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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年7月30日 06:10
図書館の閲覧席で静かに物語の世界に浸っていたカメの隣に、ウサギがふわりと座った。彼女は、興味津々にカメに問いかけた。「ねえ、博物館ってどんなところなの?」「それなら、分類番号069の書架に博物館の本が並んでるよ」と、カメは物語に夢中になったまま、上の空で答えた。ウサギが本を探しに立ち上がろうとすると、カメは本に目を落としたまま、彼女の腕をそっと掴んだ。「ちょっと待って」と言うと、手探りで
2024年7月26日 06:09
夏の強い陽射しが窓際の席を照らす図書館で、ウサギは一人、本に夢中になっていた。彼女の視線はページから離れず、本の世界に引き込まれていくその姿は、まるでその物語の一部のようだった。その絵本は、どうしても月と遊びたいモニカのために、長いハシゴを持ったパパが、お月さまを取りにいくというお話だった。「いいなあ。私もお月さまが欲しいわ」と、ウサギが思わず口にすると、偶然近くを歩いていたカメが静かに振
2024年7月21日 06:09
暑い季節がやってきた。ウサギは部屋の隅に置かれた箱を引っ張り出すと、浮世絵の団扇を取り出しそっと眺めた。「これで少しは涼しくなるかしら」彼女は箱の底に埋もれていた蚊遣豚に気づいた。ふと手に取って眺めていると、彼女の視線は小さな本棚に向かった。細い指先が本の背表紙を一冊ずつ優しくなぞり、ある一冊の本に止まった。そっとその本を取り出し、窓辺の椅子に静かに腰を下ろすと、ゆっくりとページをめくり
2024年7月14日 06:26
ラジオ局の仕事を終え帰宅したウサギは、ソファーに身を投げ出し、深く息を吐いた。お腹は空いていたけれど、取っておきのクッキーは、あとで食べることにした。彼女はゆっくりと立ち上がると、小さな本棚の前に立った。じっと背表紙を眺めてから、一冊の絵本を手に取った。それは、「オオカミのごちそう」という絵本だった。物語の中で、オオカミはコブタと出会った。コブタの愛らしい姿がオオカミの心に深く刻まれ、そ
2024年7月7日 06:28
ベランダに独り佇むウサギは、静かに空を見上げていた。淡い雲がゆっくりと流れ、雨を降らせるのか、それとも静かに消えていくのか、迷っているかのようだった。「今日は七夕ね。天の川は見えるのかな」部屋に戻り小さな本棚の前に立つと、一冊の絵本で指を止めた。彼女は窓辺に腰を下ろすと、ゆっくりとページをめくり始めた。「天女と人間って、本来は結ばれる運命じゃないのに、うしかいは織姫を妻にしちゃうんだから