マガジンのカバー画像

本とのつきあい

198
本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
運営しているクリエイター

#英語

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)

失礼だが、存じ上げなかった。大関和(ちか)さん。幕末の1858年に生まれ、関東大震災後間もなく、74歳で亡くなっている。
 
著者は女性にまつわる調査を多くこなしているというから、本書も、女性と職業という観点から綴られているには違いない。ただ、和さんが信仰者であったということから、私はまた別の光を当てねばならないという気持ちになってくる。
 
副題ではなく、題の冒頭として、「明治のナイチンゲール」

もっとみる
『新約聖書の女性たち』(C.H.スポルジョン・佐藤強訳・いのちのことば社)

『新約聖書の女性たち』(C.H.スポルジョン・佐藤強訳・いのちのことば社)

スポルジョンの説教集を現代に出す意義は何だろうか。
 
1850年イギリスにて回心したときが16歳。イザヤ書45:22に呼ばれたのだという。その一途な信仰もさることながら、語る才能に恵まれ、説教の天才と呼ばれ始める。19歳にて教会の説教者の立場に就き、200人の会衆を、その年の内に1200席を満席にしたという。牧師として就任した教会は10人しかいなかったが、1年で400人に成長させたそうである。2

もっとみる
チャールズ・ハッドン・スポルジョン

チャールズ・ハッドン・スポルジョン

2022年の半ばを迎えたが、私は例年元日から、黙想用の本を決めて一年間続けるようにしている。自分の思いつきを中心としてはいけない、という戒めからであるが、それ以上に、すぐれた先人の黙想に従ってみるということの意義を、重視するからだ。
 
最近は、加藤常昭先生のものも何年か続けたが、今年からは懐かしいC.H.スポルジョンの『朝ごとに夕ごとに』を見つけて、それを読んでいる。一日ふたつなので、慣れるまで

もっとみる
英語のためにも日本語を

英語のためにも日本語を

英語の劣等生が、とやかく言うことではないが、誰かのアドバイスになればと思い、綴ってみる。大学入学の英語は、英語のテクニックだけを身につけようとしても、解けないということである。それより、すぐれた評論やエッセイをたくさん読むことだ。日本語の。
 
大学入試の文章は、一般の評論の英文が用いられると考えてよい。すなわち、日本語の文章の読解に匹敵する内容だということだ。日本語の場合もそうだが、もしも特定の

もっとみる
平川唯一さんのこと

平川唯一さんのこと

「カムカム英語」について直接知らなかった私にとり、それは伝説であった。それが、2021年後半からのNHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で、タイトルとなって私たちの目の前に現れた。
 
放送も最終回へと近づいてきた頃、ふと書店でこの本を見かけた。これは読むべきものだろうと直感して、手に入れた。『「カムカムエヴリバディ」の平川唯一』(平川洌・PHP文庫)である。
 
それが感謝な導きであっ

もっとみる
『読まずにわかる こあら式 英語のニュアンス図鑑』

『読まずにわかる こあら式 英語のニュアンス図鑑』

(こあらの学校/KADOKAWA)
 
ネットで見かけてフォローしていた。可愛いコアラのキャラクターにより、英語の言葉の微妙なニュアンスを楽しく紹介していた。あるいは、私たちが誤解していそうなことを、一目で分かるように表していた。実に効果的だと思っていたら、間もなく本になった。そして、たちまち大反響で売れに売れている。
 
小さな文字で説明が少し、あるにはある。だが、それを読まなくても、要点は得ら

もっとみる
『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

共通テストや35人学級というふうに大きく変化を見た昨今の教育界。さらに、2020年春からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校という、前代未聞の事態を経験して、教育の現場はどうなっているのか。一種の雑誌であるから、全体としてまとまりがあるわけではないが、多岐にわたる声が集められる。特別な主張を手を変え品を変え出してくるのではないが、編集の方針というものはあるだろうから、一定の方向性を保ちつつ

もっとみる