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せーかつ

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2022年9月の記事一覧

月明かりとチョコレートの夜

月明かりとチョコレートの夜

今夜は、
ほんとうに綺麗な月が
空に浮かんでいます。

ベランダに椅子を二脚とサイドテーブル、
小さなランプを用意したら
アーモンドチョコレートと赤ワインを
持ってきました。

「乾杯。」
軽くグラスを合わせて
夫婦ふたり、
月明かりの下の
ささやかな夜会のはじまりです。



私はさっそく、包装を解いて箱を開き、
敷き詰められた楕円体のチョコレートを
ひと粒、取り出しました。

ツルンと滑らか

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赤 い 花 を た ず ね て

赤 い 花 を た ず ね て

まぶしい赤と
ハートを5つ、円に繋げたような花びらが
とびきり可愛い
花の苗を見つけました。

背丈はまだ十数センチほどで
ふっくらした蕾もいくつか付いています。

そこは、園芸店の店先です。

どこか見覚えのあるお花、と思い返して
浮かんだのは
学生のころ、通学路の途中にあった
一軒のクリーニング屋さんでした。



家の一階に店を構えている
クリーニング屋さん。

くすんだ青のオーニングに

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長月に 揺れる 風鈴のこと

長月に 揺れる 風鈴のこと

まだ残暑の厳しい九月のはじめ。
灼けるアスファルトの上を
先へ先へと急ぎ歩くなか、
信号待ちに
足を止めたときのことでした。

凛、、凛、、、

どこからか、懐かしい、涼やかな音がします。
日傘を下ろして、あたりを見廻すと、
道沿いの家の軒先に
綺麗な風鈴が一鈴、
下げられているのが見えました。

海月のように丸く
下の方だけ少しすぼめた外見は
縁に向かって青いグラデーションの入った
薄手のガラス

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自分の感受性くらい

自分の感受性くらい

窓を網戸にすると
足先へ、僅かにひんやりした空気が
流れてきました。
つい先日までのハッキリした夏が
少しずつ姿を消して
秋の気配が滲みはじめた
過ごしやすい夜です。

リィン、リィンと
遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。
さざ波のような、透明な音が
耳当たりよく吹き抜けていきます。

思うようにいかないことばかりで
心が埋もれそうになる毎日。

足元に扇風機のよわい風をあて、
ソファの背もたれ

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