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【小説】筑紫国の押領使が毎日大根を二本食べ続けた結果「徒然草」より

【小説】筑紫国の押領使が毎日大根を二本食べ続けた結果「徒然草」より

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その里は、秋から冬に移り変わろうとしていた。

山へ、冷気が頂から流れ込み、その山腹を冷たく乾燥した風がなでつけ、その風が人々と家屋に容赦なく吹きつける。

山裾を絶えずに流れる川の水も、朝は凍るような冷たさであろう。その水は、地域の田畑を肥沃にし、人々に作物をもたらす。

この川の水を引き、農作物を育てる簡素な武家屋敷があり、ここにひとりの押領使がいた。

押領使とは平安時代に、朝廷よ

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【序文小説】手羽先唐揚げと強引な共通性についてのアレゴリー

【序文小説】手羽先唐揚げと強引な共通性についてのアレゴリー

金曜の午後七時。

大阪梅田東通りを二人の男が歩いていた。

冬の終わりとも、春先とも言える三月上旬は、湿り気のある生暖かさと、粉っぽさ(花粉によるものだろう)が入り混じり、粘りこい空気感だ。

梅田東通りは、様々な看板たちで彩られている。

あかあかとした焼肉屋の電飾看板、控え目に沈んだパープルのホテルの看板、黒くちりちりと光る下着屋のサイン、壁に取り付けられたパイプ状の細く青いネオンはモダンな

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