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記事一覧

復刻版浮世絵とは何か③―彫師・朝香元晴氏に聞く

 復刻版浮世絵に関わり15年ほど経ちましたが、その間に復刻版に対する誤解に多く遭遇して来ました。その状況がむしろ普通だったとも言えます。そこで「復刻版とは何か」ということをテーマにこれまで記事を書いてきましたが、今回はその3回目になり、彫師の方への取材を行いました。
 復刻版についての体系的な調査は未発達なことから、復刻版を理解して行く上で重要なことは、文献資料を調べること、比較してみるく

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復刻版浮世絵とは何か②ー復刻版浮世絵の歴史について

(※この記事は研究誌に投稿し不採択となった原稿を加筆修正したものになります。検証的不備を前提にお読み下さい。)

「復刻版浮世絵の歴史について」

・はじめに

趣味で始めて以来この一五年近く、筆者は制作を中心に復刻版浮世絵(以下、復刻版)と関わって来た。その過程で復刻版は一般的に誤解や偏見をもって理解されているケースが非常に多いと見受けられた。例えば、復刻版にはオリジナル作品と同じような植物や鉱

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復刻版浮世絵とは何か①

復刻版浮世絵とは何か①

復刻版浮世絵は版元の商品という観点を基準に、その説明がなされることが多いことなどから、学術的な研究が発展している「浮世絵」とは違い、事実に基づいた知識は一般にあまり把握・理解されていないように思われます。そのため本記事では、復刻版浮世絵とは何かを客観的に知ってもらい、そしてその世界に親しんで貰う上で役立つ・参考になるように、復刻版浮世絵について文献資料を交えながら、考察と作品の紹介をしたいと思いま

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浮世絵の絵の具ーはじめにー

浮世絵の江戸時代の絵の具と紙についての動画を作りました
今回公開するのは、その前口上になります

SpecialThanks 菅原広司、末光陽介

【interview vol.2】復刻と復元の違いについて

追記
絵の具や紙の復元は、江戸時代の浮世絵を再現する上で、とても重要な事だと自分は考えていますが、そういった考えは既存の復刻の世界にはありません。
そういう形で復刻をするには版元さんの仕事ではなく、主体的に自分で作品を作っていく必要があります。
このことは伝統木版画の摺師を辞めて、復刻の仕事に取り組んでいる動機の本質にあります。

Special Thanks: 菅原広司、末光陽介、株式会社堀場テ
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浮世絵復元ー絵の具の科学的分析ー

浮世絵に使用された絵の具の判定は肉眼では不可能な部分も多く、オリジナルを再現する上で科学的な解析はとても重要な事になります、が歴史的には「職人の年季」「販売の都合」「団体の権威」といった伝統の元、そういったことはないがしろにされてきました。
今回、株式会社堀場テクノサービスさんに協力を依頼し科学的な絵の具の分析を行い、それを作品製作に活かせることは、現代における浮世絵の再現手法において、新たなそし
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【interview vol.1】絵の具の話と今後の活動について

インタビュー動画の第1弾を公開しました
今年の夏は動画撮影を色々と行いました
順次公開していきます
Special Thanks:菅原広司、末光陽介

勝原伸也ー立原位貫さんについて

勝原伸也ー立原位貫さんについて

今から約6年前、立原位貫さんの復刻を偶然手にした時の感銘が、自分の作るべき復刻の方向性を決定づけました。最近復刻した歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」は、立原さんの復刻を原画として使用していて、その際、これを機に立原さんについて書こうと思いました。(※この記事は、立原さんの復刻から自分が受けた影響について書いたものです。立原さん自身の活動や経歴についてはページ下のリンクを参照下さい。)

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自分の浮世絵の復刻について③ー本命作品と廉価版

自分の浮世絵の復刻について③ー本命作品と廉価版

自分の作品は大きく二つに大別できます。一つは普段サイトで紹介しているもので、もう一つはコストを下げた廉価版です。廉価版は版木は同じですが、絵具や紙は市販の安いものを使い、より手早く仕上げています。この廉価版に関しては昨冬の北斎春画「蛸と海女」を最後に生産を止めています。今後も作る考えはありません。廉価版は業者・他店向けに、確実に売ることを目的としていて、本命作品より遥かに多くの枚数を市場に出してい

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自分の浮世絵の復刻について②

自分は木版画摺師として様々な下請けの仕事をしていますが、夢は材料の復元を通して江戸時代の浮世絵を復刻する事です。
市場に出回っている復刻版浮世絵版画のほぼ全てがオリジナルとは異なる材料で作られています。考えや事情は色々ありますが、材料含め復元するのが本当なんだと思っています。
「復刻」と複製品作りは違います。また老舗の版元とベテランの職人が作れば本質的なものが出来るというものでもありません。(これ

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自分の浮世絵の復刻について①ー制作コンセプト

浮世絵はとても経年変化の影響を受けやすいものです。美術館等で普段目にされる浮世絵は退色やその他の変化を経ており、出来上がった当初の本来の姿とは違います。それは現代では見ることができなくなったものです。
しかし同じ材料と手法を使えばそれらを蘇らせることができます。
「復刻」という作業を通せば、現代では見ることができなくなった本来の浮世絵の姿を見ることが出来るようになります。
ここに復刻の意義があると

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失われた浮世絵の真実を求めて

1987年ー大阪府出身
19才ー本との出会いがきっかけで浮世絵の復刻を開始。
21才ー彫師主催の木版画教室に一年間通う。
23才ー大学を中退し木版画摺師に弟子入り。修行の合間に彫りの稽古を独学で行う。
27才ー江戸の浮世絵を甦らせるべく彫り、摺り、素材における研究を開始。
29才ー独立。下井木版印刷所設立。公式作品の製作と販売を開始。
31才ー摺師を廃業。オランダのShunga Gallery と
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