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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その7



7.   今日と明日の境目



いきなり始まった先輩とのコラボ。
もちろん奏でたのは『折込チラシ』。
ギターはまだまだ先になりそうだ。



180部の折込チラシをわずか10分間もかからずに
綺麗に整えて作業台にセット完了。
これでいつ明日の朝刊が来ても大丈夫だ。




先輩は汗ひとつかく事なく、
まるで何もしてなかったかのように
爽やかにクールに私に聞いてきた。



「これで明日の準備は終わりだけど。ご飯食べた?」



「あ、はい、食べました。」



「そう。ご飯食べてチラシの準備が出来たら、その日の仕事は終了。
朝は2時にお店に集合。準備してたら新聞が来るから、みんなで運ぶ。」



ん?
今なんて言った?
2時?



たしか来た時に優子さんに
「今日はゆっくりしてね」と言われた気がしたが、
2時ということは・・・
あと何時間後だ?
なんだかんだで、もう7時半になってるぞ。



いや、次の日の2時かな?
次の日がいつか分からなくなってきた。




確かに12時で日付が変われば明日だ。
しかし12時01分に「明日は休みだ!」と言ってしまうと
それは夜が明けてからの事ではなくて、
24時間後に日付けが変わってからの日時になるのかな?



よく分からなくなってきたぞ。


でも2時は今晩の2時だから『今日』だと思うんだけどな。
ちょっと誰かに質問したいな。



誰かにというわけではなく、
だいたいみんながいる場所めがけて
質問を投げ掛けてみた。



「すいません。朝の2時というのは、
もうそろそろやって来る今晩の2時のことですか?」



「そうそう。あぁそうか!まだごっちゃになるのか。俺も初めはそうだったな。日付が変わってすぐの2時のことだよ。明日と言えば12時からがもう明日だから。すぐ慣れるよ。俺はなかなか慣れなかったけど。」



細野先輩は興奮したのか少し声が大きくなっていた。



『しのピー』こと篠原という名前の先輩もいつの間にか帰って来ていて、
ご飯を食べ終えて爪楊枝でシーシーしていた。
こちらの話が聞こえていたようだ。



篠ピー先輩が言った。


「テレビの番組表が悪い。
今日の新聞には11時59分までの番組しか載せないでおくべきだ。」



優子さんは小さな事務机に座りながら
それを聞いていた。



「面白いね!なるほどね。12時以降は明日だから明日の番組として
明日の新聞に載せるべきよね!でもそれだと12時までに
朝刊配り終えなくちゃ!」




みんなが笑った。
私は笑えずに顔を上げて、みんなを見た。



みんな笑っている。
話をしながら笑っている。
あと6時間半後には仕事が始まるというのに。




頭が混乱していく。
一旦整理してみようか。いや止めておこう。
なんとかなるさ。
みんな楽しそうなんだから。
なんか良い人しかいないしな。




私の中の詩人の部分が小さい声で呟いた。
『【夜寝ている時間は今日、そして朝起きた所からが明日。】
そんな今までの常識よ、さようなら。』



新聞配達員シップにのっとって誓います!


『今日からは、
日付けが変わる12時までが今日であり
そして12時からが明日である!』


明日はもう始まっているので今日と呼ぶ。
明日の配達とは今晩の事である!
ややこしいな。




そんな習慣、身に付くのだろうか。
もし誰か可愛い女の子に
「真田くん明日休み?」と聞かれたら
今晩の事である!
忙しくなるぞ!



そんなこんなだったら早く寝たいな。
あっ!風呂だ!
銭湯に行かなくちゃならなかったんだ!
確か営業時間は夜12時までって言ってたよな。
今日中に入れって事だな。
さっそく新聞配達員シップにのっとった。



優子さんが思い出してくれた。

「あ、そうだ!そろそろ真田君のお布団持って行こうか。
篠ピー、車って駐車場になおしちゃった?」



「あー、そうだ、そうだ。車取りに行ってくる。」



「ごめんね!よろしく!」



細野先輩が風のように呟いた。



「俺、その間にメシ食うわ・・・」





素敵な人達じゃないですかー!




でも、お風呂、間に合いますように・・・





〜つづく〜

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真田の真田による真田のための直樹。 人生を真剣に生きることが出来ない そんな真田直樹《さなだなおき》の「なにやってんねん!」な物語。

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