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技術史

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物作りの歴史・様々な身の回りの製品の歴史を簡潔に紹介します。
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記事一覧

ワールド・ワイド・ウェブ

ワールド・ワイド・ウェブ

今やなくてはならないウェブの世界だが、誰がどういう思いで、作ったのでしょう!?

ティム・バーナーズ・リーは、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)でソフトウェアエンジニアとして働いていたときに、ウェブを作りました。バーナーズ・リーはCERNを歩き回っていて、廊下を伝わっていくニュースの速さに着想を得ました。情報が集まるそういう場所では、人々は会話を小耳にはさんだり、掲示板に貼られたチラシを読んだ

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【技術史】ガソリン事故がきっかけでうまれた~自動車~

【技術史】ガソリン事故がきっかけでうまれた~自動車~

自動車が人間の歴史の中に登場して約1世紀、ほとんどの人間が自動車なしでは生活できなくなってしまっている。この自動車はカール・ベンツという一人の機械好きのドイツ人によって発明された。

ベンツが自動車を考え出すきっかけは、当時めずらしかった自転車だった。当時の自転車は、ペダルが直接前輪についていたため、乗りにくいばかりか、前に進むために大変な力が必要だった。

そこでベンツは自転車にエンジンを取り付

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魔法瓶のルーツは実験器具

魔法瓶のルーツは実験器具

熱はどのように伝わるのでしょうか?物質は高温になると分子の動きが活発になり、低温になると動きが大人しくなります。熱の移動は活発な動きの分子がぶつかることにより高温から低温に伝わります。

イギリスの物理学者、ジェームズ・デュワーは、分子がほとんどない真空に近い状態であれば、熱は伝わらないと考えました。そこで、1873年にガラス容器を2重構造にして、その間を真空にしたデュワー瓶を発明しました。
デュ

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【技術史】注射

【技術史】注射

その昔、薬といえば飲んだり塗ったりするものでした。17世紀にイギリスの医師、ウィリアム・ハーベーが「血液循環の原理」を発見すると、体中に張り巡らされた血管の中の血液が流れることで、体の各部分が必要としているものが届けられ、いらないものが回収される、ということが世に知られました。

飲んだ薬が胃や腸から、塗った薬が皮膚から吸収されるのを待つよりも、血管などから直接体内に入れたら効果が早いという考え

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【技術史】Bluetooth

【技術史】Bluetooth

Bluetoothという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
Bluetoothの特徴は、免許がいらず、誰でも手軽に使えること。消費電力が小さく、小型化でき、一度ペアリングすると記憶され、あとは電源を入れるだけで接続することができる。これらの特徴から様々な小型機器に組み込まれています。

1990年代、通信規格は乱立していました。それらを統一する規格として登場したのが“Bluetooth”

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【技術史】鉄筋コンクリート

【技術史】鉄筋コンクリート

一見、コンクリートは頑丈に見えるが、欠点がある。一般的にコンクリートの圧縮強さは200kg /  である。つまり、コンクリートは圧縮に強いが、引っ張りに弱い。このためコンクリート単独では、梁や柱などの部材に利用しにくい。

1867年、フランスの造園師ジョセフ・モニエはセメントモルタルの植木鉢を鉄線で補強する発明をし、現在の鉄筋コンクリートへと結びついていく。
鉄筋コンクリートは圧縮に強いコンクリ

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【技術史】クレーン

【技術史】クレーン

世界最高のタワー東京スカイツリーが、2012年に開業。この建造物は、クレーンの活躍なしには実現しなかっただろう。クレーンは巨大建造物をつくる上で、必要不可欠な機械だ。(クレーンは、鶴の意味である。)
その歴史は古く、16世紀の画家ピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」をよく見ると、工事中の様子が緻密に描かれている。塔の3段目にはクレーンが設置され、男たちが踏み回している様子が描かれている。

さら

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柱のない構造(東京ドーム)

柱のない構造(東京ドーム)

