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読書メモ『自分一人で学び、極める。』(山口謠司)

『自分一人で学び、極める。』(山口謠司/フォレスト出版)、面白かった。
どうやら「独学」がブームを迎えているようで、多くの本が出ています。
その中でも、本書は「誰もが『自分自身で1冊の新書を書き上げられるレベルの知識を身につけること』を目標として」おり(7ページ)、この点は一冊の中に何度も出てきます。
確かに、論文を書いたり学位を取ることは目標としては王道だけれども垣根が高いところ、「新書を書く」と聞くと、ちょっとワクワクしてしまいますね…。
「新書が書けるということは、物事を深く理解し、知識が定着していると言えるからです。また、自分の知識をまとめ、文章化するという一工夫ができれば、それはすなわちアウトプットであり、実践につながります。」(8ページ)とあるように、自分が学んだことや考えたことを「一工夫」すれば、誰かが手に取りたくなるような新書が生まれる可能性につながります。
新書の世界は幅広く、たとえば近年の『応仁の乱』(呉座勇一)のようにガッツリと調査研究したものだけに限らず、ある分野の専門家がちょっと脇道に逸れたエピソードも交えながら、その学問世界の魅力を語る『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一)のような本もありますし、400万部売れた『バカの壁』(養老孟司)だって、著者の専門分野である解剖学そのものについて書かれた本ではなく、その知見を活かしつつ現代社会における相互の無理解と断絶を面白く批判した本だから、多くの人が手に取ったのでしょう。
新書の魅力は、著者の専門領域や知識を下敷きにしつつ(だから読者は得るものがある訳ですが)、時には本音で語ってみたり、ちょっとだけ大胆な仮説に触れたりする「遊び」もあり、その人自身が学び歩んで来た人生や素顔が垣間見えることも大きいです。
本書は、文献収集などの技術面にも触れていますが、「新書を書く」という目標を通して、とにかく学ぶことの楽しさ、アウトプットすることの意義、それらを通して自分の世界が広がっていくことの嬉しさが、一貫したメッセージとして伝わってきました。
「研究者は、他の分野の研究をしている研究者と話すことが大好きです。(中略)人と意見を交換して、新しいことを思いつくと、研究者は、サンタクロースからプレゼントをもらったようにうれしくなります。」(156ページ)

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