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こころ

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ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
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2023年2月の記事一覧

『希望のつくり方』(玄田有史・岩波新書)

『希望のつくり方』(玄田有史・岩波新書)

とにかく一冊、「希望」という言葉だけを綴っている。それは、文学者の思いつきではなく、ライフワークとして「希望学」を打ち立てて、地道なフィールドワークも行っている人だ。これは新書とはいえ、ここまでの集大成の観がある。
 
そのために、実例や体験を含め、丁寧に書かれている。最後のまとめは、本書の何頁にこれがあった、と挙げ、またそこを見ることがしやすいように配慮してあった。
 
どうにも閉塞感に包まれて

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地域猫活動へご協力をお考え戴きたくて

地域猫活動へご協力をお考え戴きたくて

地域猫という言葉がいつ生まれたのかは、知らない。いまも野良猫という言葉は、子どもでも知るものだが、地域猫となると、地域がその猫たちの存在を理解している、という条件が付く。猫が庭先で迷惑をかけるというようなことが懸念され、猫を嫌う方々もいるためである。地域の皆さまの寛大さに感謝したい。
 
公園などに、猫たちの安全な住まいを設ける。餌や水を、朝晩提供し、怪我や病気の猫を医院に連れて行く。保護が必要で

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遠い地震の報道に

遠い地震の報道に

トルコとシリアを中心とした大地震の被害は、空前の規模に上りつつある。各国から派遣された救助隊の努力が、誰かの救いになることを願うばかりである。
 
少数の例ではあるのだろうが、限界の時間を超えて救出された人の話も伝わってきていた。小さな子どもやその親が生き延びていたという知らせは、私たちが希望をもつべきであることを、改めて教えてくれる。
 
有り体かもしれないが、いわゆる「サマリア人の譬」が心に届

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届かない言葉と心

届かない言葉と心

シャーペンについている消しゴムを、使わないのがわたしのポリシーだった。あるとき、シャーペンを友だちに貸したら、消しゴムがぐちゃぐちゃに使われた状態で返されてきた。とてつもなく悲しい。
 
こんな声が、ラジオから聞こえてきた。分かるような気がする。自分にとり大切にしているものやことが、他人からすれば何でもないものとして扱われてしまうことの、憤りややるせなさ。価値観が違うと言えばそれまでだが、ひとの気

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エレベーターの笑顔

エレベーターの笑顔

マンションのエレベーターで降りていたある日。途中の階で止まり、ドアのガラスの向こうに、上半身を屈めた女性の姿が見えた。ドアが開くと、その若い母親の足元に、小さなひとがいた。
 
真っ白なフード付きのオーバーを着た女の子である。2歳になるかならないかという辺りであろうか。早く乗せなければ、という配慮からか、母親が支えて、歩かされるような形でエレベーターに乗り込んできた。
 
女の子は、私の顔を見上げ

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