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五感で「想う」、遊び心が生む自由な発想とイノベーション

87歳にしてなお精力的に作品を創り続けるアーティスト、横尾忠則さん。その創造力の源泉は「遊び心」「想う」力にあります。ビジネスパーソンもこの力を活かせば、イノベーティブな発想を生み出せるようになります。今回は、「遊び心」と「想う」について考えます。


論理を超えた「想う」力

横尾さんは、頭で「考える」よりも、身体が勝手に描いてくれる、描こうという衝動、「想う」にしたがうことを重視しています。

「考え」は脳という肉体の中に閉じ込められているので、地上的です。だけど「想い」は肉体のどの場所にも定着しない、宙をうろうろしているような存在なので、地上から離脱して地球の成層圏を突き抜けて宇宙へ飛翔します。つまり、「考え」は脳に閉じ込められてキャパシティが小さいけれど、「想い」は自由のキャパシティが無限というわけです。

横尾忠則 「知識に縛られずにアホに生きたら… 横尾忠則が10代で読書をしなかった理由」
デイリー新潮

横尾さんのいう「考える」は論理的思考のこと、これは確かに重要ですが、自由な発想を妨げることもあります。一方の「想う」は制約がなく、子供心や遊び心のように、目的、大義名分、結果といったことにとらわれずに自由になれます。

横尾忠則の「寒山百得」展:自由自在な発想を具現化

横尾さんは、2023年に、東京国立博物館 表慶館「横尾忠則 寒山百得」展を行いました。中国・唐代の既成概念にとらわれない自由な行動をした伝説の詩僧、寒山と拾得を題材に102点もの新作を展示しました。この展覧会は、横尾さんの「想う」を具現化したものでした。

誰のなかにでも自由自在に活動してしまう寒山拾得のような人格は存在すると思うんです。つまり、自分のなかの「ちっさい私」とでもいうのかな。複数の私が自分のなかにいると思うので、それをできるだけ絵に解放していこうと思って、「寒山百得」を描くことになりました。

「横尾忠則が語る「寒山百得」。「観念と言葉を排除して描き続けた」」美術手帖オンライン
「横尾忠則 寒山百得」展 東京国立博物館より 筆者撮影

ビジネスパーソンが「想う」を発揮するワーク

ビジネスパーソンは、論理的思考が何より優先されますが、それだけでは突き抜けた発想は生まれません。横尾さんのように「想う」力を発揮することで、常識を超えたコンセプトを生み出すことができます。

私のアート思考の講義では、ビジネスパーソンが、常識を超えたコンセプトを考えて、アート作品を制作します。作品を創るということは、多くの人にとって中学や高校以来の経験であり、最初は自分に作れるのだろうか?と不安になるもの。しかし、実際にやってみるとできてしまう。この時、普段使わない頭を使うと言います。論理的思考から「想う」ことへのシフトが起きているのです。

遊び心をもち没頭できることを見つけよう

イノベーティブな発想ができるようになるには、目的や結果にとらわれず、遊び心を持って没頭できることを見つけることが重要です。スティーブ・ジョブズが大学時代に、必修ではなかったカリグラフィーの授業にのめり込み、後のマッキントッシュに繋がったエピソードは、没頭できることがどこに潜んでいるかわからないことを示しています。出会ったときに気づく感度を保っていることが大切です。

遊び心をもって没頭できることを見つけ、イノベーティブな発想を生み出していきましょう。

大人になると目的をもって、結果を計算して、大義名分を立てて行動を起こしましょうとなりますが、子供はそんなこと考えていません。結果も目的も必要ない。僕がやろうとしているのはそれと同じです。最終的な結論をすべて排除し、それがどこに到達するのかどこにも到達しないのかも関係なく、創造すること自体の快感を求めているんじゃないのかな。

「横尾忠則が語る「寒山百得」。「観念と言葉を排除して描き続けた」」美術手帖オンライン


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