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大ヒットクルマ列伝〜色の記憶
大ヒットとは、単に沢山売れたのではなく、その時代に生きた人々の心を打ったモノ
に贈られる称号である。
チャットGPTに「世界中で一番人気のクルマの色は?」と尋ねると意外にも「白が一番」と答える。「イタリアは違うだろう、赤じゃないのか?」と問うと、「いえ、イタリアも白が一番人気です。ただ再塗装の人気色は赤です」とお答えになる。AI様が言うことには逆らえないが、白は人気色というわけでなく単に無難で汚
大ヒットクルマ列伝〜マツダの魂
大ヒットとは単に沢山売れたのではなくその時代に生きた人々の心を打ったモノに贈られる称号である。コスモスポーツは世界初の実用量産ロータリーエンジンをフロントミッドシップに搭載した2座スポーツカーとして1967年に登場した。昭和生まれの元若者は“帰ってきたウルトラマン“の地球防衛庁MATのパトロールビークルを思い出すはずだ。白いボディーに赤いV字のデカールだけのほぼ改造なしで未来感覚の特撮用のクルマと
もっとみるさまよふ魂〜絵画完結編
気がつくとルーブル博物館の床に投げ出されていた。「何だよあのシワひげ爺さん乱暴に連れてきやがって」。頭がふらつき腰にも力が入らず大の字で寝たまま天井をボーッと見ていた。暫くすると、誰かの視線を強く感じて、ギクシャクと上体を起こしてその主に焦点を合わせた。「貴女でしたか。相手の心は見透かしているのに、自分の心は決して読ませない意地の悪い貴女に、また向き合うのが正直しんどいと思っていました」
レオナ
さまよふ魂〜絵画編その八
セーヌ川沿いの古い宮殿のオレンジ温室であったオランジュリーはモネの『睡蓮』の連作を収めるために美術館に改造された。お目当ての睡蓮を見る前にどうしても見ておきたい一枚の絵がある。「モンマルトルのサンピエール教会」はパリで生まれ育ったユトリロ 31歳の作品である。サンピエール教会はモンマルトルの丘のサクレクール寺院の隣にひっそりと佇む。12世紀に建てられたロマネスク様式のこの古い教会をユトリロ は生涯
もっとみるさまよふ魂〜絵画編その七
昔の話である。小学校に入ったころ当時流行り出した文化センターで絵画と音楽の教室に通っていた。そこにはバレー教室もあり、空いた扉から中を覗くとフワッと白いフリルのスカートに白いタイツの女の子が踊っていた。誰かが言った「足の親指だけで立たされて、血まみれの親指の爪が剥がれそのあと鉄のように硬い爪が生えてくるとああやってつま先でクルクルと回れるのさ」
僕は踊る女の子のトウシューズが赤く染まってないか心配
さまよふ魂〜絵画編その六
オルセー美術館はかつては駅舎で、大きなかまぼこ屋根の下に10線以上のホームが敷かれていた。2月革命の1848年から第一次世界大戦1914年までの作品はここオルセーに収められ、それ以前の作品はルーブル、それ以降はポンピドゥセンターにと時代分けされている。さすがは芸術の都パリである。
暗い色調の三人の農婦が腰をかがめて何かを拾っている。その背景には、うず高く積まれた地主の小麦の山。旧約聖書には“穀物
さまよふ魂〜絵画編その五
フランス革命のドラマチックなワンカット「マラーの死」はベルギー王立美術館に収められている。1792年9月オーストリア軍の侵攻でパニックとなったパリ急進派は聖職者を含めた囚人1万数千人を虐殺した。翌年1月ルイ16世の処刑によりフランス革命は完結する。その中心人物の一人がマラーである。ジャーナリストでもあるマラーは皮膚炎を癒す為、浴槽に浸かりながら仕事をしていた。そこに9月の大虐殺を糾弾する穏健派の美
もっとみる大ヒットクルマ列伝〜トヨタMark II 六代目
大ヒットとは単に沢山売れたのではなくその時代に生きた人々の心を打ったモノに贈られる称号である。今回は1986年発売のトヨタMark II 6代目。端正なグリルから後端へメリハリを程よく丸めた伸びやかなフォルム。ひと世代前に流行したカリーナEDにも通じるフォードアハードトップ風ながら十分な室内高と広さを兼ね備えた豪華な室内。フォーバルブツインカムのスリムで軽量、滑らかな6気筒1G-EUをベースにスー
もっとみるさまよふ魂〜絵画編その四
サンパウロにある通称MASP(マスピ)は4本の赤い柱に宙吊りにされた不思議な美術館。絵画もガラスのパネルに吊るされて浮いているし、何より南半球地の果てにどうしてこんなたくさんの名画があるのかにまた驚く。
「もし女性の乳房と尻がなかったら私は絵を描かなかったかもしれない。」と、ルノワール。印象派の巨匠は1881年にイタリア旅行を契機にラファエロやアングルなどの古典絵画への傾倒を深めるが、やがて暖か