下井雄也 浮世絵の復刻

元木版画摺師。 伝統木版画の職人によって作られている、美術改良品としての復刻版浮世絵で…

下井雄也 浮世絵の復刻

元木版画摺師。 伝統木版画の職人によって作られている、美術改良品としての復刻版浮世絵ではなく、彫り摺りの技術レベルの点で、又、絵具や紙といった素材の点で、江戸時代当時と同質の浮世絵の復元を目指しています。 ※2024年現在、このような復元としての復刻版制作は中断中です。

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記事一覧

復刻ー北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の復刻を行いました。 今回の原画は山口県立萩美術館・浦上記念館より画像データ(http://www.hum2.pref.yamaguchi.lg.jp/sk2/sku/sku

復刻ー「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」

今回は広重の「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」の復刻版を作りました。 今回の制作コンセプトは「出来るだけ低コストで手早く、その中でなるべく良いクオリティーのものを…

新作について(創作版画)

前回の記事を書いた時、私の念頭にあったのは、これからはもうちょっと収入のことを考えて仕事をしようということでした。 (以下、カッコ内は本題とは関係ない話が少し長…

活動の転換について

私はかつて摺師をやる中で、また様々な復刻版浮世絵と文献資料に目を通す中で、彫師・摺師の腕や復刻版とは江戸時代当時の浮世絵の再現を、目標や焦点としているものではな…

歌川広重「六十余州名所図会 阿波 鳴戸の風波」復刻のお知らせ。(現状再現的復刻)

フランスにある和物雑貨店「Cool Japan」さんとの企画で復刻版を制作したので、今回はその制作について紹介します。 復刻した作品は歌川広重の「六十余州名所図会 阿波 鳴…

復刻版浮世絵とは何か③―彫師・朝香元晴氏に聞く

 復刻版浮世絵に関わり15年ほど経ちましたが、その間に復刻版に対する誤解に多く遭遇して来ました。その状況がむしろ普通だったとも言えます。そこで「復刻版とは何か…

浮世絵版画の復元的復刻について②ー歌川国貞作品を例に

私は元々は摺師をしていましたが、立原位貫氏の仕事に影響を受け、江戸時代の色材や紙といった素材の復元を含めての復刻版制作に取り組んで来ました。 伝統木版画の彫師や…

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詳細は後日お知らせします。

浮世絵の絵の具ー青花紙③ー「浮世絵における青花紙の使用について」(講演報告)

2022年初春、草津青花紙製造技術保存会主催の「あおばな紙担い手セミナー」の一環として、浮世絵における青花紙の使用について講演をさせて貰いました。 この記事を以て報…

復刻版浮世絵とは何か②ー復刻版浮世絵の歴史について

(※この記事は研究誌に投稿し不採択となった原稿を加筆修正したものになります。検証的不備を前提にお読み下さい。) 「復刻版浮世絵の歴史について」 ・はじめに 趣味…

浮世絵版画の復元的復刻について   三代目歌川豊国「東海道五十三次之内水口長右衛門」を例に

(※この記事は研究誌に投稿し不採択となった原稿を加筆修正したものになります。検証的不備を前提にお読み下さい。) Ⅰはじめにこれまで数多くの復刻版浮世絵(以下、「…

2017年にツイッターアカウントを開設しましたが、色々気持ち悪かったので閉鎖しました。

浮世絵の絵の具ー文献資料目録

江戸時代の浮世絵にはどのような絵の具が使われ、それがどういった色をしていたのかといったことは、当時の作品の再現を目的に復刻をするには、必要な知識であり、又、制作…

また改めて詳細はお伝えします。

三代歌川豊国「東海道五十三次之内 水口 長右衛門」ー②作品完成

この1年ほど製作と研究に取り組んでいた、三代歌川豊国の「東海道五十三次之内 水口 長右衛門」が完成しました。 今回は製作工程に関して論文を書くので、情報の公開は当面…

浮世絵の絵の具ーベロ藍の製法について

はじめに 現在もベロ藍の名を冠した絵の具は市販されており、復刻版浮世絵には一般的にそういったものが使われていますが、(ベロ藍の他、プルシャンブルー、ベレンス、ア…

復刻ー北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

復刻ー北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の復刻を行いました。
今回の原画は山口県立萩美術館・浦上記念館より画像データ(http://www.hum2.pref.yamaguchi.lg.jp/sk2/sku/sku2.aspx)をお借りしてそれを用いました。

今回の制作を紹介するための記事を書こうと思った時、制作のコンセプトも工程も基本的には前回と同じなので、改めて書くことが思いつかず、今回は作業風

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復刻ー「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」

復刻ー「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」

今回は広重の「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」の復刻版を作りました。
今回の制作コンセプトは「出来るだけ低コストで手早く、その中でなるべく良いクオリティーのものを作る」ということでした。
今作は様々な業者の方への卸販売用に作りましたが、もしかしたら個人的に欲しい人もいるかもしれないのでウェブショップでも販売しています。

(今回の原画は国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.nd

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新作について(創作版画)

新作について(創作版画)

前回の記事を書いた時、私の念頭にあったのは、これからはもうちょっと収入のことを考えて仕事をしようということでした。
(以下、カッコ内は本題とは関係ない話が少し長くなりますが言わせて下さい。私はこの数年来、採算を度外視した復刻版の制作をして来ました。伝統的な復刻には根本的に様々な矛盾が横たわっていると思われたからです。しかしそういった私の問題意識は基本的に人から理解される類のものではなかったように思

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活動の転換について

私はかつて摺師をやる中で、また様々な復刻版浮世絵と文献資料に目を通す中で、彫師・摺師の腕や復刻版とは江戸時代当時の浮世絵の再現を、目標や焦点としているものではないと強く感じました。

