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エッセイ

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記事一覧

僕らはテレパシーを使って働いている

僕らはテレパシーを使って働いている

3年くらい前から、MOSHというフルリモートの会社で働いている。コロナになり、リモート勤務は一般的なものになっていったが、そんなフルリモート勤務を続けながら思い至ったことについて、今回書いてみる。

それは、僕らはテレパシーを使って働いている、ということだ。

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僕は今、一時的にヨーロッパにいるので、日本とは時差のある環境にいる。そして、海外にいる間も、普通に日本の仕事を続けている。

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「太陽の塔」に会いに行く

「太陽の塔」に会いに行く

他の人にとって取るに足らないことであっても、誰かにとっては「心の支え」となることがある。僕にとっては、万博記念公園にある「太陽の塔」がそれにあたる。

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大学2年生の夏に、何を思ったか東大受験を決意した。すでに大学生活を送っていた僕にとって、頂上に向かって再びチャレンジするというのは突拍子もないアイデアであったが、なぜだかその発想は魅力的に映った。

ワクワクするなら、やってみればいい。

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恋と愛の違い

恋と愛の違い

結婚してよかったことは、恋愛に振り回されなくてよくなったことだ。

結婚してよくなかったことは、誰かと恋に落ちる喜びを味わえなくなったことだ。

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僕の人生にとって恋愛は不可分なものだった。

生きていく上で、恋愛はいつも僕の隣にあった。受験の時は当時付き合っていた彼女に振り回されたし、一人の女性に何年間も片思いしてしまったこともあったし、重い重い愛の告白を妻となってくれた女性にしてしまっ

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青い風に吹かれながら、色について思うこと

青い風に吹かれながら、色について思うこと

色に関して言うなら、僕は「青」が好きだ。青は海の色であり、よく晴れた日の空の色でもある。青から派生して考えると、ちょっと色が深くなったネイビーも、大人になってから好きになっていった。

何かの色が好きだということは、よく考えてみると少し不思議な話である。僕には二人の弟がいるけれど、彼らのうちの一人は緑が好きで、もう一人は赤が好きらしい。ちなみに僕には姉もいるけれど、姉が好きな色は忘れてしまった。

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グラデーションと崩壊

グラデーションと崩壊

昔から、季節の変わり目に敏感だ。

春から夏に変わる瞬間や、冬の足音、そういったものを、全身が感じ取る。

ちょっと前、まさに秋から冬への変わり目だった。温度や景色、そういったものが、一気に冬のそれへと向かっていく。

今はもう、冬と言っても差し支えないだろう。これから徐々に、季節はさらに深まっていく。

季節はグラデーションなのだ、と思う。

昨日と同じ季節は二度とやってこない。いつも常に、次の

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僕たちは何をどうすればいいのか

僕たちは何をどうすればいいのか

旅とはなんだろうか。

便宜的に、それを、「普段行かない場所へと訪れること」と定義してみる。

そうすると、例えば、仕事帰りに普段通り過ぎていた薄暗いバーへと立ち寄ることも、旅に含まれてしまう。

そこに違和感があるのは、やはり距離性だろう。

僕らは少し遠くへ、普段行かないような遠くへ行くことを、旅というフレーズで評価する。

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夏休み。会社から休みをいただいて、妻と二人、東北へと旅に行

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結婚しなくても幸せな時代に、結婚する意味はなんだろう

結婚しなくても幸せな時代に、結婚する意味はなんだろう

無邪気に婚姻届を出してから、一年が経った。

この一年間、実際にはいろいろなことがあった。

でも、今こうして思うと、あっという間、の一言しか残らない。

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今から二年前のこと。
妻と恋人同士になった瞬間を、まだ鮮明に覚えている。

「うちと付き合ったらな、なんでも実現してしまうねん」

付き合ったその日、彼女は言った。

「うん、そんな気がする」

僕はそう答えた。

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人はなぜ

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虹はどこにある?

虹はどこにある?

子供の頃、虹を見ると、そこの下の景色に想いを馳せた。

ふもとまで行こうとしても、どんどんそれは逃げていく。

近いようで、遠い。

追いかけているうちに、いつの間にか虹は、姿を消してしまう。

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最近、映画「横道世之介」を観た。

吉田修一の小説が原作の、青春映画だ。

長崎から上京した横道世之介が、東京のアパートに下宿しながら、素朴だけど愉快な大学生活を過ごしていく。

世之介にとって

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カメラを止めるな!

カメラを止めるな!

※ネタバレはありません。

妻はあまり、映画が好きではない。

戦闘シーンがある映画にいたっては、はっきりと嫌悪感を示す。

なので、このゾンビ物の映画も、おそらく観るのを拒むだろうと思い、誘わなかった。

否。

SNSのタイムラインや口コミで、「この映画は本当にすごい!」という情報をずっと目にしていた。

だから僕は、なんとなく、この作品が世界を変えてくれる予感がしていた。

そして、妻は、海

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象に言及する

象が街を歩いていたら、どうなるだろうか。

それを見た人々は、驚くだろう。
「映画の撮影かな?」
「近くの動物園から逃げ出したのかも」
そんな言葉を口にする。
SNSにアップする人も多いかもしれない。

そのうち騒ぎをマスコミが嗅ぎつけ、象は夜のニュース番組に出ることになる。

そういう風にして、日本中にその話題が知れ渡るかもしれない。

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仕事において、プロジェクトの難易度が高くなるにつ

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タイでの年越し

タイでの年越し

「ファッッッッッキン!」

すごく肩身の狭い思いをしながら、妻と二人で、大きいバンの真ん中の座席に座っている。

僕の左には妻。
僕の右にはブロンドの美女がいる。
前方の助手席、および僕らの後ろの座席も西洋系の人に囲まれている。

運転手だけ、いかついサングラスをかけた、タイ人だ。
運転がとにかく荒い。

「ファッッッッッキン!」

助手席に座る男が、荒過ぎる運転に檄を飛ばし続けている。

運転手

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文章を書くということ

文章を書くということ

僕が文章を書き始める時、大抵の場合、何か伝えたいことがあるわけではない。

そうではなく、こうして書いていると、自然と、言いたいことが生まれてくる。

次々と頭に浮かんでくるイメージを、言葉として形にしていく。

そうしていくと、やがて、一つの文章が出来上がっていく。

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それは、行き先を決めずにドライブすることと、少し似ているかもしれない。

カーナビに目的地を設定せずに、その時その時で

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どうしようもないほど誰かを好きになったら

どうしようもないほど誰かを好きになったら

どうしようもないほど誰かを好きになったら、どうすればよいか?

この問いについて考えてみたい。

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僕は、人生において、恋愛に対してはオールインの姿勢を取ってきた。

というよりも、そうせざるを得なかった、という方が実態に近い。
誰かを好きになると、他に何も手につかなくなるのだ。
そして、それが恋愛というものなのだと思っていた。

でも、人の話を聞いていると、どうやらそういう人ばかりではな

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その場所へ行ってはいけない

その場所へ行ってはいけない

人間には生まれ持った好奇心がある。

ナゾナゾを出されれば答えを知りたくなるし、新しい勉強を基本的に楽しむことができる。

知らないことを知るのは心地よい作業であり、学びは人生の本質であるとも言える。

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先日、久しぶりに、ディズニーランドへと行った。
妻と二人で、だ。

二人きりで行くのは初めてだったが、まだ僕らが付き合う前、会社のメンバー4人で行ったことがある。

いつ訪れても、夢の国

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