっても、情報の海から確かなものだけを探し出す力があれば、対処が可能です。 「ローマ教皇がトランプ氏を支持」というフェイクニュースや、トイレットペーパー不足等のデマも、発信者の確認に加えて、教皇の立場や製品の産地など既存の情報を積み上げれば、真偽を見極められます(

          「ネット情報の海に溺れないための学び方入門」第2回:ネット時代に、なぜ読書?なぜ図書館?~自分だけの世界地図と、脳内四次元ポケットを持とう~