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台にアニバーサリー|毎週ショートショートnote
むかーしむかし、北海道の奥地に「緒倣筑」という小さな村があった。その村の住人はみんな文章を書くのが得意で、農業の他に新聞記事や不思議物語などを書いて暮らしていた。
緒倣筑村では毎週日曜日に村長がお題を出し、みんな1週間かけて思い思いに物語を書き、お互いに読み合うという珍しい風習があった。
ある日、多良葉佳丹という旅人がやって来て、「私と勝負しましょう。私が出すお題で、もし私が唸るような不思議物語を書いた人がいたら、これを差し上げます」と自信たっぷりに言い、アルミ製のアタッシュケースを出した。その中身は……なんと札束。現在のレート換算で2億4千万円ほど。
――ジャパーン!
村人たちは色めき立った。
「多良葉さんよ。この村の評判を知らんわけではなかろう? あんたに勝ち目はないと思うが、本当に勝負するかね?」
村長が諫めるが、多良葉に動じる様子はない。
「もちろんです。ただし、皆さんの物語で私の心が動かなかった時は、若い娘を頂戴します」
自分たちが負けるなどと、露ほども疑わない村人たちは「楽勝よ!」と余裕をかましていた。
しかし、多良葉の出すお題は、
「まさるちゃんの株式会社NOと♪」
「ジュリエット釣り」
「2次会デミグラスソース」
など、およそ意味不明なものばかり。
誰ひとりとして物語をかき上げられず、約束の期限の1週間を過ぎた。
「で? 原稿は?」
ベテラン編集者のようにふんぞり返る多良葉を前に、村人たちはただ、俯くばかり。
「さて、誰を嫁にしましょうかねぇ」
娘たちを見る多良葉の目は、まさに飢えた獣のそれである。
「そこの娘、Come here」
「ど……どうかお許しを! 私には心に決めたお人が……」
「ええい! ジタバタするんじゃねーよコラッ!」
多良葉は娘を連れ去り、毎日縺輔k縺.繧?s縺ョ譬ェ蠑なことや蜍輔§繧九%縺ィ縺後なことなど、それはそれは言葉にするのも恐ろしいようなことをした。
そんな凄惨な光景を、ただ指をくわえて見ていることしかできない村人たち。
するとそこへ……。
「あー、すき家のチーズ牛丼食いてぇ」
長らくホタテ漁に出ていた富樫が戻って来た。村で3番目くらいに文章が上手い男である。
――あいつと……多良葉と勝負してくれ!
村人たちの懇願を「ええよ」と二つ返事で引き受けた富樫は、多良葉を村長の屋敷へ呼び出した。
ちゃぶ台を挟み、向かい合う多良葉と富樫。
「あんたが多良葉さんかい。ずいぶんと好き勝手やってくれてるそうだな」
「おぬし、何者だ? 名は何と言う?」
「名か……。これから死ぬ奴に名乗る名はない!」
次の瞬間――。
(ノ`Д´)ノミ┻┻・'.::・┳┳)`Д゚).・;'∴
富樫がぶん投げたちゃぶ台が多良葉の頭にジャストミートした。
首があさっての方向に折れ曲がった多良葉、それを見て唖然とする村人たち……。
「多良葉佳丹なんて奴は最初からここにいなかった」
富樫の言葉に、村人たちは我に返る。
「そうだ……。ここには多良葉佳丹なんて奴は来ちゃいねぇ!」
多良葉の遺体は海へ遺棄され、村には再び平和が訪れた。
しばらくして、村で奇妙なことが起こり始めた。
村人たちの中に文字が書けなくなる者が続出したのである。流行り病だと言われているが、真相は分からない。
ただ、「多良葉佳丹の呪い」と言う者もおり、多良葉佳丹の魂を鎮めるために、海のそばに慰霊碑が建立された。
![](https://assets.st-note.com/img/1703363696904-BjCIQwhrNx.jpg?width=800)
北海道オホーツク地方に伝わる、古い古い伝承である。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「台にアニバーサリー」でした。
なんとなんと、毎週ショートショートnoteは2周年を迎えたとのこと!
おーめーでーとぅー!(・∀・)
私がこの企画に初参加したのは、2022年6月11日の「消しゴム顔」でした。
もう1年半も経つんですね…。
これだけ大規模で有名な企画になったのは、きっとたらはかにさんの人望と行動力と変態力の賜物だと思います。
改めまして、毎週ショートショートnote2周年、おめでとうございます。
そして、3周年に向けて頑張りましょう!
※紋別市のカニ爪オブジェの写真は私が撮影したものです。
先週のお題は「白骨化スマホ」でした。
ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!