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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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2024年2月の記事一覧

文学からパレスチナ問題を知る④~「ハイファに戻って」

文学からパレスチナ問題を知る④~「ハイファに戻って」

前回はこちら。

 パレスチナを代表する作家ガッサーン・カナファーニーを紹介する本連載は、今回が最後です。最終回は、1969年発表の「ハイファに戻って」を取り上げます。
 作品を紹介する前に、前提となる知識を説明しておきましょう。

「ハイファに戻って」の背景知識 ハイファは、現在のイスラエル北部、地中海に面する港町です。アラブ人(パレスチナ人)の土地でしたが、1948年にイスラエル領となりました

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【書評】松尾謙次『日蓮』(中公新書)

【書評】松尾謙次『日蓮』(中公新書)

 日本史の教科書の鎌倉時代の章では、新しい仏教の開祖と宗派に字数が割かれています。
 法然の浄土宗、親鸞の浄土真宗、一遍の時宗、道元の曹洞宗、栄西の臨済宗、日蓮の日蓮宗(法華宗)……という組み合わせを嫌々暗記した人も多いと思います。

日蓮の激しい他宗批判 その中でも、日蓮はかなり強烈な個性を放っています。日蓮は、法華経こそ仏の最上の教えであるとし、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えれば救われると説き

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文学からパレスチナ問題を知る③~「太陽の男たち」

文学からパレスチナ問題を知る③~「太陽の男たち」

前回はこちらです。

 1963年発表の「太陽の男たち」は、現代アラブ文学を代表する傑作として高く評価されています。

パレスチナとクウェート「太陽の男たち」は、イラク南部の都市バスラから、クウェートへの密入国を試みる三人の男たちの物語です。

 イギリスの植民地であったクウェート(1961年独立)は、真珠の生産が主力産業でした。しかし、御木本幸吉が真珠の養殖に成功するとクウェートの経済は打撃を受

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文学からパレスチナ問題を知る②〜「路傍の菓子パン」

文学からパレスチナ問題を知る②〜「路傍の菓子パン」

前回はこちらです。

 パレスチナを代表する文学者であるガッサーン・カナファーニー作品の日本語訳は、河出文庫の「ハイファに戻って/太陽の男たち」に7編が収録されています。今回は、同書の収録作品のうち、「路傍の菓子パン」という短編を紹介します。

ダマスカスでの生活 1948年、故郷パレスチナを追われた難民たちは、近隣の国々で暮らすことになりました。ガッサーン・カナファーニーの一家は、シリアの首都ダ

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