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技術史

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物作りの歴史・様々な身の回りの製品の歴史を簡潔に紹介します。
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2023年2月の記事一覧

【医療機器の歴史】心電図

【医療機器の歴史】心電図

昔から、生き物の中には電気的現象が存在することは知られていた。(電気ウナギなどは、数100Vにも達する起電力を発生する能力を持っている。)
とはいえ、人体内の、しかも心臓が電気で動いているという事実は、20世紀になるまで明らかにされなかった。
このことを発見したのは、オランダの生理学者アイントーフェンである。
心臓が電気で動いていることを証明するのは、大変困難なことであっただろう。心臓から出ている

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【医療機器の歴史】麻酔の歩み

【医療機器の歴史】麻酔の歩み

麻酔の起源は、人それぞれ考え方が異なる。
18世紀、吸入すると陽気なって笑い出す気体があることは知られていた。19世紀初頭、アメリカでは笑気ガスが若者の遊びに使われていた。歯科医師のウエルズは、ガス遊びをして怪我をしている若者が自分の出血に気づかないでいるのを不思議に思った。(今考えると非常に危険な遊びだ!!)

彼は、笑気ガスを使い、初めて自分自身の無痛抜歯を試して成功したといういわく付きの人物

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【医療機器の歴史】聴診器

【医療機器の歴史】聴診器

1800年代フランス人医師ラエネックが作り上げた聴診器は、現在でも全世界で使われ続けている、すごい発明品だ。

子供の竹筒のおもちゃがその発想の原点と言われている。おそらく、竹筒を使って内緒話でもしている遊びの光景を見て「音の伝達」に利用できると考えたのであろう。無心の子供の遊びを見て、心音や呼吸音を聴くことを思い立った、彼の閃きはすごい。ただ、なんとなく日常的な風景を見ているだけでは、そこから何

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【医療機器の歴史】驚愕!!血圧の発見

【医療機器の歴史】驚愕!!血圧の発見

18世紀のイギリスでヘールズという牧師が、血圧計を作った。血圧計といっても血圧を測るのを試みた程度というイメージだ。
ヘールズは牧師でありながら、何事にも興味を持っていたのであろう1727年に「植物静力学」という著書のなかで、植物が水分を吸い上げることに興味をもち、それが蒸散につながることをあきらかにした。樹木はどうして水分を吸引するのか、その吸引力はどのくらいなのかということに疑問をもった。

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【技術史】超伝導とは

【技術史】超伝導とは

超伝導は、病院でのMRI検査やリニア新幹線などに使われている技術であり、物質を低温にすると永久に電流が流れ続ける現象を使っている。

超伝導とは、ある物質の温度を下げて行った時に、直流電気抵抗が0Ωになる現象をいう。オランダのライデン大学のカメリンオンネスは、1908年にヘリウムの液化(沸点-269℃)に成功するとともに、極低温でのさまざまな材料物性を調べた。最初にプラチナと金の10K以下での電気

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【医療機器の歴史】血液が酸素を運んでいる

【医療機器の歴史】血液が酸素を運んでいる

19世紀の中頃、ドイツの医学・物理学者マイヤーは、東南アジアへの旅行中に熱帯で生活するヒトの血液が普通より赤いことに関心をもった。彼の発想の起点は、環境の温度と血液の色に何らかの関係があるのではないか、ということであった。そして、彼の著書「血液ガス」の中で血液中に存在する酸素の働きについて考察し、「血液が酸素を運んでいる」ことを発見した第一人者とされている。
 現代では「血液が酸素を運んでいる」こ

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【医療機器の歴史】ロバート・フックの偉業

【医療機器の歴史】ロバート・フックの偉業

ロバート・フックは、「フックの法則」で知られる物理学者で天文学者である。しかし、彼は医療の分野でも偉大な発見をしている。
フックはヒトの呼吸というのは「肺の動き」が重要なのではなく、「肺に空気が流れる」ことである。という主張をしている。「肺に空気さえ流れれば動物は生きていける。」と主張した。そのための実験が、生きた犬の肺に穴をあけ、そこからふいごで空気を送り込むテストであった。単純なふいごだったに

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【医療機器の歴史】血液循環発見の衝撃 ~ハーヴェイ~

【医療機器の歴史】血液循環発見の衝撃 ~ハーヴェイ~

 「血液は循環している」この事実を発見したイギリスの学者ハーヴェイの名を知っているだろうか。「地球は回っている」と説いたコペルニクスの名は知られているのに、「血液の循環」という画期的な発見はあまり有名ではない。

 それまでは、人間の体内で生成された血液は体内で消費されると信じられていた。心臓から出た血液が体内を巡って帰ってくるなど、だれも考えたことがなかった。

 ハーヴェイの血液循環説は、「地

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【医療機器の歴史】解剖を通して ~ガレノス~

【医療機器の歴史】解剖を通して ~ガレノス~

古代ギリシャの哲学者で医学者のガレノスは、アリストテレスの影響を強く受け継ぎ、医学をさらに進歩させた。サルやブタを使った解剖が医学の基礎になる重要性を説いた。彼の功績は大きい、例えば心臓の弁を見つけ、動脈と静脈の区別をしたことが著書に記されている。また、7個の神経系も区別している。
 心臓に関しては、間違った理論を展開しているところもある。ガレノスは、肝臓で新しい血液が生成され、そのほとんどは体内

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【医療機器の歴史】心臓機能の重要性 ~アリストテレス~

【医療機器の歴史】心臓機能の重要性 ~アリストテレス~

ヒポクラテスの死後すぐに誕生した哲学者アリストテレスは、「動物誌」に、人体の生理について詳しい記述を残している。注目されるのは、すでに動物の心臓機能を重視していたことである。複雑な生理機能の中でも、その中心が心臓にあることを見抜いていたのかもしれない。
 心臓が血液を送り出していることさえはっきりわかっていなかった古代に、なぜそのような知見が得られたのか非常に不思議である。
 確かに、人は興奮すれ

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【医療機器技術】工学から見た人体 ~ヒポクラテス~

【医療機器技術】工学から見た人体 ~ヒポクラテス~

昔の人は、自分の体をどう見てきたのだろう。「生きている」という事実を何を根拠にして確認してきたのか。人類の歴史の中で、多くの哲学者、科学者達が「生命」について疑問を持ち、解決してきた。
医学の発端は、紀元前の古代ギリシャのヒポクラテスであると言われる。彼こそ、人類に医学という概念だけでなく、衛生という考え方を導入した先駆者と位置付けられる。健康と病気とを科学的に分析して、いわゆる「医術」を確立した

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【技術史】胃カメラ

【技術史】胃カメラ

古くから医療現場には、「体を切り開くことなく、食道や胃などの消化器官を観察・診察したい」というニーズがあった。
1863年、ドイツの医師クスマウルは、よく磨かれた金属管を鏡として消化器官の内部を直接観察する、胃鏡なる器具を考えた。まさしく「内視鏡」というべき技術の誕生だ。
長さ47cm、直径1.3cmのまっすぐな金属管を利用した胃鏡、そんなものを胃の中に入れられる人はそうはいない。クスマウルは奇術

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