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(3) 可変的なフォーメーション対応が、可能な集団(2024.4改)

「最も重要な同盟国」「緊密な連携」等々、同じフレーズが何度も登場する。
そう何度も繰り返していたのは首脳会談後の日本の首相のスピーチだけで、米国大統領のスピーチでは「同盟関係」と「連携」を一度だけ用いただけだった。

日米首脳会談時の毎度の話なのだが、「大統領発言の英文」を読むと、日本政府の一方的な媚び諂い具合がよく分かる。日本政府は率先して都合の良い様に「誤訳する」ので、参考に値しない。
米国メディアの論調に日本のメディアは傾聴する必要があるかもしれない「日本に寄ったのはプルシアンブルー社の会長に会う為だ」と伝えるが、日本のメディアは黙殺してしまう。
阪本前総務大臣が辞任してから、マスコミに報道規制を強いる前首相時の状況に戻ってしまったのだろう・・。

首相補佐官の新井は気付いていた。日本のメディアがモリ親子の週末の行動をどう報じていたのか、それに対して、米国訪日団や米国メディアがモリ親子とプルシアンブルー社の情報を収集していた実態に。
日米メディア双方の報道を見比べただけで、総務省が国内のメディアに「指図」していた事実を簡単に把握出来る。
ビルマを訪問したニュージーランド首脳の目的は、ビルマ政府内でのプルシアンブルー社の働きっぷりを知り、自国内でも活躍して貰う為だ。ビルマ側のプレゼンターが何故か杜 亮磨になっており、元外務省の2人が杜 亮磨とビルマ政府を支えていた。
長年鎖国政策を敷き、共産国以外とは外交経験の無いビルマ政府と首脳を、まだ若い日本人達が見事に支えた。
しかも「もてなし」「土産」をニュージーランド側に手渡し、ビルマ側には外交と経済的な「利益」を齎した。

ビルマ側も今回の外交対応で自信を得たのか、国の代表である大統領がニューヨークの国連に行くと表明した。恐らくワシントンにも寄って、西側の盟主である米国首脳と会談し、民主化した国として陣営に与する意向を伝えるのだろう。
「裏」の主役のスーチー最高顧問は、クーデター阻止の謝意を伝えに富山のプルシアンブルー社に表敬訪問するという。スーチー氏の来日に関しては、旧ヤンゴンの日本大使館からも、駐日ビルマ大使からも何の連絡も日本側に届いていない。

一方でビルマで活躍した息子以上に、父親のモリの情報は封殺された。
隠岐と対馬の離島訪問に際して、領土問題で揉めている竹島に着陸すると発言して、韓国政府を怒らせた。実際は風が強く波が荒れてヘリが飛べなかったのだが、ヘリ会社に事前に予約が入ってなかったのが判明しており、荒れる天候を先読みした、意図的なポーズ発言だったのだろうと推定される。

社会党陣営が対馬に上陸する際、領土問題に言及するタカ派的人物としてモリを注視・警戒していたので、韓国メディアも大挙して対馬入りした。その大挙して押し寄せた報道陣を前にして、
「対馬に大規模な物流センターを建設して、プルシアンブルー製品を朝鮮半島に届ける」とアナウンスしてしまうセンスを発揮する。
プルシアンブルー社の製品に焦がれる韓国の若者は歓迎し、ライバル企業は上陸しないと思い込んでいた韓国企業は頭を抱えた。
モリの「竹島上陸発言」は韓国内でニュースが浸透するための戦略だったと後になってメディア各社は悟った。モリに誂われた、踊らされたと悔しがっているだろう。

北朝鮮へ進出予定の日本企業にも影響が出ると想像したのか、日本のメディアは対馬でのモリの発言を封殺し、その後の社会党陣営の出雲入りした報道をするに留めた。
テレビの製造工場だけでなく、タイからエアコン・洗濯機・冷蔵庫等の家電製造ラインを移設し、出雲市周辺に工場を新たに建設するという下りを伝える。周辺地域の労働力が求められ、雇用が増えると期待出来るからだ。

島根2区に立候補予定の屋崎 真麻候補は、公示前にも関わらず当選確定という扱いだ。与野党が候補者の立候補を取り下げる検討を始めたという。4月同日投票の出雲市長選には、共栄党の候補者として屋崎候補の母親が立候補するとも表明された。母娘揃って、当確間違いなしだ。
前田 前外相、阪本 前総務大臣、越山 前厚労大臣もそれぞれ2人の演台に立ち、多くの人々が演説に聞き入っていた。

