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テュルク諸語的『星の王子さま』収集プロジェクト

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多言語に翻訳されている『星の王子さま』。テュルク諸語ももちろん例外ではありません。各言語の訳本を集めつつ、それぞれの言語に想いを馳せるマガジンです。
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29言語目を追加したるさかい

29言語目を追加したるさかい

ここで言及したことがあったかどうか。大変面白そうな本が最近公刊されました。世の中、面白そうな本が多すぎて困りますね。

共編者のお一人、風間伸次郎先生にはずいぶん長い間お世話になっており(個別言語の文法研究の業界は意外に狭いという説があります)、これは宣伝しておきたいなと。そう思う一方…

28言語というのは、どうやら東京外国語大学に専攻がある言語ということのようですね。

なるほどなるほど。テュ

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今この時期にアンカラにいたかった件

今この時期にアンカラにいたかった件

こちらは今から7年ほど前のツイートになりますが…

トルコに滞在していたころの自分にとっての最大のメリットとは、まさに現地で出版されている書籍や資料が入手しやすかったということでした。出版社の多くがアンカラかイスタンブルのどちらかにありましたから、アンカラで出版された本はあの手この手を使って入手したものでしたし、イスタンブルにも国内からの注文ということで何かと便宜を図ってもらったものです。

で、

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タタール語テキストを眺めた感想

タタール語テキストを眺めた感想

連休も通常営業。羊の歩みではありますが、少しずつテキストを読み込んでコーパスを作る作業に取り掛かっています。先日、ようやくタタール語テキストにめどがつきました。現状の自分の知識でテキストをざっくりとながめているのですが…トルコ語とはやはり全然違うように見えます。

単に文字が違うということではなくて、動詞の活用もちょっとつかみにくい。あわてて、先般公刊された『ニューエクスプレスプラス タタール語』

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『28テュルク諸語で読む「星の王子さま」』、ワンチャンあるで

『28テュルク諸語で読む「星の王子さま」』、ワンチャンあるで

昨晩、おれはひっそりとOCR機能を使ってタタール語版『星の王子さま』(以下、LPP)をテキストデータとして読み取りながら、ふと本棚に目をやった。そこにはさまざまな言語に翻訳されたLPPが並べられているのであるが、その一角にひときわ輝く2冊の本がある。

改めて見返すと、風間・山田(2021)のほうは第26章を前半と後半に分けてトルコ語・ウズベク語をあてている(実際、ここは長い章なのです)。一方で、

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コーパス作成、地味な作業っすわ

コーパス作成、地味な作業っすわ

4月に入ってから、ふと思い立って自前のコーパス(言語データの集合体)を作成しています。今回は、テュルク諸語を文単位で並列させてみたいという意図がありまして、手持ちの例の本をスキャンして読み取りながらテキストとして取り込んでいます。

…のですが、まあこの作業が地味で、そしてまた単調も単調で…
最初は意気込んで取り込むのですが、1時間くらいで飽きが来てしまいますのよね…!

いや~…猫の手を借りたい

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サンテックスさん、すべてはアンタのせいやでェ

サンテックスさん、すべてはアンタのせいやでェ

Twitterで気づいたのですが、今日4月6日はサン=テグジュペリが"Le Petit Prince"を公刊した日だったのですね。以下引用ツイートですが、岩波書店さんは内藤濯氏の日本語訳を最初に出した出版社ということで知られています。

ねえ…。サンテックスの旦那…(「サンテックス」はサン=テグジュペリの愛称ですね。これ豆知識な!)
あんさんはホンマに、えらいもんを世に出してくれはりましたなあ…!

