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2023年3月の記事一覧
【小説】筑紫国の押領使が毎日大根を二本食べ続けた結果「徒然草」より
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その里は、秋から冬に移り変わろうとしていた。
山へ、冷気が頂から流れ込み、その山腹を冷たく乾燥した風がなでつけ、その風が人々と家屋に容赦なく吹きつける。
山裾を絶えずに流れる川の水も、朝は凍るような冷たさであろう。その水は、地域の田畑を肥沃にし、人々に作物をもたらす。
この川の水を引き、農作物を育てる簡素な武家屋敷があり、ここにひとりの押領使がいた。
押領使とは平安時代に、朝廷よ
【序文小説】手羽先唐揚げと強引な共通性についてのアレゴリー
金曜の午後七時。
大阪梅田東通りを二人の男が歩いていた。
冬の終わりとも、春先とも言える三月上旬は、湿り気のある生暖かさと、粉っぽさ(花粉によるものだろう)が入り混じり、粘りこい空気感だ。
梅田東通りは、様々な看板たちで彩られている。
あかあかとした焼肉屋の電飾看板、控え目に沈んだパープルのホテルの看板、黒くちりちりと光る下着屋のサイン、壁に取り付けられたパイプ状の細く青いネオンはモダンな