見出し画像

デイス in ジャカルタPart2


現場のおじさんに最初に言われた。インドネシア語で覚えておくべきはマチェットとバンジルの二つのだけ。確かにこの言葉は、繰り返し身体で覚え染み付いた。

マチェットは渋滞。ジャカルタは東西25km南北25Kmの海岸沿いの平野に人口950万を抱える東京都に次ぐ世界第2位の人口密集都市で、20年後には東京の人口を抜くと言われている。一昨年の新型コロナの外出制限下でおっとできちゃった予定外妊娠がなんと40万人。去年の元旦に1万二千人の新生児が生まれた。少子化日本と較べると羨ましく若くて元気なお国柄。急速な経済発展と、歩くのが大嫌いな国民性と相まってモータリゼーション真っ只中。ジャカルタだけで200万台の自動車が、バイクに至っては700万台のクルマが溢れている。早朝は20分で行く会社の帰りが夕方のラッシュ時に引っ掛かると2時間以上かかる。幸い運転手がいるのでリヤシートで寝ていればいいのだがウトウトして目を開けても殆どさっきの場所から進んでいない。それを何度も繰り返すうちにめげてきて、身体は固まりやがてシートの上で身悶えし始める。

バンジルは洪水。ジャカルタは赤道直下の都市ながら一年を通じて朝24°で昼間32°と日本の極寒灼熱地獄から較べれば快適である。乾季は殆ど雨は降らず11月から3月の雨季に入ると特に夕方の雨は半端なく激しく降る。そして毎年2、3度一日中、土砂降りが続くと街中で同時多発テロのように洪水が起きる。ジャカルタは地下水の汲み上げ過ぎで地盤沈下が著しい。海側の北部は25cm、中央部でも2cmづつ毎年沈んでいる。温暖化による海面上昇もあるだろう。それに何よりも排水インフラがレレレのおじさんが驚くほどお粗松くんである。川はゴミで汚染され排水管や排水溝を塞ぎそして辺り一面は雨水の海原と化す。しかしジャカルタピープルはめげない。子供は皆水没した家の周りで嬉々として泳ぎまわり、急造イカダで人を運ぶ商売を始めたり、溢れた川魚を網で取り大漁だとニコニコする大人達。逞しい南国の楽天の人達の合言葉はティダアパアパ(なんともないさ)!

竜宮城インドネシア説は広く浸透している。浦島太郎が助けた亀はインドネシア人でインドネシアに招かれた太郎は南国の楽園で乙姫にうつつを抜かし時の経つのを忘れてしまう。そして日本に帰ってきた時にはすっかり老人になってしまっていた、という身につまされる話である。モスラの唄はインドネシア語であり、インファント島のザ・ピーナッツは双子のインドネシア姉妹の設定である。ついでにウルトラマンティガのティガはインドネシア語の三を意味し、聖なる数字でもある。彼は光の国インドネシアに何らかの縁がある聖なるウルトラの三男坊なのである。

日本からは遠く離れていても何か共感できる心情を持ち、日本人も本来持っていた清貧の中のささやかな楽しみや連帯、災難に対する我慢強さ、何とかなるさ精神などを想い起こさせてくれる国、それがインドネシアなのである。

Part3に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?