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文芸寄せ集め

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自分の記事の中から詩と掌編小説を寄せ集めました。
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#散文

詩)夏のさざめき

詩)夏のさざめき

夏が来る、と思うと肩がぎゅっと固くなる
自分が溶けて外気と一体化してしまう暑さを思うと気後れしてしまう

投げやりになって足を投げ出したくなるような熱風は私をおののかせ、夏、という季節の有無を言わせぬ暴力性から逃げ出す算段をさせる

夜気すら私を休ませず、朝が来ると太陽の恒常性にうんざりする季節

アイスバーの四隅が直ぐに丸くなるから家までもたなくて、アスファルトの照り返しの中液体になったチョコレ

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詩)梅雨が明けたら

詩)梅雨が明けたら

梅雨が明けたら裸足になって砂上を歩き
どこまでも続く砂に埋もれて寝転がりたい
沈むからだを横たえれば隣にはあなた
日に焼けるからと被った帽子が風に舞う

梅雨が明けたらサンダルで街を歩き
ふわふわで肉球みたいなかき氷を2人で食らいたい
さらさらに混じった硬い氷を歯で噛みちぎり
きな粉の向こうへ砂を見る

霧雨が鳴くから今夜は毛布にくるまり眠ろう
窓枠に雨が滲んで紫陽花を濡らすから

ひとつひとつの

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詩)音楽の切れ間に

詩)音楽の切れ間に

休日の昼下がり、音色の隙間に自分を見つけた

外は穏やかに晴れている
オレンジ色の光が、フローリングの床に差し込んでいる

迂闊にもリピートを忘れたサカナクションの合間に、迷路のような森に迷い込んで途方に暮れている私がいる
音の切れ目から入り込んだ理性が、ふと私を真顔にさせたのだ

いつからだったか
もう誰にも撫でられる事のなくなった頭をそっと撫でる

捕まえようとすると宙に浮いてしまう自分
もは

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詩)ふわりと夢を

詩)ふわりと夢を

ふわりと夢をみる
ふわりふわりと夢をみる

あなたは夢に出てこない
おかしいまだ寝てないのかしら
意識がそこに向かないの?

遠くに飛ばした風船を
取りに行くのとあなたが言った
細い手首のあなたなら
そのまま浮いて帰れると

くるりと宙を舞う
くるりくるりと立ち泳ぐ

黒くて長いあなたの髪が
ぐるんぐるんと渦をまく

目が覚めたら常に一緒
ゆらりゆらりと戯れる

詩)あなたの睫毛

詩)あなたの睫毛

あなたに要求したお願いが
何だか聞いた事がある内容で
何処かしら引っ張り出して探したら
椎名林檎の歌詞でした

そりゃーあーたしは綺麗とかああー美人なタイプではないけれどこっち向ーいーてー

腑に落ちて何回も聴いていたら
この曲を初めて聴いた時のはち切れんばかりの頬を
パチンと叩くような衝撃がありました

少女は大人になって
頬が削げ綺麗と呼ばれるようになったけれど
それがあなたの好みじゃなかった

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