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スコウスの!オリジナル超長編連載小説『THE・新聞配達員』

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真田の真田による真田のための直樹。 人生を真剣に生きることが出来ない そんな真田直樹《さなだなおき》の「なにやってんねん!」な物語。
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記事一覧

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その86

86.   コンビニに佐久間さんが来たけど私だって気付かなかった話 コンビニのアルバイトはもう 寝坊ばかりするようになった。 でもクビにはならなかった。 週5日シフトに入る予定が週3日になった。 蓄積した疲労が抜けない。 朝刊が終わってお腹いっぱいご飯を食べたら なぜか寝てしまう。ビールを飲んでないのにだ。 ダメな私。 酒を飲まずして眠れるものなのかと 自分の体を不思議がった。 疲労はやはりアルコールで取るのが一番だと 幼い頃父親から教わっていたからだ。 晩酌する父の膝

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その85

85.   ギターリストが魂ではなくギターそのものを売った日 クリスマスはみんなでカラオケに行った。 私がみんなのリクエストに応える形で盛り上がった。 由紀ちゃんがJUDY AND MARYの そばかすを歌ったときは声がそっくりすぎて みんなびっくりしていた。 由紀ちゃんにあげたクリスマスのプレゼントも 由紀ちゃんからもらったクリスマスのプレゼントも 両方マグカップだったので、ふたりで笑った。 お正月もみんなで神社に初詣に行った。 念願の浅草だ。おみくじは末吉。 全てが

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その84

84.   舞台の下で名芝居を打った大根役者さなだまる 早稲田から神楽坂まではたったの一駅だ。 これはもう覚えた。 前に佐久間さんのピアノ発表会で来た場所だ。 あの時はかなりの弱虫で 景気付けにビールをたらふく飲んでから来たので あまり覚えていない。 今こうして、 ゆっくりと街並みを眺めながら散策すると 神楽坂は京都に似ている気がする。 路地がやたらと多く、石畳が敷かれている。 車のあまり通らない道。 閑静で小さなお店がいっぱい並んでいる。 そんな風情豊かな事を考えな

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その83

83.   ビッグスターはみな四畳半からスタートするものだ もう朝刊の時間か。 私はコタツの中にいる。 中に潜ってはいない。 ひとりだから潜らない。 もし向かいに女の子が座って居たら 潜らなければならない。 私は腰から下をコタツに入れ お尻から上は座椅子にもたれている。 そして両腕にはめずらしくギターがある。 気持ちが弱くなるとギターを 弾かずにはいられなくなる。 わずかなレパートリーを弾き終えると 適当なコードを弾く。 「おや?今のはなんだ?ふんふんふ〜ん♪」

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その82

82.   さよならメデューサ 「元に戻してください。」 私は恵比寿に居た。 咳き込みながら美容師さんが言う。 「元がどんなだったかゴホッゴホッ、忘れましたけど、ゴホッ、とにかく縮毛矯正しましょおゴホッゴホッ、ぅか?」 きっと臭いから咳き込んでるのかもしれない。 最初は風邪でしんどいような感じではなかった。 「しゅくもう、きょうせい?」 「はい。ゴホッ。ストレートパーマの強力なゴホッやつです。ゴッホ。オエッ。」 やっぱり臭いようだ。 それかゴッホのファンか。

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その1

1.   進路なき人生 やっと高校を卒業した19歳の秋。 留年したのに、そのまま友達で居てくれる 同い年の友人達。 特に進路は決めていなかった。 親も先生も友人も 飼っている金魚も誰も 次に私が何をするべきかを言う者は 現れなかった。 幸運だ。 信じられている証拠。 もしくは諦められている証拠。 何をしても良いし、何もしなくても良い状態。 そんな責任と責任のちょうど間に 【何もしなくても良い】という隙間が あったなんて。 居心地が良いので、しばらくそこで考えに考える。

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その2

2. 時給7カナダドル 何もしていないわけではない。 『なにをしてるの?』と訊かれたら みんなのそれはきっと【職業】のことだろう。 『くそったれのあなたの、くそったれた仕事は、いったいどんなくそ?』 これを略して 『なにをしてるの?』だ。 みんな略すのが好きなのだ。 だからこう答えるしかない。 『全く何もしてません』と。 属性がないという属性の人生。 でも友人たちに 『今日は何をしていたの?』と訊かれたら 何もしていない時間なんて全く無いはずである。 屁理屈でもなん