そしてなぜ復刻版はそのように再現なり得ないのか、つまり何が復刻版とオリジナルの印象を違うものならしめているのか、その要因を作品の上に探した時、絵の具や紙といった素材が違うこと、並びに彫りと摺りの技術水準が高度化し洗練

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歌川広重「六十余州名所図会 阿波 鳴戸の風波」復刻のお知らせ。(現状再現的復刻)

歌川広重「六十余州名所図会 阿波 鳴戸の風波」復刻のお知らせ。(現状再現的復刻)

フランスにある和物雑貨店「Cool Japan」さんとの企画で復刻版を制作したので、今回はその制作について紹介します。
復刻した作品は歌川広重の「六十余州名所図会 阿波 鳴戸の風波」です。

①コンセプト
今回の復刻は私がこれまで紹介して来たものとは全くコンセプトが異なり、「現状再現」となります。「現状再現」とは「現存状態を含め再現する」という意味で、経年劣化や古びを含め再現することを意味します。

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復刻版浮世絵とは何か③―彫師・朝香元晴氏に聞く

 復刻版浮世絵に関わり15年ほど経ちましたが、その間に復刻版に対する誤解に多く遭遇して来ました。その状況がむしろ普通だったとも言えます。そこで「復刻版とは何か」ということをテーマにこれまで記事を書いてきましたが、今回はその3回目になり、彫師の方への取材を行いました。
 復刻版についての体系的な調査は未発達なことから、復刻版を理解して行く上で重要なことは、文献資料を調べること、比較してみるく

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浮世絵版画の復元的復刻について②ー歌川国貞作品を例に

浮世絵版画の復元的復刻について②ー歌川国貞作品を例に

私は元々は摺師をしていましたが、立原位貫氏の仕事に影響を受け、江戸時代の色材や紙といった素材の復元を含めての復刻版制作に取り組んで来ました。
伝統木版画の彫師や摺師の方法論に従って復刻をした場合、結果的に出来上がる復刻版は、木版技術の水準の面でも、色材や紙といった素材の面でも、「改良版」としての性格が強いものとなります。一流の彫師と摺師、一流の美術館や浮世絵研究者の協力の元に作られたとしても、制作

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浮世絵の絵の具ー青花紙③ー「浮世絵における青花紙の使用について」(講演報告)

2022年初春、草津青花紙製造技術保存会主催の「あおばな紙担い手セミナー」の一環として、浮世絵における青花紙の使用について講演をさせて貰いました。
この記事を以て報告します。
(以下、当時の講演内容。)

「今回は浮世絵版画における青花紙の使用について、時系列的にその歴史に沿う形で話をします。
基本的に江戸時代の浮世絵には肉筆と木版画があるんですけど、今回お話しするのは、元々は版本の挿絵から始まり

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復刻版浮世絵とは何か②ー復刻版浮世絵の歴史について

(※この記事は研究誌に投稿し不採択となった原稿を加筆修正したものになります。検証的不備を前提にお読み下さい。)

「復刻版浮世絵の歴史について」

・はじめに

趣味で始めて以来この一五年近く、筆者は制作を中心に復刻版浮世絵(以下、復刻版)と関わって来た。その過程で復刻版は一般的に誤解や偏見をもって理解されているケースが非常に多いと見受けられた。例えば、復刻版にはオリジナル作品と同じような植物や鉱

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浮世絵版画の復元的復刻について   三代目歌川豊国「東海道五十三次之内水口長右衛門」を例に

浮世絵版画の復元的復刻について   三代目歌川豊国「東海道五十三次之内水口長右衛門」を例に

(※この記事は研究誌に投稿し不採択となった原稿を加筆修正したものになります。検証的不備を前提にお読み下さい。)

Ⅰはじめにこれまで数多くの復刻版浮世絵(以下、「復刻版」)が作られて来たが、基本的にそれらは模造的ではあっても復元的ではなかった。
復刻版に関する調査研究は少ないが、文献資料上に散見される復刻版に関する言及、作品の比較観察、及び、彫師摺師からの見聞(例えば優れた復刻版とはどういったもの

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2017年にツイッターアカウントを開設しましたが、色々気持ち悪かったので閉鎖しました。

浮世絵の絵の具ー文献資料目録

江戸時代の浮世絵にはどのような絵の具が使われ、それがどういった色をしていたのかといったことは、当時の作品の再現を目的に復刻をするには、必要な知識であり、又、制作上自然と興味の惹かれるところです。

しかし、復刻版制作の中心を担って来た、版元・彫師・摺師らからなる伝統木版画業界では、そういったことの調査や知識は、積極的な関心の対象では無かったと見られます。
伝統木版画の組織や団体には、江戸時代と同じ

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三代歌川豊国「東海道五十三次之内 水口 長右衛門」ー②作品完成

三代歌川豊国「東海道五十三次之内 水口 長右衛門」ー②作品完成

この1年ほど製作と研究に取り組んでいた、三代歌川豊国の「東海道五十三次之内 水口 長右衛門」が完成しました。
今回は製作工程に関して論文を書くので、情報の公開は当面の間見送ります。

浮世絵の絵の具ーベロ藍の製法について

浮世絵の絵の具ーベロ藍の製法について

はじめに
現在もベロ藍の名を冠した絵の具は市販されており、復刻版浮世絵には一般的にそういったものが使われていますが、(ベロ藍の他、プルシャンブルー、ベレンス、アイレーキなどの市場名称のものが、「ベロ藍」として摺師それぞれによって使われています。)実際の使用に際し、色が美麗過ぎて違和感を生じさせることが多く、例えばベロ藍使用作品として有名な、葛飾北斎の富嶽三十六景のベロ藍色などは、現行のベロ藍単体で

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