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ノガイ語版『星の王子さま』の刊行を祝福する

ノガイ語版『星の王子さま』の刊行を祝福する

本日のお題は、「#私のコレクション」です。以前から拙文を読んでくださっている方には自明であろう、アレの話。

1. 多言語『星の王子さま』(LPP)蒐集当初は自分の専攻とする言語だけ所持していた『星の王子さま』(原題"Le Petit Prince, 以下本文ではLPPと略記します)、その後自分の興味関心の対象がトルコ語やアゼルバイジャン語だけでなく、テュルク諸語全体に広がっていきました。

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また一つ、トルコで訪問したい場所ができてしまった

また一つ、トルコで訪問したい場所ができてしまった

ご存じの方も多いと思われますが、日本ではかつて箱根に「星の王子さまミュージアム」があったものの、先般惜しまれながら閉館となってしまいました。

開館しているうちに一度でも行っておいたらよかったなと思うばかりですが、世界にもいたるところに『星の王子さま』(以下、LPP)に関係する博物館があるようです。

日本の近場ですと、済州島にあるのだそうです(こういう情報はLPP関連ウェブサイトに行くとすぐ見つ

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インクツボ社の思うツボ(とかいう誰うま事案)

インクツボ社の思うツボ(とかいう誰うま事案)

昨年の11月末でしたか、フランスの通称「クロワッサン」諸語版『星の王子さま』(以下、例によってLPPと略記します)が25冊まとめ買いで100ユーロのクリスマスセール!という広告を見てしまったものですから、フランスの諸言語とはほぼ無縁の人生を送っていたはずの不肖わたくしはつい魔が差して在ドイツのLPPといえばここというべき出版社、Edition Tintenfaß(Tintenfaßとはドイツ語で「

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【テュル活】ノガイ語版『星の王子さま』が刊行予定とか聞いたら眠気飛ぶよねフツー

【テュル活】ノガイ語版『星の王子さま』が刊行予定とか聞いたら眠気飛ぶよねフツー

今朝起床しまして、メールボックスを覗いたらもうですね、このニュースがEdition Tintenfassさんから飛び込んできたわけですよみなさん。ヤバいでしょ…ノガイ語ですよノガイ語。ノガイ語版『星の王子さま』!!

で、メールにはすでに書影の画像も添付されてありましてね。

なるほど。最初のКишкей が「小さい」くらいの意味をあらわす形容詞でしょう。次のханが「王」、でбаласыが「子ど

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『星の王子さま』ドキュメンタリー番組を見ての感想など

『星の王子さま』ドキュメンタリー番組を見ての感想など

昨晩、久しぶりに見たいテレビ番組があったのでそれを視聴していました。

期待通り、大変面白い内容でした。同書の多言語翻訳に時間とお金を使っている身からすると、番組の最後の一言にぐさっときましてね。正確な言葉はメモしていないのですが、同書が500以上の言語に翻訳されていることを紹介したうえで、でもその数字が好きなのは大人のほうだからね、という一言。何冊集めたかとか、今後何冊まで増えるかとかそういうこ

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【テュル活日記】朝からヤバいものを見てしまった

【テュル活日記】朝からヤバいものを見てしまった

イランに行ってみたいという話ばっかりしていたような気がする1月ですが、タブリーズあたりで話されているアゼルバイジャン語のことを考えているうちに、待てよイランのテュルク系言語といえば、カシュカイ語(カーシュガーイー)もあったなそういえばということにふと考えが及びまして。で、トルコで以前詳しい文法解説がついている、ラテン文字転写版の翻訳書ならすでにトルコの書店から入手できていたのです。ですがね…

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今年は何冊増えるやら

今年は何冊増えるやら

ここ数年の数少ない楽しみの一つ、LPP蒐集。先日思うところありまして、何冊持っているのか確認しようと思いまして、手作業で数えてみました。

我ながら、日本に本帰国してから加速しているとはいえよくぞここまで増やしたものだと思います。このうちテュルク諸語以外はほとんど本文すら目を通していないのですが、まあもうこれはみなさんがポケモンを集めるような(たぶん)感覚に近いのだろうと思います。コンプリートは難

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『星の王子さま』で読むクムク語(3)

『星の王子さま』で読むクムク語(3)

さてクムク語訳LPPによる言語紹介記事も、あまり長引かせる意味はないよなあと思いつつ、一度やりだした以上は最後までやり遂げることも大事だろう(我ながらいいこと言うたりましたわ)ということで、第2章の各文の分析を続けていこうと思います。

前回までの記事は以下の通りです。

これはクムク語に限らず、トルコ語以外の言語で気になっている現象が入っている構文です。何がといいますと、「ある/ない」のように存

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