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#87「推しの魅力は、自分がつくる言葉でさらに輝くものとなる」【読書感想】

「推しの魅力は、自分がつくる言葉でさらに輝くものとなる」

自分が感じたことを言語化することは、僕自身大切にしていることです。それは、「推し」についても同じだと気づかされた。

このような、推しの魅力を言語化することの大切さを強く認識した本が、三宅香帆さんの『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』です。



読んだきっかけ

実は、三宅香帆さんの本の中で当初気になっていたのは『名場面でわかる 刺さる小説の技術』でした。
そんな中で書店に言った時に、隣に並んでいたのが本作だったのです。
本の感想を書く時にどのような書き方がいいのか考えていたこともあって、目次をザッと見た時に「面白そう!」と琴線に触れたことで手に取った1冊です。

このような方にオススメの本です

  • 推しについて書く時に「ヤバい」「すごい」のようにありきたりな言葉しか出てこない

  • 推しの魅力について書きたいけど、どのように書けばいいのかわからない

  • 推しについて自分の言葉で書くことの大切さって何なのか気になる

あらすじ

推し語りしたい人の必読書!

あなたに「推し」はいますか?
応援しているアイドル、声優、バンド、YouTuber。
お気に入りのアニメ、漫画、本。
大好きな舞台、コンサート、ライブ。
あるいは、スポーツや釣りなどの趣味も、推しに入るかもしれません。

本書は、アイドルと宝塚をこよなく愛する著者が、書評家として長年培ってきた文章技術を「推し語り」に役立つようにまとめあげた1冊です。
SNS発信、ブログやファンレター、友人とのおしゃべり、音声配信などの発信方法ごとに、推しの魅力を伝える技術を伝えます。

ディスカヴァー・トゥエンティワン - Discover 21 より

感想

  • 推しの魅力を書く時のコツ以上に、言語化することの大切さが響いた

  • 「好き」の感情は永遠ではないからこそ、推しの魅力は今書こうと思った


アイドル、俳優、本、映画、スポーツなど、何かを語るうえで、「推し」という言葉は今や共通言語となりつつあると感じています。

本作では、その推しの魅力を書く時のコツが書かれています。しかし、僕にとってそれ以上に響いたのが、言語化することの大切さです。

本作を読んで響いた点を自分なりにまとめると、以下の2点に集約されます。

  • 推しの魅力を言語化することは、自分自身の理解が深まり、相手のためにもなる

  • 自分の言葉をつくることは、自分を守ることに繋がる

自分が日常生活などで感じたことを言語化することは、僕自身大切にしていることです。それは、「推し」についても同じなのだなと思いました。

推しの魅力は、自分がつくる言葉でさらに輝くものとなるのです。


本作を読んで、書く時に気をつけたいと思ったポイントは、

  • 自分の感想を書き終えるまで、他人の感想を見ない

  • 書き出しについてしっかり考える

いずれも細かい技術ではないように見えて、ないがしろにしがち。特に、他人の言葉の影響は受けやすいこともあり、自分の感想を書き終えるまで、他人の感想を見ないように心がけたいです。


そして、「好き」の感情は永遠ではありません。

僕も、これまで色んなものに触れてきた中で好きなものは変化してきました。これは、決して嫌いになったわけではなく、好きの優先順位が変わったような感じです。

でも、何かを特に熱く推している感情は今しか書けない。だからこそ、今の推しの魅力は今書こうと思います。
(実は、いしかわゆきさんの『書く習慣』にも同じようなことが書いています。僕が大事にしていることでもあり、本作を読んでその思いが強くなりました)

推しについて書く意欲が沸いてきたぞ!

特に印象に残ったところ

以下は、本作を読んで特に印象に残ったところです。

冷静に自分の好みを言語化することで、自分についての理解も深まる。それでいて、他者について語っているのだから、自分じゃない他者にもベクトルが向いている。すると、他者の魅力や美点に気づく力も身につきます。

 『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』p.46

自分の好きなものを言語化することは、自分のためにも相手のためにもなる。単なる消費行動で終わらないんです。そのために、じっくり考えて言語化する習慣は忘れないようにしようと思います。

いつかやってくる「好き」じゃなくなる瞬間を見据えて、自分の「好き」を言葉で保存しておく。すると、「好き」の言語化が溜まってゆく。それは気づけば、丸ごと自分の価値観や人生になっているはずです。

『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』 p.59

言葉は、自分の好きな感情、好きな景色、好きな存在がいつかなくなってしまうとしても、いつでも取りだして愛でることができるように、保存するためのものです。

『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』 p.105

言語化して保存したものを後から見返すのは、懐かしさや楽しさが溢れかえりワクワクさせる。
自分の人生を肯定的に捉えられることにも繋がり、写真やグッズ以上に大切な宝物になるのではと思いました。

たとえ言っていることが正しくても、言い方がものすごく強くて、激しい言葉は、やっぱり扱いが難しいものです。劇薬すぎる。誰かの心に届きやすすぎる。そして、届きやすい強い言葉を読んでいるうちに、読み手は、いつのまにかその強い言葉に影響を受けてしまうんです。
(中略)
誰かの言葉によって、自分の思考が影響を受けすぎてしまうこと。それがなによりも言葉の怖いところなんです。しかし、そのことが今は知られていなさすぎる。そして無防備なくらいみんな影響を受けやすい。怖い。自分も含めて、ですけれど。
そう、SNSってかなり他人の影響を受けやすい場所なんですよ!だからこそ、自衛することが必要なんです。

『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』 p.250

武田砂鉄さんの『今日拾った言葉たち』にも言葉が鋭利になっていることの危惧に関して書かれていて、真っ先にそのことを思い出しました。
言葉が鋭利になっているのは僕も感じていて、すごく共感できました。


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