ドームはアーチを球面にした構造のことである。アーチは荷重を曲線にそって下部に伝えるので、中間点に支柱がいらない。広い空間を覆う屋根に適しており、古代の教会や寺院などに多用されてきた。

日本の巨大ドームといえば東京ドームをイメージする。これは空気膜構造と呼ばれ、風船に似た原理でできている。2重のテフロン膜の間に送風機で常に空気を送り込んでいる。さらにドーム内の空気圧を0.3%高めて膨らませている。

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【技術史】カラスが羅針盤

【技術史】カラスが羅針盤

カーナビ、磁気コンパスが現れる以前の人々は、大海原をどのように乗り越え船を進めたのか。800年代の後半の探検家フロキ・ビリガルズソンは、遠洋航海の際、カラスをカゴに入れて持って行った。カラスを放し、船に舞い戻って来たら、まだ陸地は遠く、カラスが確信ありげに飛び去ったら、船の針路をカラスが飛んで行った方向に合わせたという。

【技術史】葛飾北斎の絵と車椅子

【技術史】葛飾北斎の絵と車椅子

車椅子とは、身体の機能障害で歩けなくなった人が移動するために使う生活支援機器。ただし、法律上は車両ではなく、歩行者と同じ扱いとされている。現在の車椅子は、介護者が援助する手押し型と、利用者が自ら操作する自走型とがあり、動力源に手動と電動がある。

昔は、葛飾北斎の絵にあるような「いざり車」と呼ばれるものが昔は使われていた。枡形か板状の座席に四つの車輪を付け、利用者は手に持った棒で地面を突いて自走

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【技術史】東京オリンピックと万歩計

【技術史】東京オリンピックと万歩計

1960年代、東京オリンピック開催の建設ラッシュで車が普及するなど、生活が便利になり、そのため国民の運動不足が問題になりはじめた。東京クリニック院長の大矢医師は「一日一万歩運動」を提唱した中心人物だ。そこに患者として山佐時計計測器の社長の加藤二郎が通院していた。彼は大矢の健康法に共感した。
一万歩を数えながら歩くのは大変である。加藤は自分で歩数をはかる器具の構想を練った。振り子の原理を応用し、水平

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【技術史】人体模型から食品サンプル

【技術史】人体模型から食品サンプル

「食品サンプル」は本物らしさの追求から、日本独自の高度な技術とセンスをもって作り上げられた芸術品で、外食産業には欠かせない存在だ。近年は外国人観光客にも人気だ。

食品サンプルの誕生のきっかけは、医学サンプルだった。食品サンプルのルーツを調べると、人体模型に行き当たる。学校の保健室に置いてある。心臓・肺・胃腸などを収めたあの教材だ。かねてから医学サンプルを手がけていた京都の島津製作所(現、京都科学

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アイスクリームスプーンはなぜ平たい!?

アイスクリームスプーンはなぜ平たい!?

アイスクリームスプーンは熱伝導率をうまく使っています。凍ったアイスクリームとなると先の尖ったスプーンでは歯が立ちません。そこで力で無理やり削るのではなく、指先の熱や、部屋の温度で温められた金属スプーンで、冷たいアイスクリームを少しずつ溶かしてすくうという方法が考えられました。
金属は熱伝導率がいいということは、熱しやすく冷めやすいということ。すくいあげたアイスによって金属製のスプーンはすぐに冷やさ

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【技術史】和時計の発展

【技術史】和時計の発展

1623年に津田助左衛門が国産第一号の機械式時計を作ったと伝えられている。当時の日本は、ヨーロッパのように1日を均等に24時間に分割する「定時法」ではなく、昼と夜をそれぞれ6等分し、その一つを一刻とする「不定時法」が使われていた。したがって、同じ一刻でも昼夜では時間の長さが異なり、また季節によっても変動した。
不定時法は自然のリズムに合わせて生活できる時刻制度。江戸時代の不定時法には、時刻を子・丑

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