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『日本図書館情報学会誌』の最新号に、拙稿「コロナ禍による大学図書館員の専門性への影響:『来館できない』をチャンスに変えるために」が掲載されました。

『日本図書館情報学会誌』の最新号に、拙稿が掲載されました。
https://cir.nii.ac.jp/crid/1520297737313745152

「コロナ禍による大学図書館員の専門性への影響:『来館できない』をチャンスに変えるために」というテーマです。

同学会のシンポジウムの記録で、当日は熱く語り過ぎた気もしますが、コロナ禍によってますます重要となった「確かな情報」の価値について広く声を届ける機会をいただき、感謝いたします。

私は、「いつでもどこでも、世界の最新学術情報にアクセスできる」ように、「電子図書館化」に取り組んで来ました。

ところが、大学図書館の評価指標は、戦後70年間以上ずっと、電子図書館化とは相反する「来館者数」や「貸出冊数」に重きが置かれており、その矛盾にジレンマを感じていました。
(各種データベースの利用回数や、情報リテラシー教育の効果、電子情報に強い司書の専門性なども評価すべきだと、主張し続けています。)

そこに2020年のコロナ禍が始まって様相がガラリと変わり、ようやく「どれだけ多くの学術資源に学外からアクセスできるか」が大学の実力を示すようになり、皮肉なことに「電子図書館の価値」が理解されるようになりました。

ところが、在宅での学修生活を余儀なくされた日本中の大学生(特に新入生)は、自宅からでも大学の豊富な学術情報資源にアクセスできることを知らないことが多く、レポートや論文執筆にあたっては、ネット検索などによる不確かな情報収集で臨まざるを得ませんでした。

そこで私は一念発起し、「在宅で学ぶ大学生と教職員のための情報収集法&大学図書館リモート活用法」という資料と動画を作成して、無料で公開しました。
https://researchmap.jp/umetaka/%E8%B3%87%E6%96%99%E5%85%AC%E9%96%8B
https://youtu.be/Sc8ttQ3xFzQ

タイトルに「教職員」も入っているのは、先生方も教材作成や最新知識のアップデートに困っているだろうと思ったからです。
また、クリエイティブコモンズのCC-BYマークも入れて、学校など非営利ならば無料で利用できるようにしています。

以下、本稿のメッセージの要点を、本文より抜粋します。

「このたびのコロナ禍にともなって公開した一連の資料と動画は、従来のガイダンスで学生側に見られた『図書館なんて必要なの?』という疑問を解消して、学生たち自身の『自分事』として捉えてもらうよう、意識しました。また、在宅学修の際、ネットの情報源をそれらしくまとめれば課題解決になる、という『陥りがちな危険』を回避させることも重視しました。そして、アウトプットの意義にも力点を置きました。先人たちも言っていますが、世紀の発見があったとしても、自分の中に留めて誰にも伝えなければ、他者や未来への応用などは当然されないわけです。知識や情報は、発信し活用してもらってこそ初めて意味があります。」(155ページ)

「学ぶことはこれほど面白いことだし、先人たちの知識がこんなに組織化されていて、ワールドワイドに使う特権を、たまたま現代に生きる私たちは持っているということを、ぜひ伝えたかったのです。GoogleやChat GPTを使って、その場その場を凌いでいるだけだと、『そんな風にお茶を濁してしまった人なりの人生』が待っているよと。」(154ページ)

「私は情報リテラシー教育に関心があります。せっかくこの世に、先人たちの残した優れた論文や研究成果、あるいは失敗の事例といった膨大な蓄積があるにも関わらず、そこに到達する方法を知らないことによって学術的なアウトプットにつながらない。大げさに言えば、情報源への気づきが、その人の人生を実り豊かなものにも、貧しいものにもしてしまうと考えたのです。」(154ページ)

ご高覧いただければ、有難く存じます。
(ご所属先で本誌を購読していれば無料でPDFダウンロードできる場合がありますが、一般には無料公開されていません。お読みになりたい場合は、図書館等にご相談ください。)


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