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その3

3.   名曲の作り方 カナダ行きは一年後に先送りになってしまった。 『一年後でもいいからカナダに来たいという気持ちがあるのなら いつでも連絡してくださいね。』と言われて。 呆然となる私。 一緒に行こうと言ってくれていた友人常盤木氏は 普通に大学と彼女の部屋に通う毎日に戻った。 いや失礼。 まだ行ってもいないのだから 戻ったのでもなかった。 私はと言えば、その友人の大学にコッソリと入り込んで 大学生のフリをして図書館で本を読んだり 食堂でご飯を食べたり飲んだりして過ご

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その4

4.   氷のような冷たさと太陽のような温かさ 縦5cm横8cmの紙の雑誌の広告の、 そのインクの文字がきっかけで ミュージシャンを目指して上京することになった私。 真田直樹20歳の春。 深夜の夜行バスで大阪から新宿にご到着。 朝の6時。 歯が磨きたい気分のまま眠気まなこでバスを降りた。 雨だった。 傘がない。 東京は見た感じは大阪と同じ。 でも人の態度がまるで違うと聞く。 そんなのはただの噂だろう。 私は傘が欲しくてコンビニに入った。 私は傘をコンビニで買うのは

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その5

5.   初めての夕飯 東京初日の夕方5時。 夕飯が新聞屋さんのお店の中で 食べられるらしいので、 自分の部屋を出て、お店に行く事にした。 いや、待てよ。 他の学生たちや従業員たちも 食べに来てるのだろうな・・・ 女の子も居るかも知れない。 鏡はどこだ? かばんの中を探すも そんなもの持って来てはいなかった。 共同の流し台かトイレにあるかも? 無かった。 仕方ない。 歯くらい磨いてから行くかな。 隣の部屋もその隣の部屋も静かだ。 誰もいない感じがする。 まだ入

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その6

6.   相棒はゴム さっそく仕事を伝授し始めようとする細野先輩。 木の作業台の上やら下やらをキョロキョロと何かを 探している模様。 作業台の位置は、ちょうど洗濯機の横。 「ここが6区の人の作業場所。この机1列で3人が作業するから ちょうど新聞3枚分が1人分の作業スペース。やたら狭いから工夫しないと すぐ散らかるから気をつけて。まぁ実際にやる時にやり方は見せるよ。あれー?無いなぁ。」 何かを探しながら、とりあえず教え始めてくれた。 先輩は下を向きながら話していたので、

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その7

7.   今日と明日の境目 いきなり始まった先輩とのコラボ。 もちろん奏でたのは『折込チラシ』。 ギターはまだまだ先になりそうだ。 180部の折込チラシをわずか10分間もかからずに 綺麗に整えて作業台にセット完了。 これでいつ明日の朝刊が来ても大丈夫だ。 先輩は汗ひとつかく事なく、 まるで何もしてなかったかのように 爽やかにクールに私に聞いてきた。 「これで明日の準備は終わりだけど。ご飯食べた?」 「あ、はい、食べました。」 「そう。ご飯食べてチラシの準備が出来た

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その8

8.   隣人と隣人の隣人 駐車場に車を取りに行っていた篠ピー先輩が戻って来た。 細野先輩は体が細いくせに早食いだった。 「運ぶ布団ってどこ?」 「洗剤置き場の横。」 「これかー。デカイなー。高いやつだぞ、これ。」 「確かに。デカイけど軽いね。」 私はただ見届けることしか出来ずに 事が進んでいくのを見ている。 「あ、ちょっと待って!私も行く!乗せて!」 優子さんもついて来てくれるみたいだ。 布団を車の後ろに積んで 白い軽のバンで4人、お寺(私の部屋)に向かう

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オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その9

9.   閻魔大王 銭湯に急いだ。 場所は昼間に下見済みだ。 小さいタオルと石鹸をビニール袋に入れて 向かった。 昼間しまっていたシャッターが開いていた。 中に入ると男湯と女湯が入り口で分かれていた。 右は青い暖簾の男湯 左は赤い暖簾の女湯。 赤い暖簾を一度でいいからくぐりたい。 それは私にとっては天国への暖簾だ。 私は下駄箱に靴を入れて男湯と書いた 青い地獄への暖簾をくぐって扉の中に入った。 入ると直ぐ頭上に白髪のじい様が かなり高い位置で椅子に座っている。

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