その後、「独島(竹島)の 太極旗(韓国旗)が掲げてあったポールが破壊された」と韓国のメディアが伝えていた。誰が破壊したのか捜査中と韓国政府のスポークスマンが発言したらしいが、そもそも誰も居なかったので特定出来ない可能性が高いという。
「監視カメラを島内に設置すべき」とメディアが記述しているが、果たして実現するだろうか? と新井補佐官は思った。笑ったつもりが笑えないので、新井は訝しむ。ポールを破壊したのはモリ親子の仕業に違いないと思ったのと、スーチーは富山の前後で何処を訪問するか考えたのだが、息子亮磨の実家がある台北市ではないか?と思い浮かび、そうに違いないと確信する・・新井補佐官は、やはり笑うことが出来ずにいた。

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ニュージーランド政府の専用機に搭乗させて貰って、ウェリントンにやって来た亮磨は、ニュージーランド五輪代表の練習施設を訪問する。
異母弟達に会いに行くのが表向きの理由で、ニュージーランドの産業省と農林水産省で協議するためだった。

4月末の補選で東京から立候補する予定だった亮磨は、北海道で立つ方向に転じた。
衆院補選が有る東京選挙区、静岡選挙区、宮城選挙区では、岐阜副知事でバンドメンバーの3女史が立候補する方向に転じた。名古屋、横浜などの政令指定都市での市長選よりも「国政に注力しよう」とドラマーの父親が言い出して、ギター、ベース、ピアノの3人がすっかりその気になってしまった。
立候補を予定していた野党候補にはお気の毒だが、9選挙区のうち元大臣3人と合わせて8選挙区を得る方が望ましい。
政党として国内外で活動する上で、都合も体裁も見栄えも良い。国会が開催されていない時期はバンドとしての活動も出来る。国会招集中も議員宿舎も同じフロアになるだろうし、国会・衆院内でも政党として集えるので都合が良い。

東京選挙区から北海道を託された亮磨に与えられたミッションは、北海道の観光産業のDX化とニュージーランド(NZ)、オーストラリア、ビルマ、ロシア経済圏との農水産業、畜産業との連携、関係強化だ。
NZで言えば、キングサーモン養殖技術を北海道知床半島へ導入し、羊毛を仕入れて加工し、ニット製造・販売事業に参入する。羊はジンギスカン用の食肉にもなる・・。

タクシーでウエリントン市内の練習場に到着すると、日本のスポーツ紙やサッカー誌のメディアが集まっているので驚いた。観客席に座るとカメラが亮磨にも向けられる。取材依頼までされて、頷いてしまう。
この場では政治的な質問が無いので、ラクだった。サッカー自体は好きなので、ソコソコ話せてしまう。
亮磨自身は社長になった頃から、海外のクラブチームのオーナーを妄想し始めていた。札幌にもクラブチームがあるのだが・・国内クラブは楽器メーカーとの契約があるので、磐田のクラブ以外はNGだ・・。

サッカー誌記者「お兄様としての意見を伺いたいのですが、弟さん達をどのポジションで使って欲しいと願ってますでしょうか?」

杜 亮磨「2人はまだ高校生ですし、枠にハメる必要はないと考えています。J2でも相手に合わせてポジションを変えてそれなりに機能していますしね。未だに信じられないのですが3人共、キーパー以外なら何処でも構わないと言うんです。相手チームは嫌ですよね?ゲーム中でもポジションを変えられるんですから」

記者「的が絞れないのは・・家風なのでしょうか?亮磨さんもですが、お父様も神出鬼没と言いますか、何でも出来る方々なのかと・・」

亮磨「浅く広く手掛けてるに過ぎませんけどね・・。弟達も柔軟なのは若いうちだけで、歳を重ねたら大成しないまま、とっとと引退するかもしれませんよ(笑)」

記者「そうは見えませんけど・・」

亮磨「高望みは禁物・・というのが父の口癖なんです。期待以上の成果や実績が得られたら、その方がもっと嬉しいじゃないですか・・あ、しまった。解釈自体は僕自身のモノでして、父は極めてストイックな男です。発言を補足訂正致します(笑)」
その笑った顔を写した写真が、雑誌に掲載された。

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気温が緩み始めたウラジオストック港で、サザンクロス海運の動物輸送船に牛が列をなして乗り込んでゆく。

