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2023年12月の記事一覧
ルールを知らないオーナメント|毎週ショートショートnote
妻と娘がクリスマスツリーに飾り付けをしている。普通なら微笑ましい光景なのだろうが、今の私の表情は「無」に近い。
私の実家には「飾り付けは一切してはならない」という決まりがあったので、クリスマスにも正月にも、何かの行事があっても、飾り付けというものを一切したことがなかった。実家だけではない。実家がある西日本のとある地域には、今もそういう風習がある。
「飾り物をすると、それを盗りに来る奴がいる」
台にアニバーサリー|毎週ショートショートnote
むかーしむかし、北海道の奥地に「緒倣筑」という小さな村があった。その村の住人はみんな文章を書くのが得意で、農業の他に新聞記事や不思議物語などを書いて暮らしていた。
緒倣筑村では毎週日曜日に村長がお題を出し、みんな1週間かけて思い思いに物語を書き、お互いに読み合うという珍しい風習があった。
ある日、多良葉佳丹という旅人がやって来て、「私と勝負しましょう。私が出すお題で、もし私が唸るような不思議物
白骨化スマホ|毎週ショートショートnote
DF25S7W500H91
警察からスマートフォンを預かり、製品番号をメモする。
――白骨遺体か……。
スマホの持ち主の成れの果てを知り、少しだけ背筋が寒くなった。
「えーと、DF25S7、W500H91……」
会社のパソコンに、さっきのスマホの製品番号を打ち込む。
みんな携帯電話の製品番号なんて気にしたことはないだろうが、実は電話会社や携帯端末製造会社の間では、この製造番号に特別に気
助手席の異世界転生|毎週ショートショートnote
「おー! なんだなんだこの建物は!」
助手席の井上が興奮気味に叫ぶ。僕は建物の前に車を停めた。
「これ、公民館じゃないの? さすがに廃屋じゃないでしょ」
北海道に引っ越してすぐに井上と知り合い、お互い本州からの移住者なので、すぐに意気投合した。僕達がハマっていているのは廃屋巡り。北海道にはとにかく廃屋が多く、中には「まだ誰か住んでるんじゃないの?」と思うほどしっかりとした建物や、集落丸ごと廃