【日記】『Jリーグは僕の夢』~Jリーグ30周年を受けて~

2023年の5月15日で30周年を迎えたJリーグは、僕にとって夢の舞台だ。

Jリーグの存在をハッキリと認識したのは、2009年。J2に昇格したばかりのファジアーノ岡山の試合を桃太郎スタジアム(現シティライトスタジアム)に見に行った時のことだった。夢パス(※小学生以下の子どもは無料で観戦できるチケット)を首に下げてメインスタンドに座ると、ピッチではファジレッドのユニフォームを着た選手が躍動していた。岡山県出身で10番を背負う川原周剛選手、正確な左足のキックでチャンスを演出する小林優希選手、勢いよくゴールに向かっていく背番号11の喜山康平選手を見て、「あんなふうになりたい!」と強く思ったことを覚えている。初めて自分の中に憧れの気持ちが芽生えたのが、ファジアーノとの出会いだった。

そこから将来の夢が“ファジの選手”になった。スタジアムでは自分のプレーに生かすために選手のプレーを観察し、家では壁に向かってキックとトラップの練習を繰り返す。プレーのコツが書かれた本も読んで上達を目指した。

「もっともっとうまくなれる」と信じてサッカーに打ち込んできたけど、中学生のときに非現実的な夢だと思い知らされる。

確か中学2年生の時だったと思う。サンフレッチェ広島のジュニアユースと練習試合をする機会があった。当時はファジのジュニアユースと対戦したことがなかったから、Jクラブの下部組織に所属する選手の実力は未知数で、腕試しできることを楽しみに吉田サッカー場(※広島のトップチームも使用する練習場)に行った。

しかし、彼らのレベルは想像を絶するものだった。とにかくキックとトラップがうますぎる。足とボールが磁石でくっついているくらいに正確だった。1タッチ、2タッチで素早くパスを回され続ける中、僕たちはボールを奪いに行くも、全部かわされる。技術が高すぎて全くミスをしないから、ボールがコートの外に出ない。ずっと相手ボールの時間が続き、体力がどんどん削られていく。スタミナには自信があったけど、頭がくらくらするくらいに走らされる。本気でプロを目指す選手たちは違った。さらに試合後には一学年下のチームと対戦していたことが判明し、絶望した。

衝撃を受けた広島のジュニアユースの選手でも全員がプロになることはできない。プロへの門は、とても厳しくて狭いことを肌で感じ、中学生ながら将来はファジの選手になるという夢が叶わないものだと悟ってしまった。

現実を受け止めてから、ファジアーノは応援するクラブになった。中学、高校は休みなく土日にサッカー部の活動があったからスタジアムに行く回数が激減し、スカパー!を契約できなかったから、夕方のテレビニュースで結果を確認するという接し方が続いた。

高校3年の夏に進路のことを考える中、受験勉強の息抜きに木崎伸也さんの『サッカーの見方は一日で変えられる』を読み、自分の観戦体験が劇的に変わったことで、サッカーライターになりたいという夢を持つようになった。

2019年、大学進学を機に生まれ育った岡山を初めて飛び出した。バイト代でDAZNを契約してファジアーノの試合を毎試合欠かさずに見るようになった。大学卒業後にサッカーのメディアの人間として働くところから逆算して、ファジアーノの試合のことをnoteに書き始めたのも、この頃だった。

初めて県外で一人暮らしをするようになり、ファジアーノと物理的に離れた。住んでいたところは、家から約30分でギラヴァンツ北九州のホーム戦を見に行けるし、レノファ山口の試合も電車に乗って見に行くことができた。しかし、いつも心の中にあるのは、初めて憧れの気持ちを抱かせてくれたファジアーノだった。北九州や山口のホーム戦をスタジアムで見るよりも、ファジアーノをDAZNで見る方を優先し、北九州や山口、長崎でのファジアーノのアウェイ戦も見に行った。

サッカーライターという夢を持ちながら、ファジアーノと向き合うことで、“ファジの番記者になりたい”と思うようになっていった。そして、エルゴラッソの番記者を務める寺田弘幸さんとの出会いがあり、大学を卒業した現在は、ありがたいことにファジアーノの取材に携わらせていただいている。

9歳の時とは形が違うけど、23歳になった今もファジアーノは僕にとって夢だ。ファジアーノの番記者になって、チームのことをしっかりと文章で伝えたい。悲願のJ1昇格の瞬間に立ち会って、チームの歓喜の声を届けたい。また、“子どもたちに夢を!”の理念に影響を受けた僕が、今度はファジアーノが子どもたちに夢を与える手助けをしたいとも思っている。

まずはファジアーノの番記者になるという夢を叶えるために、もっともっと頑張らないと……。

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難波拓未|サッカーライター
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