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音楽のこと|Thank you for the music

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「わたしの人生を豊かにしてくれてありがとう」の意を込めて、さまざまな音楽にインスパイアされ創作した短編小説やエッセイをお届けします。
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「わたしの人生を豊かにしてくれてありがとう」の意を込めて、さまざまな音楽にインスパイアされ創作した短編小説やエッセイをお届けします。
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(ちなみに“thank_you_for_the_music”は大好きなバンド、bonobosの曲からいただいた名前です)

「ユリイカの呪い」— ユリイカ / 折坂悠太・総特集を読んで —

「ユリイカの呪い」— ユリイカ / 折坂悠太・総特集を読んで —

長い間、わたしの中には、わたしを文芸の道から遠ざけた「ユリイカの呪い」なるものがある。

20年前、ユリイカの中で交わされた会話に大きなショックを受けた。「自死願望ある?」。それは当たり前の感覚として、まるでファッションのように「今日の晩ご飯食べる?」くらいの軽さで交わされていた。

わたしは激しく憤った。こんな会話を平気で交わして、さもカッコイイものかのように紙に載せてばら撒いている雑誌が憎かっ

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【ことばの栞】特別編|詩人・谷川俊太郎さん×ミュージシャン・ASKAさん対談より(2019.3.22)

【ことばの栞】特別編|詩人・谷川俊太郎さん×ミュージシャン・ASKAさん対談より(2019.3.22)

谷川 歌は初めから聴衆との交流がある。そこはすごく羨ましいところですよね。僕は詩よりも音楽の方が上だと思っている人間なんですよ。音楽がいちばん偉くて。

ASKA  なんででしょう。

谷川 意味がないから、音楽には。意味がないところで人を感動させるでしょう。子どもの頃から感動するのは音楽が先だったんですよ。それで詩を書き始めて言葉に出合って、言葉というのは困ったものだとずっと思っているんですよ。

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詩「スペル」

詩「スペル」

言葉は心を越えないものであってほしいと
願ってはいるけれど
ときどきうっかり
越えてしまう

越えた言葉で
傷つけた記憶が
わたしの傷となって
とどまり続ける

あの子に背負わせたもの
たったひとつの後悔が
今、わたしを生かす

全力のわがままと
ひまわりのような顔で
放つ言葉は
「愛している」

頬を落ちるしずくの温もり
ゆるむeyesと漏れる声

小さなてのひらのステージで
ねぇ、いっそ
踊り

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「あなたと話したい」〜昨年後半の、とても幸せな日々について。

「あなたと話したい」〜昨年後半の、とても幸せな日々について。

1.出会ってしまった

音楽家である彼と出会ったのは、去年の夏のこと。彼は音楽にあかるい人たちや、ほんものの言葉や表現を好いているような人たちから一目置かれた存在で、彼の歌や彼じしんを慕う人々が、この世にはたくさんいる。

私は数年まえから、彼の音楽を聴きはじめた。通勤の車の中や、お風呂の中で。怖くなったり心穏やかになったりしながら、ほとんど毎日を彼の音楽とともに過ごした。そうしてとうとう、彼に会

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【ことばの栞】2023/12/20
「歌い手とお客さんっていう感覚よりは、何か一つの課題に取り組んでいる同志のような、そんなふうな関係でいられたらうれしいなあと思っています」
(歌手・折坂悠太さん)