シン映画日記『シングフォーミー、ライル』
ユナイテッドシネマ浦和にてハビエル・バルデム主演のファミリー・ミュージカル映画『シングフォーミー、ライル』を見てきた。
児童文学作家バーナード・ウェーバーの児童文学「ワニのライル」を映画化したファミリーミュージカル&コメディ映画。
マジシャンのヘクターはある日ペットショップで綺麗な声で歌うワニを見つけ、早速買い取る。ヘクターはワニをライルと名付け、自宅で歌と踊りのレッスンをするが、舞台の本番でライルは大観衆の前であがってしまい歌えず大失敗に終わる。
「ワニのライル」と言われても日本では馴染みがないし、売り文句には「『グレーテスト・ショーマン』の音楽スタッフが贈る〜」とあって、一番メジャーなキャストが『ノー・カントリー』のハビエル・バルデム、『俺たちフィギュアスケーター』の監督コンビに『ジョニー・イングリッシュ』シリーズの脚本と何にも定まりがないワニのぬいぐるみファミリー・ミュージカル&コメディの『シング・フォー・ミー、ライル』。あがり症のワニのライルといじめられっ子の少年と売れないマジシャンが織りなすミュージカル&コメディで、東洋系や黒人など多民族を交えながらポリコレ特化でもなく、ワニのぬいぐるみもミュージカルもいじめられっ子学園ライフのどれにも振り切れていない中途半端さが目立つが、不思議と最後まで見られるマジックと化学反応を見たような映画だった。
冒頭のハビエル・バルデムが演じるマジシャンによるショービズの世界で行くかと思いきや、台湾人の義母を持ついじめられっ子転校生の話がスタートし、引っ越し先のアパートのロフトで見つけたワニと意気投合しながら、この家族に再びマジシャンが合流するという流れで展開。
一応の売りは歌うワニとそのワニの舞台での失敗からの再起とこのワニを助けようとするいじめられっ子の勇気の数々。ワニと少年の仲良くなるきっかけもゴミ捨て場での拾い物パーティーだったり、そこから家族らと馴染むシーンも強引。ハビエル・バルデムやワニや少年の歌はそこそこで、これから盛り上がりそうでなかなか盛り上がらず、最後になんとか見せ場がある、というなんとももどかしい展開。
いじめられっ子が黒人の少女と仲良くなるのがTikTokのような動画アプリだったり東洋系や黒人などがちょっとめだつ多様性要素や、一見ショービズよりも家族なショービズ/見世物否定な流れを見せながらクライマックスは結局オーディション番組を持ってきたり、一貫性が何一つなくグチャグチャな展開だが、それが故に飽きずには見れるという不思議な映画。
そもそも、キャスト&スタッフ構成からまとまりはない。『ノー・カントリー』のハビエル・バルデムに『クレイジー・リッチ!』のコンスタンス・ウー。監督は『俺たちフィギュアスケーター』のコンビに『ジョニー・イングリッシュ』シリーズの脚本、音楽担当は『キングスマン』シリーズの人で、楽曲担当が『グレーテスト・ショーマン』のコンビなんだけど、このコンビの一番目立つ仕事派『ディア・エヴァン・ハンセン』。この中で多様性とファミリーミュージカル要素から「『グレーテスト・ショーマン』の音楽スタッフが贈る〜」という売り文句にしたのかな。
仲良くなるきっかけから脱走劇にしろクライマックスにしろ大半が強引だし、そもそもミュージカルの主演にハビエル・バルデムというキャスティングから日本版声優の大泉洋という抜擢も強引なんだが、不思議と飽きずに見ていられはする映画を見る者がマジックにかけられるごった煮ファミリー映画。時間とお金と忍耐とコオロギを食べられるぐらいの勇気がある人なら多分OK。