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浮世絵の絵具ー「紅」工程記録

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浮世絵の絵の具ー紅・補足ー

紅についての補足動画になります

以下は細工紅と本紅の製法上の違いの概要です

紅花餅を灰汁を使って搾り、その液に酸液を加えると赤の色素が結晶化します
そしてその余分な水気を切ったものが細工紅となります

本紅を作る場合は、その水気を切る前の赤の色素が結晶化している液体中に、麻や青苧からなる布を浸し染めつける、という工程が加わります

麻や青苧には「赤色素は定着するが黄色素は定着しない」という性質
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浮世絵の絵の具ー紅ー

追記
江戸時代における浮世絵の原色としての赤の絵の具は、細工紅と本紅(小町紅)の2種あり、どちらも紅花から作られています。この動画はその概要になります。さらなる詳細はこちらをご覧下さい→https://note.com/ukiyoe_shimoi/m/m2032b77d4cc0

SpecialThanks:菅原広司、末光陽介

浮世絵の絵具ー細工紅⑥

浮世絵の絵具ー細工紅⑥

紅は紅花餅という、紅花花弁を発酵後乾燥させたものから、アルカリ液と酸液によって色を取り出します。

これまでアルカリ液には、クヌギとナラの木灰から取れる灰汁を使っていましたが、種々文献には一般に紅の抽出には、藁灰が用いられていたという記述が多く、またこれまで、中々思う色のものが作れなかったのですが、それは使用する灰が原因かもしれないとも思っていたので、今回は藁灰に使用を変更しました。(尚、文献上に

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浮世絵の絵具ー細工紅⑤

浮世絵の絵具ー細工紅⑤

今回の歌川広重「四季の花尽 萩に蛙」に使用した細工紅は、高松豊吉 (T.Takamatsu) 「On Japanese pigments」(1878年刊)に記載された方法を参考に、これまでとは製法を少し変えました。只その文献には全ての事が書かれている訳ではないので、分からない部分は試行錯誤を要し、今回は7度の実験を行いました。以下紹介します。

1紅花餅50gを一晩水に漬ける。(今回は便宜上、紅花

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浮世絵の絵具ー細工紅④

復刻春画「蛸と海女」は紅絵具も自分で作りました。思ったより上手く出来ましたが、細かいデータはまだ確かなものが分からず、詳しくは次回にし今回は概説だけ説明します。
1 紅花餅100gを2日2晩水に浸けます。

2木綿布に紅花餅をくるみ絞ります。黄色の液が出ます。(この絞り汁は使いません。)どれくらい絞れば良いかはまだ掴めていません。

3前日の晩より木灰と水を混ぜて灰汁の準備をしときます。町田市大賀

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浮世絵の絵具ー細工紅③

従来の復刻版で使われる赤絵具は化学合成絵具ですが、江戸時代は紅花から精製されていました。この絵具を「細工紅」「片紅」「彩色紅」と呼びます。

自分は伊勢半本店さんの細工紅をこれまで使用してきました。これは2008年に行われた立原位貫氏の浮世絵復刻プロジェクトに合わせ復元されたもので、現在も製造・販売されていますが、採算面に於いて今の自分には使用が厳しく別の入手方法を見つける必要がありました。(今回

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浮世絵の絵具ー細工紅②

新作用に注文していた細工紅が届きました。細工紅は出来上がったばかりの状態は泥状ですが水分を含んだままだと変色の原因になるので、すぐに使用せず保管する場合は乾燥させます。(とても高価で摺師としての下請けの仕事では使えません。)

下請けの仕事が忙しく、新作の制作ははかどってはいませんが、少しずつ進行はしています。

2018.2.16

浮世絵の絵具ー細工紅①

江戸時代のオリジナルの浮世絵の赤は紅花から作られています。紅花は当時色々な用途に使われており、純度の高いものは口紅に、それより純度の低いものが浮世絵の絵具などに使われました。
浮世絵などに使われた純度の低いものを細工紅といいます。純度が低いといっても高価な絵具で文献には「惜しむこと金の如く」、「紅は親方が摺る」といった記述が見られます。
江戸時代以後化学性顔料がとって代わるようになり永らく市場から

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