シベリア鉄道の輸送車両を利用して10日掛けて所々で休養しながら、ウクライナから運ばれてきた牛達だった。一週間置きに105頭がやってくる。7月の夏となると牛の搬送だけが休みとなり、その分、穀物や加工食品等の物量が増える。気候が涼しくなる10月から動物の輸送を再開する。夏と冬のピーク時に動物輸送を避けるのが目的だった。秋には羊の輸送テストも始まる。輸送業者はとにかく動物に優しく接するように心がけていた。お陰で牛達も素直に従ってくれ、船にいそいそと乗り込んでゆく。

今回の航路は北海道ではなく、初めて富山新湊を目指す。そこから陸路で岐阜の飛騨地方の牧場に放牧される事になっている。メイン輸送地は北海道、釧路港だったが、暫くは飛騨牛として育てられる。検疫テストを行なう動物検疫官は釧路から富山に出張する。同じシベリア鉄道の輸送車両で運ばれてきた糧食類を満載した食料運搬船も、富山へ向かう。
牛の放牧は、近いうちに沖縄・八重山諸島や隠岐の島、対馬でも試すという。
北海道に送る牛は年間1500頭を予定している。「これで和牛扱いになるというのだから ズルいよな」とフィリピン人の船員達が話をしていたが、ご愛嬌だろう。

ウクライナとロシアの牧場では、子牛たちの出産ラッシュが近づき3月末にはピークを迎えると言う。これらの牧場はソ連時代の集団農場から続いている大牧場で、今年だけでも3000頭近くの出産を予定してた。近隣の牧場をあわせると赤ん坊の牛だけでも1万頭近くなる。
ロシア向けの輸出の停止の影響で暫く畜産の減産が続いていたが、市場に日本が新たに加わり、輸出制限以前の様な活気がやってきた。ようやく運が向いてきたとロシア経済圏の畜産業界内では持ちきりだった。秋からは一歳クラスの牛の出荷も始めるという。

牛の生育環境の向上を目的とした日本のIT設備が施された畜舎では、飼育環境は万全の体制になっていた。作業完了も大きく変化し、牛にも人にも優しい牧場へ生まれ変わった。日本の北部にある農場と、同じ環境を目指したと言う。

***

富山駅周辺を行き交う人々は、もうマスクをしていなかった。
3月末になって気温も上がったのもあるが、ウィルス感染者は全国で1桁台となっていた。春休みの観光地での感染者増が懸念されていたが、杞憂で終わるのではないか?と越山 史子は見ていた。

厚労大臣になって抗体検査を撤廃し、全国各所の検査体制をPCRで統一し、都市部住民の一斉検査を行った。感染者のカテゴリー分けに応じた収容施設を各地域で用意して、専門の医療グループで感染者の対応に当たった。重症者にはバスターC、軽症者にはバスターCライトを処方。各国が概ね同じ対応をしたのが功を奏したと言われていた。

現在、各国の出入国量は徐々に改善傾向にあるが、南米、アフリカの出入国はまだ要警戒。EU、北米、アジアはビジネス入国は認めるが、PCR検査結果が出るまで用意した施設で待機となっている。不幸中の幸いなのだろうが、世界はワクチンに頼らずに、冬を乗り切った。
結局、感染者数が減少した理由は、感染抑止に成功した国に模倣したのが全てとなった。ウィルス対策の陣頭指揮を取った越山は、時の人として賞賛された。感染症対策のスペシャリストとして認知が広がると、各国の感染症対策のチームが越山のもとへ訪日し、教えを乞うた。

「富山モデル」を採用しただけ、と本人は謙遜したが、破綻に突き進んでいた都市部の医療体制と、感染者の命を救った鬼神の如き働きは、誰もが認めていた。国を絶望の縁から救い上げたという声も記事やSNSで数多く見られる程だ。厚労省のイメージを刷新した陰の功績も、高く評価されている。
感染者が1桁になっても、彼女は旗を下ろすのを拒否した。専門の医療団は一旦解散し、日本海側の各病院へ帰任となったが、台湾、NZのように感染者をゼロにするまで足を止めてはならないと熱く語り、各自治体の対応の維持を訴えた。また冬がやって来る。南半球では間もなく到来する。
越山は「人類はコロナをまだ封じ込めていない」と言い続ける。医療行為や感染対策で、医師や厚労省の肩書を持つ連中が数々の俗説を流したことも今回の教訓だった。政府の見解ですら、政府の専門家ですら間違っていた。それを越山前大臣の意見が全てと国が定め、一本化した。
有象無象を新厚労省が論破し、越山と意を一つにした事で秩序が戻った。日本政府の危機管理能力がようやく機能したのだ。

