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アーティストの思考がビジネスを変える - 世界に2つとないコンセプトを生み出す方法

「アート思考」とは、自らの興味・関心を起点に、常識を超えたコンセプトを創出する思考です。現代アートのアーティストたちが作品制作の際に発揮する思考と共通しています。このことは、アーティストがビジネスの世界でも活躍できることを示唆します。今回はこの事例を紹介します。


アーティストの思考を活かしたユニコーン企業

マイクロソフト社のVice President of Design and Artificial Intelligenceであるジョン・マエダ氏が発表した2016 Design in Techによると、ユニコーン企業約160社のうち、21%の企業で、芸術系のバックグランドをもつ人が共同創業者になっていますYouTube、ゴープロ、Airbnb、ダイソンなど、独創的なビジネスを展開している企業が該当し、「常識を超えたコンセプト」を提示しています。芸術系出身の創業者が「アート思考」をビジネスの場で発揮していると考えられます。具体的な事例としてAirbnbを紹介しましょう。

芸術系出身の創業者

Airbnbの創業ストーリー - 自分たちの体験からコンセプトを生む

Airbnbは2008年、芸術系の大学(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン:RISD)を出たブライアン・チェスキー氏ジョー・ゲビア氏、そしてネイサン・ブレチャールチク氏の3人によって設立されました。

ゲビア氏は大学を出たあと、サンフランシスコのアパートでルームメイトと住んでいましたが、ある日ルームメイトが引っ越してしまい、家賃を分担してくれる人を探さなければならなくなりました。チェスキー氏に声をかけ一緒に住むことになったのです。チェスキー氏とゲビア氏は、サンフランシスコで世界デザイン会議が開かれる際に、自分たちの部屋を若いデザイナーに貸すことを思いつきました。家賃の補填になることと、会議が開かれると市内のホテルはすぐに埋まってしまい、宿泊料金も高騰してしまうためです。

宿泊した若きデザイナーたちは、1週間の滞在中、チェスキー氏らとデザインについて語り合うことができました。会議が終わった次の日には、チェスキー氏とデザイナーたちはスタンフォード大学デザインスクールを訪問し、IDEOの共同創業者であるビル・モグリッジ氏に挨拶まですることができました。デザイナーたちは、市内のホテルに泊まっていたのでは得ることのできない経験をしたのです。ゲビア氏とチェスキー氏にとっても、このホストとしての体験は衝撃的で、この感覚を多くの人に味わってほしいと思い、Airbnbを創業したのです。


Airbnbのホテルの常識を覆すコンセプト

Airbnbが提示したコンセプトは、「世界に2つとない部屋、その場ならではの体験、宿泊自体が目的の一つになる」というものです。それまでのホテルの常識は、「画一的な設備・部屋、世界のどこでも同じ体験、寝るための手段」であって、かなり飛躍していました。Airbnbは、常識を超えるコンセプトでビジネスを展開し、2022年には売上高が84億ドル(約1.1兆円)となりました。部屋の総数は、大手ホテルチェーンをはるかに凌駕しています。Airbnbを創業したとき、既に民泊ビジネスは存在していましたが、Airbnbのみがこのように急成長した要因の一つに、斬新なコンセプトを創ることができたことがあげられます。

Airbnb Guest Favorites – Canada


MFAがMBAを凌駕する時代

米国では、2000年代より、MBAよりもMFA(Master of Fine Arts:美術学修士)に人気が集まるようになりました。MBAは経営全般の基礎知識から、論理的思考による問題の分析および解決策の提示などを学びますが、論理的思考は、これまでにない全く新しいコンセプトを提示することは苦手です。VUCAの時代では、正しい結論というもの自体がなくなっており、社会事象を観察し、自ら問いを立て、斬新なコンセプトを提唱する「アート思考」が重要になってきます。この「アート思考」を教育しているのがMFAです。そして、芸術系の教育を受けた人が画期的なビジネスを創ることができることになるのです。

日本では、「アート思考」についても、MFAにしても、まだまだ認知が低いのが現状です。より多くのビジネスパーソンに気づいてもらうべく、活動してまいります。


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