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すき間亭日記2月16日「梅の木と梅干とお婆さん」

むかし、我が家には一本の梅の木があった。

梅の木は、春に成ると美しい白い花を咲かせ、とても良い香りを漂わせた。

そして初夏の頃には、毎年のように多くの実を付けたのだった。



うちのお婆さんは、まるで漫画「巨人の星」の、星一徹のように、突然怒り出してちゃぶ台をひっくり返すお爺さんに対しても。

怒った事も無ければ、口答えするような事もなく、気立ての優しい猫が大好きな良い人だった。


ある年のこと。

我が家の梅の木が、あまり花も咲かせず、実も付けない年があった。


お婆さんは、毎年のように梅干を漬けていたが。

今年は、我が家の梅の木にあまり梅の実がならなかったので。

代わりに、杏子の木になっている杏子の実を、梅の実の代わりに漬けると言い出したのだった。


お婆さんは、とても気立ての良い人だったが。

時折、突拍子もない事もする人であった。


例えば、毎年、正月に成ると大きな昆布巻きを作ってくれていたのだが。

ある時、昆布巻きを作るのに、かんぴょうで巻いて作るのは面倒になったからと言って。

今年は、かんぴょうの代わりに輪ゴムで巻いて、昆布巻きを作ると言いだした事があったが。

その年の昆布巻きが、とても輪ゴム臭くて、食べられたものではなかったという事もあった。


またある時などは、大きな野良猫どうしで、取っ組み合いの喧嘩をしているのを見て。

まるで河合奈保子の曲「けんかをやめて」のように。

喧嘩を止めさせないと、猫どうしが怪我をするからと、抱きかかえて引き離そうとして。

逆に興奮している大きな猫に、腕をガブガブと噛まれて、自分が大怪我をするような人だった。



そんなお婆さんが、杏子の実を、梅干しのように漬けて出来上がった杏子の梅干しはとにかく大きかった。

高校生の時の弁当に、もしもこの大きさの梅干しが入っているのを見つかったら。

きっと、からかわれて恥ずかし思いをするんじゃないかというほど大きかった。

杏子梅干を、干している時に来た郵便屋さんが、その大きさに目を丸くして吃驚したというほど大きかった。

大きな梅干しと言えば、南高梅の梅干しが有名だが、南高梅の梅干しよりももっと大きかった。

しかし、それはそうだろう。

だって梅干しではなく、杏子干しだったのだから・・・。





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使用画像 ACイラストより

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2023.2.16 2,17修正・加筆 2.22加筆 3.7加筆

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