社会党・共栄党の感染症対策責任者が、次の冬が来る前に優先すべきと判断したのが「検疫体制」だった。

「コロナの発生源が冷凍食品内に感染物質があったのではないか?」と中国で報じられたこともあって、輸入食料品の検疫を強化する動きが各国で始まっている。
社会党陣営が調達しているロシアからの輸入食物・動物に合わせて、今年はニュージーランド・オーストラリアからも大量の食肉が入ってくる。越山は国内の検疫だけでなく、ビルマの検疫体制も視察して対策を講じるように言われており、各地の検疫体制を感染学の観点から見直すのが、次なるミッションとなる。

「ウイルスは人や動物だけが運び込むものではない」あらゆる仮説を立てて、越山は備えようとしていた。
「想定されるものを全て掲げ、対策が優先する事項に取り組む」自身の危機管理法でもある。
モリが立ち上げた各国との「食料自給率向上策」「食糧安保体制」を足元で壊してはならないと、越山は考えていた。

コロナの特効薬に続く薬品開発には、「鳥インフルエンザ」「豚ウィルス」対策に多額の資金を投じて貰っている。牛や羊にも厄介なウィルスが広がる可能性を注視しながら、検疫体制を充実していこうと考えていた。

ーーーー

ニュージーランドが日本の海上太陽光発電を検討し、南太平洋の諸島国家が追随しようとしている情報は、中国政府と南部の都市にも影響を及ぼしている。
香港政庁とマカオ政庁が申し合わせたかの様に、中南海に海上発電導入の検討を申請をしてきた。中南海は判断に悩んでいた。福建省からもアモイ沖の島で計画したいとの要請が届いていた。確かに厦門や香港には海上発電に適した諸島部があり、設置可能ではある。

中国政府は、技術的な優位性はそれほどでもないだろうと、洋上太陽光発電の自主開発と製造の検討を始めていた。これ以上プルシアンブルー社の独壇場にする訳にはいかないからだ。
同社は台湾の製鉄メーカーと電気技術者と、海洋油田を得意とするマレーシアの石油会社との技術提携で対応している。太陽光発電パネルも同社製だ。

それに対して中国企業の参入の可能性はまだ低く、プルシアンブルー社の国際特許が掛けられている。特許料を支払うにせよ、大した額面にはならないだろうと、ブルネイの中国大使館員にバンダルスリブガワン沖の現地の模様を映像と写真に収めさせて、それを元に開発・製造の検討をさせている最中だった。
特許など無視して製造してしまう、中国らしい決断とも言える。

4月には社会党関係者がインド、バングラディシュ、ビルマの3国を訪問するという。その目的まで判明しないが、インド、バングラディシュは海上発電の採用を内々に検討しているのではないかと中国国家安全部は伝えている。
プルシアンブルー社が安価で買収して製造を始めたスウェーデン企業が開発したプロペラ機を、3カ国が購入すると表明している流れから見ても、3カ国が同社と結びつきを深めようとしていると判断していた。

中南海と政府の懸念は、インドとビルマとの結びつきが強化する動きが見られる点だ。製鉄会社の無いビルマは中国からの輸入を止めて、インド内の製鉄所からの輸入に変えた。インド政府が中国人技術者に代わる人材をビルマに派遣する用意があると申し入れているらしい。再開発事業で建設ラッシュとなったビルマで、インド側が製鉄需要で儲かるのを見込んで、見返りにプロペラ機の購入となったのだろう。
他にもインドが何か買うのではないかと見ていた。太陽光発電にUAV・・どれも考えられるだけに不気味だった。日本とインドの結びつきは以前からのものだが、これだけ大々的にカネが動く日印間の協業は初めてではなかろうか・・・

産業内相は悩んでいた。国策である一帯一路上に、インドに加えてビルマという伏兵が現れた。裏で采配を奮っているのはプルシアンブルー社であり、渦中の人物はモリであろう・・

国家安全部の劉岱山部長に相談する為、内相は受話器を手に取る。

安全部は現政権下で国家の安全保障を優先するセクションとなっている。劉岱山が率いる選抜チームは、国内経済状況の悪化の原因はプルシアンブルー社であり、元凶はモリ親子だと断定して活動している。

(つづく)


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